【第75期本因坊戦リーグの巻】
■本因坊戦が始まった。
世襲制から実力制に移行してから、第75期も重ねたのかという感慨。
三大棋戦のほか二つは、45期名人戦と44期棋聖戦だから、本因坊戦の歴史がいかに長いのかが分かる。
本リーグは8人総当りリーグ戦で、優勝すれば、本因坊位に君臨する井山最強との7番勝負(番碁)の挑戦権が得られる。
8人は「一流」の仲間入りだが、リーグ戦上位4人だけが残留できるという厳しい世界。
■今期は、平成四天王のうち山下敬吾と羽根直樹だけ。高尾紳路と張栩がいない本棋戦は寂しい。
30歳以下が過半を占め、本命視される新名人は10代である。
しかし“大本命”ではなく、いまだ戦国時代であり、一強・井山への下克上を狙う構図が毎年続いている。
■最近、井山最強の碁を並べることが増えた。
並べると分かるのは、その桁外れの強さだけではない。
多様な布石を試みる幅の広さ。
リスクを取り圧勝を目指す志の高さ。
緻密で深いヨミで局面を複雑化する芸の深さ。
「素人に楽しみを提供するために打ってくれているのだ」と、わたしなどは思ってしまうのである。