【21世紀の碁「AI」と19世紀の碁「秀策」
~ 古いのが新しく、新しいのが古い】
今回も「棋譜」のおはなしです
名人などタイトル多数獲得の
依田紀基九段(昭和41年生まれ)は
自著(2008年発行)のコラムで
こんなことを書いています
「棋譜はその人の歴史そのもの。
生きた証です」
「古碁を鑑賞するとき、現代の価値で
この手がいいとか悪いとかいっても
意味がないと思います」
「碁の考え方はぐるぐる回って
循環しています」
「たとえば、現代で大流行のミニ中国流も
道策の時代には既に打たれています」
「打った人は亡くなっていても
棋譜で熱気がよみがえってくる。
碁盤の上では、生きているのです」
◇
2022年〝初並べ〟とした
井上因碩vs本因坊秀策(江戸城で1852年)に続き
人類最強vs最強AI(ネットで2017年)を
並べてみました
5年前の年末年始のネット対局場に
マスターというハンドルネームの
謎の棋士が現れて
日中韓トッププロを相手に
60連勝無敗と圧倒しました
Yahooニュースがトップ記事で報じる等で
おおいに世間の耳目を集めました
謎の棋士の正体は
当時のAI進化系でした
半年後に解説書が出版され
16局を若手中心にプロ16人が解説したのですが
「意図や善悪は不明」などの記述が多く
碁を言語化する困難さを感じました
◇
わたしが初めて並べたのが
2020年11月4日です
しばらくサボっていましたが
2022年1月3日は27回目になります
最後に並べたのは2カ月前ですので
ところどころ覚えていますが
ソラで並べることはできません
しょせん〝未明の棋譜並べ〟
という暇人趣味ですから
それでいいと思っています
ところで、
巷では、宇宙人来襲の如く
AIの碁が碁界を席巻している
といいますが、そうでしょうか?
ヘボ碁打ちの分際で
何を戯けたことを言うか
との、お叱り覚悟ですが
全く違う碁というワケではない
と思っています
どこがどうと言えませんが
感覚的に似ているところが
随所に出てきます
百五十年という時間差がありますが
四千年とも六千年ともいわれる
碁の長い長い歴史を考えると
百年 二百年など〝地続き〟なのでしょう
これもまた碁の面白いところです
注:以上、いつもの個人の感想です
黒・朴廷桓(パク・ジョン・ファン)
白・アルファ碁マスター
270手完 白1目半勝ち
ニンゲンがコンピューターに
最も肉薄した碁のひとつに数えられています
当時、朴廷桓九段は韓国碁界ナンバーワンで
世界一を推す声も多数ありました
解説本では「中盤以降、黒も息は長いのですが、
一度優勢になったマスターは逆転されません」とあります
ヨセの名手といわれる朴九段が
どんな手を繰り出しても1目半を詰め切れず
というのは、やむ負えなかったのでしょう
互先は手合違いだったのです