【どっちのアノ人ですか?】
軽妙洒脱の物書き名人・田辺聖子は
人生の愉しみは二つあり、
一つは「食べること」
もう一つは
「おいしいものをこしらえること」
と書いた
食にまつわる作品を数多く遺した
出てくる料理や場所は気取ったものでなく
きつねうどんだったり、たこ焼きだったり
大衆的というか、普段着で行けるところ
そして「何を食べるか」よりも
「誰と食べるか」に
彼女は重きを置いていた
◇
わたしが
碁を再開したのが7年前
還暦になった時である
それからというもの
東京・京都・大坂の碁会所十数か所、
高槻市内の地域碁会数カ所、
京都・大坂のアマ大会数カ所
で、いろんな相手と碁盤を囲んだ
費用、仕組み、立地などさまざまで
ここにトドメを刺すという「場所」が
あるにはあったが、コロナ影響で
残念ながら閉鎖が相次いだ
いま十分満足できる場所がない
対局相手は、二百人近くにのぼる
何人か、印象に残る碁打ちがいる
勝っても負けても、清々しい思いをして
「また打ちたい」と思う人もいれば
「もう二度と打ちたくない」と思う人もいる
相手にとってもそんなことはあるだろうし
「わたしは、どっちなんだろう」と思う
碁を打っている限りは
棋力向上を追い求めたいが
相手と楽しい時を過ごすことを
何より優先したいと思う
そういう相手が数人いるのが
今のところ救いなのかもしれない