【最初の手は、どこに打ちますか?の巻】
打ち出しはザルといえども小目(こもく)なり
■古い川柳にあるように、ヘボでもザルでも最初だけは専門家と同じ手を打つものです。「学ぶ」が「マネぶ」を語源とするように、AIやトッププロの棋譜を手本にするからです。
■高い峰が立てば、それに引きずられ、全体がレベルアップしていく。この構図は、あらゆる芸事、スポーツなどの世界に共通しています。
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■わたしを含め、アマの多くは初手に「星」を選びます。皆さんはいかがですか?
■昭和8年に二人の天才(呉清源と木谷実)が「新布石」を発表したのが発端でしょう。
■星は一手で隅を占め、辺・中央への展開を重視するスタイルに合致し、人気の着点となりました。星を3連打する「三連星布石」も、同時期に登場しています。
■星が初手の着点として定着し、武宮正樹による宇宙流布石、中国流や小林流など星を中心とした布石が開発されました。アマもその都度、それらにならっています。白番でも、スピード重視の「二連星」が主流になっています。
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■さかのぼると、幕末~昭和初期は「小目」がほとんどでした。星は置き碁で必ず出てくる着点でありながら、江戸時代には互先の碁で打たれたことはほとんどありませんでした。
■幕末期に本因坊秀和や秀策が白番星打ちを試験的に打っています。明治期に碁界の頂点に立った本因坊秀栄が「白の星打ち」を多用し、タスキ星や二連星の名譜が残っています。
■現代はAIの影響もあって、本命が星、対抗が小目。その他の「高目」「目外し」「三々」などは、アマの碁でまれとなっていますが、この先はまたどうなるかわかりません。
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■「囲碁四千年」といわれ、他の遊戯とは比べられない長い歴史を持ちます。
■大陸から日本に伝播されたのが「千五百年前」です。
■真偽不明ですが、本邦最古の碁譜は763年前にさかのぼります。あらかじめ黒も白も「二連星」の位置に石を置いてから着手しています。天元にも黒石があり、「2子置いた」ということが分かります。ここから近現代スタイルになるまでに、さまざまな論議があったことでしょう。
■わたしが不思議に思っているのは、誰が、なぜ、4線が交わる星から打ち始めたのか?という点です。小目も4線と3線が交わっています。わずか「一路の違い」ですが、意味は全く異なります。
■盤の真ん中は天空(=天元)で、わたしが海底をイメージしている盤端(=1線)までの間に「8路」あります。なぜ4線あるいは3線を、「地平線」あるいは「水平線」と考えたのでしょうか。
■実際の碁盤は平面ですが、棋力が上がると不思議なことに立体的に見えてきます。
中空には良くも悪くもさまざまな夢がつまっています。
盤端とりわけ「四つの隅」には魔物が棲んでいます。
■初手から一手一手に時間を費やし、膨大な想定図を比較検討するプロ。
■相手の着点の意味や意図を考えずに形だけまねてポンポンと打つアマ。
■「打ち手」にも「着点」にも、その間には「暗くて深い川」が流れているのは間違いありません。
男と女の間には
深くて暗い川がある
誰も渡れぬ川なれど
エンヤコラ今夜も舟を出す
Row and Row
Row and Row
振り返るな Row Row
忘れもしない この川に
二人の星のひとかけら
流して泣いた夜もある
Row and Row
Row and Row
振り返るな Row Row
大波小波ゆれゆられ
極楽見えたこともある
地獄が見えたこともある
Row and Row
Row and Row
振り返るな Row Row