難しい問題です。世の中、言った側は「そんなつもりじゃなかったのに」という感じですが、どのように解釈するかは言われた側の受け取り方次第です。
石川県金沢市にある私立高校の野球部で、今年4月に一年生の男子部員に対して、監督からの不適切な言動の指導があり、学校が監督を謹慎処分としていました。
ニュースでの事の発端は4月1日午後、ノックの練習中に男子部員の集中力が欠けていると感じた監督が「ボールが頭に当たったら死ぬぞ」などと発言しました。言動にショックを受けた男子部員は翌2日から練習を休み、母親が学校に経緯を説明しました。男子部員は現在(11日時点)も不登校の状態が続いているとのことです。
学校側は監督や他の部員、母親から事情を聞いた上で、「発言は生徒の命を守るためのものだったが、言い方が部員に不安感を抱かせる不適切なものだった」と判断しました。そして、4月4日から監督を部活での指導を禁じる謹慎処分とし、4月7日付で県高野連に報告しました。監督は学校の調査に「子どもたちのことを考えて発言すべきだった」と反省していたそうです。
この上申に対して、日本学生野球協会は「監督の暴言」として4月4日から謹慎3ヶ月の処分を発表しました。
副校長は取材に対し、「生徒の特性を十分に理解し、配慮のある指導に努めるとともに再発防止に取り組みたい」と話しています。
ちなみに、この学校は第138回北信越地区高等学校野球石川県大会は2回戦で敗退しています。
いろんな意味で難しい話です。
練習中の事故によって、指導者が負う民事責任として、「不法行為責任(民法709条)」と「債務不履行責任(民法415条)」があり、それぞれ、次の義務があります。
注意義務:事故の発生を予見することが可能であったかという予見可能性を前提とした、事故を回避できたかという結果回避義務
安全配慮義務:契約上の付随義務としての、生命及び健康等を危険から保護する義務
また、指導者が負う刑事責任として、「業務上過失致死傷罪(刑法211条)」があります。ただし、国公立学校の教員による事故の場合には、「国家賠償法1条」によって、公務員(教諭)による注意義務・安全配慮義務の違反が認められた場合であっても、国または地方公共団体のみが賠償責任を負い、指導教諭ら指導者に対する損害賠償請求は認められません。
ただし、指導教諭らに「故意または重大な過失」があった場合、国または地方公共団体は、指導教諭に対し求償することは出来ます。
監督としては、義務的配慮もあるため、ある程度の注意は必要ですから、注意したこと自体は何も問題はなかったと思います。問題は言い方だったのでしょう。でも、同じことを言われても、ショックを受ける部員もいれば、そうでない部員もいます。当然、一人ひとりに配慮しているはずですが、一人ひとりに適した言葉遣いまで求められる世の中になったということでしょうか。
私個人としては、このニュースについては、「ちょっと」と思えることがあり、何か、モヤモヤした内容になってしまいました。