言はずと知れた中華ポップス界の「女神」テレサ・テンこと鄧麗君の代表曲の一つ。
演歌歌手という、日本におけるテレサに関する限定的なイメージでは、その中華世界における影響力を推し量ることは難しい。80年代の中国語圏では「二人の鄧」と言はれ、鄧麗君は鄧小平と並び称される程の影響力を持ってゐたものだ。彼女について「全球十億熱愛巨星」というコピーを以前見たことがある。今大陸だけでその人口は14億に迫ろうとしてゐるが、今もその存在感は薄れない。こんなに愛すべき歌手はまたとないし、これほどのインパクトを持つアーティストは、どの言語圏でも稀である。
その優美で繊細な声、絶佳の歌唱力は比類ないとは言へ、彼女を無二の存在にしてゐるのは、その魂の気高さである。聲は、ひとつの魂を他の魂と瞬間的に共振させる強力なメディアである。歌といふものがあるお蔭で、私たちは鄧麗君の高貴で慈愛に満ちた魂に、直接出会ふことが出来る。彼女の死後もなほ。
月亮代表我的心の和訳はネット上にも数多あるが、「月が私の心を表すの」と言った、およそ不自然な直譯調が多いので、あらためて譯してみた。
日本では月のやうに満ち欠けするもの、海のやうに満ち干のあるものに事寄せて不易の誠を誓ふことはないが、文化の違ひであらう。
月亮代表我的心(あの月が私の心)鄧麗君(テレサ・テン) 作詞:孫儀、作曲:翁清
あなたをどれだけ愛しているか
どれだけ深く愛しているかと
あなたは訊くの
私の心は真実
私の愛は真実
あの月が私の心よ
あなたをどれだけ愛しているか
どれだけ深く愛しているかと
あなたは訊くの
私の心は移ろわない
私の愛は変らない
あの月が私の心よ
そっと触れただけの口づけが
私の心を動かした
あなたの深い想いのせいで
私はずっとあなたが愛しい
あなたをどれだけ愛しているか
どれだけ深く愛しているかと
あなたは訊くの
思い出してごらん
見上げてごらん
あの月が私の心よ
月亮代表我的心 鄧麗君 作詞:孫儀、作曲:翁清
你問我愛你有多深
我愛你多幾分
我的情也眞真我的愛也眞
月亮代表我的心
你問我愛你有多深
我愛你多幾分
我的情不移
我的愛不變
月亮代表我的心
輕輕的一个吻,已經打動我的心
深深的一段情,教我思念到如今
你問我愛你有多深
我愛你多幾分
你去想一想,你去看一看,
月亮代表我的心。