囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

貴人のごとく 2

2019年12月21日 | ●○●○雑観の森

▲小目から発生する「ひっくり返す定石」(現在は廃定石)

 

絶対に黒が悪いと百年来言われ、プロは誰も打たなかった
    ↓
それに納得いかない呉清源が黒番で打った
    ↓
白が悪いとの評価確定まで、それから十年掛かった

 

 

 

時代で変わっていく「定石の評価」の巻】

 

■師弟関係の厳しかった戦前は、

若手が「新手を打つ」のは相当な勇気を要した。

よほど有力な手でない限り、一喝されるのがオチだった。

 

■呉清源は来日するまでの少年時代、独学で力を付けた。

本因坊秀策が残した四百に及ぶ棋譜をひたすら並べた。

来日後、瀬越憲作門下は自由な発想を許されていた。

瀬越は一つ一つの手を、いちいち云々することはなかった。

碁の世界は、凡庸な前例踏襲主義の多数者がつくるカベを、

才能と努力と勇気を持った少数者が命懸けで打ち破るたび、

進化と深化を続けたのである。

 

■呉が大ナダレの「内マガリ」を初めて打った時、

検討室の棋士たちは「呉さんが定石を間違えた!」と大騒ぎした。

しかし、その後に有力手と分かり、大流行したのである。

 

         ◇

 

■わたしは、新しく覚えた手は局後に変化図を並べて、

相手の感想を聞き、意見交換するのが好きである。

これが手筋といわれても、それを自分のものにするには、

一度やってみたところで、身に付かない。

定石通りやったとしても、勝ちにつながる保証はなし。

本を眺めていても、あくびが出るだけ。

うろ覚えでは、実戦には使えない。

自分でやってみて、しくじったり、うまくいったりで、

変化を感覚的につかみ、自分のモノになり、

次第に洗練され、血肉になっていく。

そうして対局相手と、何かが通じていく。

そんなことが、リアル碁の楽しみではあるまいか。

 

 

 

▼黒Aが内マガリ、黒Bが外マガリ

現代はわずかの違いとされるが、プロレベルでは大変な違いなのだろう

 

昭和32年の日本最強決定戦リーグ

大ナダレ定石の「内マガリ」が初めて打たれた

先番・呉清源 ー 本因坊秀格(高川格)

 

▼実戦1 1~32

黒7と下ツケに対し、今は白は11に押さえることが多い

白8とブツカリが「ナダレ定石」の始まりになる

左下スミの星にある白石との間にできる「大きな谷」を意識している

黒11と3本ノビルのが「大ナダレ」の様相

黒が32にハネルと「小ナダレ」になる

黒25のハネダシが級位者には怖くて打てないようだが

黒29のシチョウアタリを見ている

黒31とカカることができては、左辺は黒模様の雰囲気

左上で未完成の白のカベを消している

白32で大ナダレに突入する

現代の見解では、左辺の黒29に石があると、白32はムリ筋

 

▼実戦2 1~29

黒5が「呉清源が打った問題の内マガリ」

「その場の思い付きで打ってみた」と言う。

白14は悪手だが、黒がとがめられず……

黒19が後悔の一手

ここは「20の一路下」に打ち、ケイマで白を圧迫すべきだったようだ

 

 

 
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