我家に掛かっている絵はこの一点の模写だけ。自分の絵は先ず欠点に目が行く。いつも対決している気分で休まらない。結局いじってしまって壊してしまう。
この絵は絵描きも駆け出しの頃、知人の依頼で模写したもの。しかしついぞ、知人が現れる事は無かった。画料も確か五万円で引き受けたと思うが、当時の10万円もあれば夫婦二人、一月生活できる時代では大金である.
これを描いた頃の記憶は今でも鮮明。水彩絵具の防腐剤のツンとくる匂いが、小学生の写生会を思い起こさせ「こんな気持ちで絵が描けたら・・」と原点に戻った様な、妙に神妙な気になれた。難しい技法で「意味ありげーで無さそーで・・・」といったシュールな絵も描いていた頃、ありきたりの画材で「普通の風景を画板を持って写生に出かける」事の方が、演出された個性を追うより「僕らしく」思えた。
暫くは本業を確立する事が一番で実現は不能だったが、後年「花園」に風景画を描く「心の原点」になった様に思う。
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