野球小僧

刀狩(かたながり)

刀狩(かたながり)とは・・・

僧侶や農民の保有する武器を没収すること。最も著名なのは、1588年7月の刀狩令で、諸国百姓の「刀、脇差、弓、やり、てつはう」などを、京都東山方広寺の大仏殿建立のための釘、かすがいに用いると称して没収しものです。その規模は当時、豊臣秀吉の未平定地を除く全国で実施され、農民の武装解除から常備軍の整備といった兵農分離促進に有効な手段ともなり、検地とともに秀吉の基本的政策の一環となりました。
しかし、それ以前からも行われており、鎌倉時代にすでにその記事があります。1228 年に北条泰時が高野山僧侶の乱行停止のために行なったのが初めてと言われています。戦国時代には諸大名によって行われ、1576 年には柴田勝家が加賀で、1577年には秀吉が高野山や多武峰など寺院の武装解除のために実施しています。

さて、夏の甲子園、第100回全国高等学校野球選手権記念大会は、北大阪・大阪桐蔭高の史上初となる2度目の春夏連覇や準優勝した秋田・金足農高の快進撃、初のタイブレークの適用、史上初の逆転サヨナラ満塁ホームラン、総入場者数が初の100万人突破など、さまざまな話題で盛り上がりました。

一方で、大会本部が選手らのパフォーマンスなどに注意したことでも話題になりました。

一回戦で優勝候補の長崎・創成館高を16奪三振・無四死球で完封した岡山・創志学園高の西選手。しかし、二回戦で山口・下関国際高との試合中、球審から「必要以上にガッツポーズをしないように」と注意されました。感情をむき出しにしてバッターに対するのが西投手の投球スタイルですが、そのスタイルを禁止され「リズムが狂った」そうです。試合は創志学園高が4-2と2点リードの9回表、先頭から連発フォアボールでピンチを広げ、暴投も絡み3失点。4-5の逆転負けとなりました。3安打に抑えながら9四死球と大乱調で、創成館高を無四死球完封した一回戦とは別人のようだでした。

試合後、西投手は「試合の序盤でベンチに帰る時、球審から結構強い口調で言われました」と話し、「自然と出てしまう」と言っています。どうやら、初回の先頭バッターを見逃し三振に打ち取り、雄たけびを上げながらガッツポーズしたことが、球審の逆鱗に触れたらしいのです。その後も控えめながら右手を握りしめるしぐさがあり、8回にも再度注意されていたのです。長沢宏行監督は知らされておらず、試合後に聞いたそうです。

大会本部は「ルールでは禁止されていないがマナーの問題。高校野球の精神として相手をリスペクトすることが大事。ガッツポーズで喜びを表すのは自然な姿だが、球審は度が過ぎると判断した。国際大会では、やってはいけないアンリトゥンルール(暗黙の了解)がある」とコメントしています。

確かにMLBでこんなアクションをしたら、故意死球が飛んでくるだろうし、大会本部の見解や球審の注意に一定の理解は出来ます。しかし、球審の注意のタイミングが西選手のピッチングに影響を与えたのは事実でしょう。そもそも、注意するのであれば、甲子園の大会中ではなく、地方大会の時にするべきでしょう。

また、金足農高もパフォーマンス自粛を求められていました。吉田輝星選手と大友朝陽選手の「侍ポーズ」です。親友の2人が移動バスの中などでリラックスするため、「侍」と言われたら「シャキーン」などと返すゲームが由来になっています。

初回、吉田選手がロージンバッグを手にした後、右膝を地面につきながら大友選手に向かって刀を抜くしぐさを見せ、大友選手もそれに応じるしぐさです。6回にも行われ、最終回は刀を納めるしぐさでおわります。これは、これで別に対戦相手を挑発する目的ではないです。ただ、見方によってはふざけているように見えるかもしれませんが、プレーに入るためのルーティンと考えるならば、何も問題ないと思います。

しかし、準決勝での西東京・日大三高との試合前、大会本部から中泉一豊監督を通じ、自粛を求められたそうです。それでも2人はアクションを小さくしただけで、全面的に従わない意地を見せました。試合後、吉田選手は報道陣に対して「『それ禁止だよ』って注意されたので、今日は適当にポイっと…」と自粛要請があった事実を認めていました。

大会本部は、「高校野球には野球と関係ないパフォーマンスは不要で、侍ポーズは高校野球にふさわしくない」という見解でした。でも、ファンに認知され、話題にもなっていたのに、大会本部は中止するように通知しました。その後、第12回U-18アジア選手権の日本代表に選出されている吉田選手に高野連は国際大会では侮辱行為として捉えられる可能性を考慮し、報復行為を避けるために禁止を通達しました。

そもそも、プロではないアマチュアで、さらに高校生の試合で報復行為自体がいかがなものかと思うのですが、そこは文化習慣の違い、「日本の美徳」と「国際感覚」のズレあるので、何とも言えません。

第12回U-18アジア選手権へ向け、代表選手には都内のグラウンドで国際試合特有の「アンリトン・ルール」に関する説明があったそうです。要するにルールブックには記載されていない“不文律”で、これを破ると故意死球などの報復を受けることがあるが、日本ではこれまであまりにも無頓着といえば無頓着ですが、日本らしいと言えば日本野球の一つでもあると思います。

説明された内容は以下のものだそうです。

〔1〕ピッチャーは三振を奪ったときやピンチを切り抜けたとき、派手なガッツポーズをしてはならない。
〔2〕ホームランを打ったバッターは、打球をゆっくり見送ったり派手なガッツポーズをしてはならない。
〔3〕大差で勝っているチームは盗塁を試みてはならない。
〔4〕大差で勝っているチームは送りバントやスクイズをしてはならない。
〔5〕大差で勝っているチームのバッターは、3ボール0ストライクから打ちにいってはならない。
〔6〕大差で勝っているチームのピッチャーは、変化球でかわさず直球でストライクを取りに行かなければならない。
〔7〕大差で勝っているチームのピッチャーは、ランナーをしつこく牽制してはならない。

〔3〕~〔7〕の「大差」とは7点差以上を目安としていて、大量リードしているチームに謙虚な振る舞いを求めています。

これらの不文律に違反したと認識された選手には、報復死球が与えられたりします。アジア選手権はDH制が採用され、ピッチャーは基本的に打席に立ちませんが、ピッチャーが犯した場合はチームの主力バッターが身代わりに故意死球で報復されることが多いです。内野手が危険なスライディングタックルを受けることもあります。

実際に昨年のU-18ワールドカップの3位決定戦のカナダ戦(カナダ・サンダーベイ)では、7-0の8回に盗塁を試みた選手がいたため、9回の先頭バッターだった清宮幸太郎選手(現:北海道日本ハムファイターズ)が報復死球を受けています。さらに、出塁した清宮選手が盗塁を重ねたため、カナダ側が激高し、セカンドの選手が清宮選手に暴言を吐き、地元カナダを応援していた球場全体がヒートアップし、審判からも注意が与えられるなど、日本代表の方が悪役になっています。

結局は野球文化の違いなのです。日本では、特に高校野球は大差で勝っていても最後まで手を抜かず全力を尽くすことを美徳としています。でも、「最後まで全力を尽くす」は国際大会ではNGなのです。これは大会形式にもよるところが大きく、日本は基本的に負ければ終わりのトーナメントですが、国際大会はリーグ戦が中心だからなのです。敗北に対する受け止め方も根本的に異なっています。

いっそのこと、国際化というのであれば、こういうマナー的なところから徹底的にすべきでしょう。

これも、次の100年への課題です。


コメント一覧

まっくろくろすけ
パンサーさん、こんばんは。
また、懐かしいバイクを持ち出しましたね。
こっちの方には頭が回りませんでした。

当時、あのスタイルはかっこよかったです。

うーん、私はCBX400Fの方です。

えっと、捕まったことは・・・
まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
これはなんとなく分かるような気がします。

海外に行ったときに、相手の国の文化・風習をよく知らずに、日本にいるときと同じように振舞って、ヒンシュクされるような場面に出くわすこともありますから。

例えば、日本のコンビニで買い物した時は、両手の丁寧にお釣りを渡すことが多いと思います。ですが、中国ではお金を投げるように渡すことがあります。

これは、習慣のようなものなので、いちいち気にしないことなのです。
パンサー
おはようございます。

刀狩りと思い出すのは若い頃乗っていたスズキGSX750S刀というオートバイのアップハンドルをセパハンに変えて警察に目をつけられ刀狩りと言って取り締まりの対象になっていたことを思い出します。

1100は良くて750はなんでダメなんだろうと矛盾……

あっ、捕まったことはございません。
eco坊主
おはようございます。

「アンリトン・ルール」ねぇ~
最後まで気を抜かない文化が残っている日本においてなかなか難しいことでしょうね。プロなら未だしもアマチュアそれも高校生となると一層でしょう。
でもU-18の国際大会でもあるのだから今後どうなるんでしょうね。

大量リードしているチームに謙虚な振る舞いって・・・

国内は”野球”だけど国際大会は”ベースボール”だから仕方ないのかなぁ~
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