【昭和40年発行「囲碁百科辞典」を紐解けば。 の巻】
■挨拶 あいさつする、といえば相手が打ってきたところを受ける意味。
■合いの手 問題の起こっているところを放っておいて全然別なところに打つこと。
■熱い 負けが こんでカッカとしていること。
■雨ダレ碁 よく考えもしないでポンポン打つ碁。
■飴(あめ) アメをなめさせる。弱い碁にわざと勝ちを譲ってやること。
■芋堀り碁 芋を掘るように、ごつごつした感じの筋の悪い碁。
■芋筋 俗筋をもう一段過ぎて、滑稽感を催すような手。曲励起(八段)の講座に「いも筋の手直し」というのがある。
■インチキ 碁のインチキにはいろいろある。賭碁打ちにはインチキをやるものが多いから一応は知っておかなければならない。
1.作り方 どんな良い碁でも目算ができなければごまかされる。隣接する境界の石を2個ちょっと寄せるだけで、黒地が2目減って白地が2目増え合計4目の出入りができる。こういうのを防ぐためには相手が作り終えるまで自分は手をださずじっと見ているのがよい。
2.出石 あらかじめ石を用意しておき、作るときハマの中にまぜてしまう。仲間がいると「タバコをくれ」「はいよ」とばかりにピースの箱に石を忍ばせている場合もある。
3.石取り 自分の石を気のつかれないように取って袖口にいれる。それだけ地が増える。
4.助言 強い者を側に呼んでおき、あらかじめ符丁を用意して急所の二、三手のときだけ数えてもらう。(後略)
■牛 布石で足ののろい碁。
■裏街道 大上段にふりかざしていく陽性の碁に対して、柔道でいえば相手に業をかけさせて裏を取るといった風に、相手に相撲を取らせてそれによってこなしていく碁。この種の碁は渋い棋風で、大局に明るくヨセがうまい。
■えぐい手 関西棋士がはやらせたことば。東京では「えがらっぽい」だが、「えぐい」の方が親しまれている。
■お客 あつかいやすい相手。カモ。旦那。
■おなげの蒲焼(かばやき) ウナギの蒲焼をもじった言葉で、相手に、さあおなげなさい、と催促する意味でよく使う。
■女大学 堅きにすぎる、という意味。
■オイランゴ 田舎碁に対して、キレイですぐ転がる碁。
◇
これらは俗語であり、隠語でもある。
対局周辺の生きた言葉であり、
ある意味で教訓ともなろう。
碁会で軽口に使い、「ん、なにそれ?」と訊かれ、
説明するのは、ご勘弁いただきたい。
種明かしに、当ブログにて密かにしたためておきましょう。
感想戦などで使ってみると、
遊び心をくすぐるというもの。
相手との距離を詰めることにも役立つか。
たかが俗語、されど俗語、スラングの森 奥深し――
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これら囲碁の俗語は、俗世の俗語とは、ちょっと違う。
たとえば、
挨拶しても、返事をしない(=手抜き)は、
有力手となること多し。
そのあたり、以後、とくと ご賞味あれ。
▼京都の古書店で2020年6月7日、定価1300円のところ210円にて購入
林裕(はやし・ゆたか、1922~86年)でなければ成し得なかった労作
大著約600㌻から、琴線に触れた箇所を引用し、思い付き雑感をちょっぴり展開します
注:この時代の言葉は、現代では差別につながるため気を付けたいとされるものがありますが、ケースバイケースと判断して掲載してまいります