囲碁漂流の記

週末にリアル対局を愉しむアマ有段者が、さまざまな話題を提供します。初二段・上級向け即効上達法あり、懐古趣味の諸事雑観あり

五輪と宮本武蔵/余話1

2021年08月15日 | ●○●○雑観の森

 

宮本武蔵は刀術も優れ

書も画もたしなんだ

これらは皆

兵法の理をもって学んだのだ

と武蔵は述懐している

 

その武蔵が

兵法の伝書の終わりに

次のような歌を一首載せている

 恋をせば文ばしやるな歌よむな

 一文なりとも銭をたしなめ

 

この意味について

武蔵が言うには

自分は諸国を遍歴し

世の中のいろいろなことに

接してきた

今、それを振り返ってみると

金銭がなくては

何もできないことが

よく分かった

だから、倹約ということを忘れず

財を蓄えるべきである、と

 

武蔵は一生、

金には不自由しないよう心掛け

銭を入れた袋を幾つも

鴨居(かもい)や長押(なげし)に

吊り下げておいた

 

そして

遠国へ旅立つ者が挨拶にやってくると

「旅先で役に立つものは

これであろう」といい

竿(さお)で袋を下ろしては

餞別(せんべつ)に与えたという

       (原典:諸家雑談)

 

      ◇

 

ムサシの金銭感覚のはなしである

武芸者・兵法家の強面とは異なり

意外ながらも通俗的な善き人である

 

見栄・体面よりも

俗っぽくも現実的な

モノの考え方を持っていた

 

望んだことではないが

宮勤めの息苦しさがなかったことが

幸いだったともいえようか

 

一匹狼の無頼の武芸者で

ときおり傭兵として

稼いだことも度々あった

 

こうしてみると

冥府魔道に生きる武芸者の顔と

永遠の趣味人としての顔とが

同居する不思議な人物像が浮かぶ

 

ことほど左様に、ヒトは

多面的な顔を持つ矛盾した生き物なのであり

単線の人物評など当てにならないことが分かる

 

 



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