野球小僧

2019 プロ野球志望届 未提出の選手

2019年のプロ野球ドラフト会議(10月17日)に向けて、高校からは最速163km/hの速球で周囲の度肝を抜いた岩手・大船渡高の佐々木朗希選手、総合力ナンバーワン右腕の石川・星稜高の奥川恭伸選手ら計139名。大学からは明治大を大学選手権優勝に導いた右腕・森下暢仁選手ら計107名の合計246人がプロ野球志望届を提出しました。

もちろん、志望届を提出していない選手はドラフト会議でプロ球団から指名を受けられません。その中にはプロ野球界に注目されながらも、志望届を出さなかった選手が数多くいます。

【高校生】
■岩手・花巻東高 西舘勇陽選手(ピッチャー)
最速150km/hの速球が武器。三年夏は佐々木選手擁する大船渡高を決勝で破り、甲子園出場しています。

■茨城・石岡一高 岩本大地選手(ピッチャー)
三年春の選抜大会で21世紀枠として出場。盛岡大付高と延長11回、170球の熱投を見せました。

■東京・日大三高 廣澤優選手(ピッチャー)
193cmの長身から投げ下ろす速球が武器。同高の井上広輝選手(プロ野球志望届提出)との二枚看板で、二年夏には甲子園で最速148km/hを記録しています。

■千葉・習志野高 飯塚脩人選手(ピッチャー)
U-18侍ジャパンでもストッパーを務めました。スリークォーターから150km/hの速球を投げます。大学進学を希望しています。

■大阪・履正社高 清水大成(ピッチャー)
ダイナミックな投球フォームも魅力な、今夏の甲子園優勝ピッチャー。甲子園では5試合すべて先発し、ゲームメークしました。

■和歌山・智弁和歌山高 池田陽佑(ピッチャー)
最速150km/hの速球はバッターの手元で動く独特の軌道で、奥川選手を擁する石川・星稜高と甲子園で名勝負を繰り広げました。U-18侍ジャパンにも選出されました。

■広島・広陵高 河野佳選手(ピッチャー)
「球の強い野村祐輔(広島東洋カープ)」と中井哲之監督が称する、ストレートに威力があり、総合力の高いピッチャーです。社会人で野球を続ける意向です。

■滋賀・近江高 有馬諒選手(キャッチャー)
昨夏の甲子園で、林優樹選手(プロ野球志望届提出)とともに「二年生バッテリー」として注目を集めました。インサイドワークに長け、二塁送球1.8秒台の強肩の持ち主です。

■福井・敦賀気比高 杉田翔太郎(ファースト)
今夏の甲子園の二回戦の東東京・国学院久我山高戦で史上6人目のサイクルヒットの最後をホームランで決めました。

■愛知・東邦高 熊田任洋選手(ショート)
今春の選抜大会優勝の東邦高を支えました。攻守にバランスの取れたミート力の高い打撃と守備範囲の広さがセールスポイント。卒業後は大学進学を希望しています。

■奈良・智弁学園高 坂下翔馬選手(セカンド)
智弁学園高、U-18侍ジャパンで主将。小柄ながら、三年夏の奈良大会でホームラン5本の大会記録を樹立しました。

■大坂・履正社高 桃谷惟吹選手(センター)
三年夏の甲子園で、準決勝までの全試合で第1打席のみによるサイクルヒットという珍記録をマーク。思い切りの良さが特徴で、チームを初優勝に導きました。

■山梨・山梨学院高 野村健太選手(ライト)
「山梨のデスパイネ」の異名を持ち、長打直で注目されています。三年春の選抜大会一回戦で北海道・札幌第一高戦で1試合ホームラン2本を放っています。

【大学生】
■慶応義塾大 高橋亮吾選手(ピッチャー)
慶応湘南藤沢高校出身で、高校時代は無名、大学進学後に抑えを務め、最速153km/hの速球と多彩な変化球が武器。卒業後は野球を一区切りし、パイロットを志望しています。

■立教大 田中誠也選手(ピッチャー)
大阪桐蔭高時代から甲子園で活躍し、大学進学後も一年時からマウンドに立ち続けた、小さな大エースです。

■駒澤大 上野翔太郎選手(ピッチャー)
中京大中京高時代はコントロールを武器にU-18侍ジャパンに選出。大学進学後は右肩痛もあり実戦機会に恵まれなませんでしたが、今秋のリーグ戦で念願の初勝利を挙げました。

■立教大 藤野隼大選手(キャッチャー)
東京六大学リーグ屈指のキャッチャー。強肩強打で、三年時には大学日本代表にも選出されています。

■東海大 杉崎成輝選手(ショート)
東海大相模高時代は不動の三番・ショートとして甲子園優勝。大学進学後も一年時からリーグ戦に出場するなどの実戦派選手です。

■東洋大 津田翔希選手(ショート)
浦和学院高時代はU-18ワールドカップで、11安打8打点の活躍。大学進学後はショートだけでなく、サードも守っています。

■東京大 辻居新平選手(外野手)
神奈川の超進学校・栄光学園では軟式野球部のエースで最速133km/hという異色の経歴。遠投100m超、50m6秒0の高い身体能力を持ち、二年秋からセンターレギュラーをつかんだ、硬式野球歴も外野手歴もわずか3年の選手です。二年秋と三年秋に打率.308を2回記録しており、三年時には、「上で通用するレベルになるなら、挑戦したい気持ちはあります。来年の春が勝負だと思ってます。今までに出した成績をはるかに超える成績を残したいです」とプロ入りを明言していました。しかし、
相手チームからのマークがきつくなったことで今春は打率.189と不調に終わっており、志望届を提出しませんでした。

辻居選手が注目を集めるきっかけとなったのは、二年生の秋季リーグ戦でした。二年生ながらレギュラーポジションを掴むと、思い切りのいいフルスイングを武器に打率.308、ホームラン1本、6打点と大活躍し、プロのスカウトから大きな注目を集めることとなりました。

東大からプロ野球に進んだ選手はこれまで6人いましたが、現;北海道日本ハムファイターズの宮台康平選手を含めてすべてピッチャーです。辻居選手がプロ入りすれば東大史上初のケースでした。

辻居選手が野球を始めたのは小学校二年生の時。神奈川屈指の超進学校である栄光学園高で軟式野球をプレーしていたお兄さんの影響で、あとを追うように栄光学園中学・高校へ進学すると、迷うことなく軟式野球部に入部しました。高校時代はピッチャー投手を務め、最速133km/hの速球を武器に、四番でエースとしてチームを関東大会まで導きました。

「軟式野球はいい形で終われましたし、高校でやりきったなという想いが強くて。大学では硬式に挑戦したいなという気持ちがあったんです。父親の影響もあって小さいころから弁護士になりたいというおぼろげな夢もあったので、東大の法学部に入ろうと決めました」

そうして難関の入試を突破し、大学進学後に硬式野球の世界へ進みましたが、スピード感が軟式とは全然違い、また、何事においてもスケールが一個あがる感じで、実際にレベルの差を改めて感じたそうです。

それでも辻居選手は、ポジションは違えど、宮台選手をはじめ、先輩たちの練習姿を見て学んできました。考えて野球に取り組むこと。同じ練習をしていても、プラスαでいろんなことを得ていくことで、意識しながら、ひとつの練習で少しでも多くのことを考えて、「何が一番正しいのか」を見つけるようにしました。例えば投げ方ひとつとっても、「どうやって投げれば一番素早く、正確な送球ができるのか」と、考えながら少しずつ練習を積み上げた結果が大学野球での活躍につながっているのだそうです。

東大野球部は週6日朝8時から12時までの4時間の全体練習があり、その他は各自が自主練習で鍛える形式を取っています。もちろん、学生の本分である授業もあります。辻居選手は法学部の法律プロフェッションコースに在籍し、東大法学部トップクラスの成績だそうです。特に法学部は試験の比重が多く、試験前には午前中練習、午後は部屋にこもりっきりで勉強みたいな感じになるそうです。

「正直、『まだ勉強するのか』と思う時はあります(笑)。大学に入って一区切りがついた中で『まだやるのか・・・』と。でも、自分の今までの生き方を考えると、勉強をやっていないと野球もやれないところもあります。例えば休学するなりして、野球だけに打ち込んだから爆発的に伸びるかといったら、僕はそうは思いません。逆に野球がなかったらこれだけ勉強も頑張れなかった。相乗効果というか、勉強と野球って自分の中では似ているんですよ。目標へ向かって行く方法とか、メンタルの持ち方とか、努力の仕方だとか、そういうところは共通している。野球が良い時は勉強も良かったり、勉強に集中できていない時は野球にも集中できていないとか、そういうことは多かったです。だから、まったくの別物とは考えていないんです。悩ましいけど、楽しいですよ。頑張っているからこそ得られる成果もあるし、できるようになれば、どちらも楽しいですから」

と言うものの、限られた時間の中で効率よく行うために、辻居選手は切り替えをすごく大事にしています。中途半端にやらず、「ここまでやる」と決めた量だけやって、それ以上にもそれ以下にもしないそうです。野球においても、そんなに練習量はこなさず、「今日はここまでやる」と決めたことは絶対にやって、それを継続的にやり続けるというのを意識しているそうです。

また、週1日のオフ日はなるべく野球から離れるようにしているそうです。大学の友達に会ったり、話をしたり、勉強して過ごすときもあるそうですが、みんなでワイワイやっているそうです。徹底した合理性と謙虚さを持ち合わせています。そして、現実的に人生も見ています。

「やっぱり野球でチャレンジをするには土台が必要だと思うんです。まずは自分の特技である勉強を活かしてしっかり東大に入る。そこで司法の世界を目指すというのがベースにあるからこそ、よりハードルの高い野球の世界でも思いっきりチャレンジができるんだと思います。自分の中では野球と勉強はそういう両輪のような存在なんです」

二兎を追うからこそ得られるものがあり、辻居選手の場合には、「自分には勉強がある」と思えるからこそ、野球も思い切ってやれているのだと思います。それでも、まだまだとも言っています。

辻居選手はプロ野球志望届を提出しませんでした。おそらく、お父さんやお兄さんと同じ司法の道を目指していると思います。道のりは厳しく、さらに重責を担う仕事です。

ただ、その前に、残り試合は少なくなってしまいましたが、東大野球部として2年ぶりの勝ち点獲得と、1997年秋以来の最下位脱出を狙う、道のりが厳しく、重責を担っています。

こういう人生もいいですね。


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