「都には まだ青葉にて 見しかども 紅葉散りしく 白河の関」 源頼政
東北楽天ゴールデンイーグルス。
パ・リーグのお荷物と言われた(?)イーグルスが球団創設9年目にしてリーグ優勝を果たしました。高校野球でもそうですが、“(全国)優勝”という二文字が白河関を越えて東北の地に翻るのは初めてのことです。
今季の楽天は強かった(なぜか過去形?)。その大きな要因として投打のバランスがいいということでしょう(優勝するチームは大体そうですが)。
胴上げ投手となった田中将大選手や新人で大活躍の則本昂大選手らピッチャー陣の奮闘と銀次選手がチャンスメークし、ジョーンズ選手、マギー選手がランナーを還すという効率の良い攻撃が目立ちます。
でも、この数日間、TVでイーグルスの試合を観ていたのですが、内野の守備が堅実です。そして、ちょっと古い話ですが、その内野の連係プレーについての記事がありました。
6月4日の対マリーンズ戦。五回1アウト一・三塁からのサードゴロをマギー選手がゲッツーを狙い二塁へ送球。セカンドベース上でボールを受けた藤田一也選手は、三塁ランナーがホームを狙ってスタートしたのを見逃さず素早くホームへ送球。キャッチャーの嶋基宏選手が帰塁するランナーを三塁で刺しダブルプレー。
6月9日の対ファイターズ戦。八回1アウト一塁の。打球がセカンドへ転がる。セオリーどおりなら4-6-3のダブルプレー。しかし、セカンドの藤田選手は迷わず一塁へ投げ、ファーストの銀次選手が二塁へ送球。4-3-6という珍しいダブルプレーを成立。
このプレーについて藤田選手は「バッターランナー(陽選手=北海道日本ハムファイターズ)は足が速いので。一塁ランナーにタッチしてから一塁へ投げる選択肢もありましたが、それだと間に合わなそうだったので、あのプレーを選びました」という。
「『この状況ならばこういうプレーを』という意識は普段からみんなあります。例えば、点差とかゲームの展開を把握するのは当然ですけど、ランナーのリードが小さい、スタートが遅いとか、そういう細かいところまで見た上での状況判断を共有できているし、実際にプレーとしてもできている。そこが、守備の安定感に繋がっていると思います」
こういう積極的なプレーが「当たり前」になっていること、そして、臨機応変に対応できる意識の共有が出来ているのです。
また、昨シーズン13個のエラーをしている銀次選手は「特別なことは何もしていないと思うんですけどね。自分としては、処理できるボールはしっかりする。アウトにできるプレーは確実にアウトにする。チームにとって当たり前のことをやっているだけなんですよ」と言います。
守備機会連続無失策のパ・リーグ新記録を更新し、現在もその数を伸ばしている外野のスペシャリスト・聖澤諒選手。
「今は、8割が一生懸命で2割は遊び心のあるプレーができているんです。僕としては、この2割が大事で。『一歩目を大事に』『いいスタートを切ろう』とか、一生懸命になりすぎると気持ちが窮屈になって、いつもならできるプレーができなくなるというか。今年はチームの雰囲気がいい分、心に余裕が持てるので、いい意味で楽に守備ができている感じはありますね」
今年のイーグルスは負けている時でもベテランをはじめ、AJ(アンドリュー・ジョーンズ)選手やマギー選手とかが常に声を出し続けています。
そして、特に今年は打線が点を取れ、ピッチャーも粘っている。どんな状況でもベンチを含めて「行ける」という雰囲気が常にあるという。それが集中力に繋がって、守備も含め前向きにプレーできていると選手は言います。
細かい状況判断を当たり前に遂行できる守備。それを後押ししてくれる前向きなチームの雰囲気。
守備を制する者はリーグも制する。昨シーズンのファイターズのように守備力が安定したチームが優勝していることを考えますと、やっぱりミスをしないことが一番なのでしょう。
「都を出る時には、まだ青葉である木々を見たのであるが、はるばる旅をして来て見ると、ここ白河の関には紅葉が一面に散り敷いていることだ」
都(京都)から陸奥の国(東北地方)白河の関へ長い旅の感慨を季節の推移によって示しています。
まるでイーグルスの優勝の旅路のように・・・