【わが身に巡ってきた吉凶禍福を思い起こす一日 の巻】
江戸のはじめ、
熊本城内で蜷川治部が風呂に入っていると
火を焚いていた下男が、友達に話し掛けている。
「俺は殿様と同年同月同日同時の生まれなんだ。
しかし貧富というものは これと関係がないとみえ
殿様は大国を治め、俺はようやく風呂焚きである。
何という不運のことであろうか」
この話を治部から聴いた細川忠利が、
小姓に命じて「桐の箱」を三つ用意した。
中に入っているのは
「黄金五枚」「小判三両」「銭十五文」
であった。
かの下男を呼び寄せ
「その方、生まれ年月は余と同じであるそうだが
しかし、恵まれないのを嘆いていると聞く。
至極もっともであるが、定めて境遇が悪かったのであろう。
そこでただいま、お前の生まれつきの貧富を試す。
これらの箱、どれでもよいから取ってみよ」
下男は喜んで一つを選び取ったところ、
空けてみると「銭十五文」であった。
すると忠利は重ねていわく
「このように、すべて運である。
よって、天を恨まず、また余を悪くいってはならぬ。
この三つの箱は、お前の老後の養い料として与える」
細川忠利(ほそかわ・ただとし) 肥後国熊本藩初代藩主。細川忠興の三男で、母は明智光秀の三女・玉子(細川ガラシャ)。幼少時は病弱だったため、玉子が洗礼を受けさせた。
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本日、昭和31年生まれの わたくしの誕生日。
花束を君に♡ 2020/08/19投稿