【ちょっと寄り道、コーヒータイム の巻】
ある時、
老中の阿部忠秋は
自分の下屋敷に松を植えさせた。
そして、言った。
「万一の時、
その松を切り倒しただけでも
江戸城中の台所に必要な薪(たきぎ)
三日分ぐらいにはなるだろう。
松は、そのためのものだ」
(原典:名将言行録)
* * *
一貫している。
「捨て子の養育」
「茶壷を打ち砕く」
「夜盗を家人とす」
「不似合いなミエを張らぬ」
忠秋の思考のベースには
人情と合理性が ほどよくミックスされている。
最後に有名なエピソードを一つ。
幕府転覆と浪人救済を掲げた
「慶安の変」が起こった折、
酒井忠勝や松平信綱らは
江戸から浪人を追放することを提案し、
他の老中らもその意見に追従した。
が、ただ一人忠秋のみは、
江戸に浪人が集まるのは
仕事を求めるゆえであって、
江戸から浪人を放逐したところで
根本的な問題の解決にはならないと、
性急な提案に真っ向から反対した。
理にかなった忠秋の言い分が
最終的には通り、
一件落着となったという。
これが
武断政治から文治政治への転換のきっかけ
となった、といわれている。
マツ 冬でも青々とした葉を付けることから、不老長寿の象徴とされてきた。「松竹梅」と呼ばれ、おめでたい樹木の筆頭格。魔除けや降神の力があるとして珍重され、正月に家の門に飾る「門松」には神を出迎えるという意味がある。