囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

明治35年の壮絶バトル

2019年05月22日 | 【カベ突破道場】

【北風吹き抜く寒い朝も の巻】

1902(明治35)年1月。今から117年前の冬は、恐ろしい寒さだった。北海道旭川市で日本最低気温マイナス41.0度を記録し、八甲田雪中行軍遭難事件が起きた。

■北風吹き抜く寒い朝ーー。しかし盤上では、稀に見る壮絶なバトルが繰り広げられた。先番・田村保寿(後の本因坊秀哉)vs本因坊秀栄。164手完、白中押し勝ち。

         ◇

■田村は明治7年、東京・番町の生まれ。幕臣(御家人)の父の趣味から、8歳で碁を覚え、10歳で方円社に入塾。後に「終身名人制の最後の名人」となる。

■この対局は、田村27歳、秀栄49歳。「名人の中の名人」秀栄に対し、先で打てたのは田村ただ一人。次代の担い手として確固たる地位を築いていた。

■2子から先になったのは5年前。10局打って秀栄の5勝3敗1持碁1打ち掛け。

田村は負け越しているとはいえ、よく食らいついている。だが、この一局は秀栄の横綱相撲。終盤、一気呵成に攻められ、粉砕された手数が進むにつれてスリリングな展開が加速する面白い碁である。

 

▼白の秀栄側から見た棋譜。黒9までは当時の流行布石

▼白模様が脅威になってきた。黒17以下の手順が大斜定石の主流だったようだ

▼左辺は黒地が大きいようだが、白42となり白も手厚い

▼白64から暗雲が立ち込める

▼攻め合いかコウ争いか。スリリングな展開

▼白は右辺で3連打を打ち込む

▼苦しい黒が死に物狂いで抵抗する

▼左上にコウ立ての宝庫。白は一気呵成の攻めで、黒を粉砕してしまう。黒のコウ立ては尽き、投了


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