【GoToトラベルの全国一時停止
~ なぜ、遅きに失したのか の巻】
一体、どうしちゃったんだろう。
危機感も、緊張感も、ここにはない。
記録的な高い支持率だったはずの
3カ月余の出来たて内閣が、この有様である。
この党も、このリーダーも、「当たり前の政治」が
空文句であることが明らかになってゆく。
側近たちが一言、自重を求めれば、済んだものを……。
その一言を言わせない、言えない「度量の狭き事」。
苦しさは、ワケがないワケではない。
ま、長けりゃいいというワケでもないが。
◇
短命(たんめい)は、古典落語の演目のひとつ。東京・上方両方で広く演じられる。1727(享保12)年の笑話集「軽口はなしどり」の一編「元腹の噂」。いわゆる「艶笑落語(バレ噺)」である。
男(東京では八五郎)が、
街のご隠居(上方では甚兵衛)居宅に飛び込むなり
ワケの分からないことを口走る。
「表通りの質屋、伊勢屋の婿養子が
またまた死にました。
これで3度目だあ~」
男は話は、こんなである――。
先代の伊勢屋主人が亡くなり、一人娘は婿を取り店を継ぐ。
が、1人目も2人目も3人目も、顔色が日に日に青白くなり、
やがて床に就き、ほどなく死んでしまう。
夫婦仲は良好で、周囲が首をひねるうち逝ってしまうのである。
伊勢屋の娘は、三十路ながら容貌が良く、父親譲りの人格者。
店の経営はしっかりしており、婿に負担がかかるはずはない。
なぜ3人も続けて早死にするのか?
隠居は「おかみさんが美人というのが、短命の元だよ」。
「タンメイ?」
「早死にすることを『短命』という」
「じゃあ逆に、長生きのことは何と?」
「長命だ」
妻が美人だから夫が短命、というリクツが分からない男。
隠居は「食事時だ。お膳をはさんで差し向かい。
おかみさんが、ご飯なんかを渡そうとして、手と手が触れる。
白魚を5本並べたような透き通るような手だ。
そっと前を見る。ふるいつきたくなるような、いい女だ。短命だよ」
「そのうち冬が来るだろう。ふたりでこたつに入る。
何かの拍子で手が触れる。透き通るようなおかみさんの手だ。
ふるいつきたくなるような、いい女だ。短命だよ」
隠居は、なお分からない男に、川柳で謎解きをする。
その当座 昼も箪笥の環(かん)が鳴り
新婚は夜することを昼間する
何よりも傍(そば)が毒だと医者が言い
ニブイ男もようやく隠居の旨意を理解した。
隠居宅から戻った男は、いきなり妻に怒鳴られる。
「なぜ伊勢屋の婿たちと、俺とはこうも違うのだろう」
幻滅する男は、昼飯を食べる際、ふと思いついて妻に話しかけた。
「給仕をしろ。茶碗をそこに放り出さず、ちゃんと俺に手渡すんだ」
妻は茶碗を、邪険に突き出す。
夫婦の指と指が触れ、「そっと前を見る]
妻の姿を見つめた男は、深く嘆息してつぶやく。
「ああ、オレは長命だ」