▼木屋町から入る
▼路地を入り、振り返ると木屋町通。茂みで高瀬川が隠れている
▼こんなところがあったのか(そういえば、あった)
▼昼と夜の顔はまったく違う
▼もうすぐ通り抜ける。振り返っても、やはり「あの店」はない
▼先斗町に抜ける
【かつて、わたしの深夜食堂があった場所 の巻】
今となっては昔のことだが――
ぼくの好きなおじさん♪ の面影
平行して南北に伸びる木屋町通と先斗町通
鴨川と高瀬川に挟まれた二つの狭い通りである
その間を、いくつもの路地が結ぶ
東西の細い道には通し番号がふってある
わたしのその店は
四半世紀前には確かにあった
「13番路地」のなかほどに
無口で朴訥なマスターは
琵琶湖畔の自宅から
夕方に店に入り
翌朝に暖簾を下す
深夜食堂は
酒と数品を提供するだけで
殺風景な店内に音楽もかかっていない
街の喧騒は遠く
店内は静寂に包まれている
マスターは苦労人だったのだろう
聞けば、ぼそぼそと語るのだが
何を話したのか
記憶が判然としない
ただ一つ
はにかむ笑顔の相槌だけが
目に焼き付いている