忘憂之物

男はいかに丸くとも、角を持たねばならぬ
             渋沢栄一

みつを のはなし

2021年11月21日 | 忘憂之物


居酒屋のトイレなどに「相田みつを」が貼ってある。無防備、且つ、ほろ酔いで「美しいものを美しいと思える。あなたの心が美しい」とか目に入ると、不覚にもぐっときてしまうときがある。もちろん、そのあとすぐ正気に戻ってはっとする。

古くて恐縮だが、田原俊彦の逆になる。しかしながら、これをそのまま、ハッと気づいてからグッときてしまっては危ういこともある。例えば地球環境に危機感を抱きハッとして、SDGsなんかの歌でグッときてしまう盆暗だ。今年の冬も我が家にテレビはないが、NHK教育テレビなどで流しっ放しだ。実に不気味である。

そんな不気味な歌の前、かなり不気味な番組をやっていた。11月はジェンダー関連の番組集中月間とのことらしく、放送されたのはスペインのドキュメンタリー番組でタイトルは「出産しない女たち」。子供を産んだり産まなかったり、職業も違う女性たちがいろいろと言っていた。

子供ができてカメラの仕事ができなくなった、子供を産んだことを後悔している、母親になんかなりたくなかった、子育てはセックスの代償、それは女だけが背負うのだ、とか、男中心社会の不条理を訴える内容だった。彼女らは「母性を崇高なものとするのは女性を中世に引き戻す考え方だ」と憤る。男は何もしない。助けてくれるどころか、理解も及んでいない、とボロクソだ。要すれば全員が田嶋陽子だった。


その成果なのか、たしかにスペインでは出生率が死亡率を下回った(2015年)。出生率が2.2%を切ると人口が維持できない。スペインはその年1.49%。日本にも少子化担当大臣とかいう閣僚もいるが、スペインも政府の特別理事として女性理事を就任させた。仕事は「国民のセックス推奨」。大きなお世話だが、その理由は「国民経済の健全化」だ。グレタがマイクを掴むモチベーションになりそうだ。たぶん「戯言」だと叱られるだろう。


番組では「出産は地球に悪影響」とか怖いことも言っていた。人間が増えれば、それだけ環境を破壊する。だから産まない(増えない)選択は環境保護の観点からも重要だ、とのことだ。元大阪市長の「無責任コメンテーター」を自称する御仁に喧嘩を売るのは勝手だが、結婚しない、子供を産まないも勝手にすればいいのに、それを「社会に訴えていきたい」とかやるから胡散臭いことになる。望まぬ出産をして、望まぬまま母親になって、望まぬ人生を送らねばならない女性を救いたい、とか不気味をやるから気味が悪い。

少子化についていえば、日本はまだ「婚活」とか「育児休暇」くらいのものだが、例えばデンマークでは「デンマークのためにヤろう」というテレビCMがあるとか。シンガポールなども「愛国心を爆発させよう」とか、国が子作りを呼びかける。まさに産めよ増やせよ、だ。

心のキレイなフェミニストの方々はこういう「お下品」な国にこそ文句を言ってほしいものだが、プーチンはさすがだ。ロシアでは9月12日を「受胎の日」に制定、年が明けた6月12日に出産した家庭には国から「冷蔵庫」が送られてくる。「エスキモーに冷凍庫を売る」例え話を地でいくセンス。さすがはプーチンだ。たしかに中に入れておくと凍らない。



いずれにしても、一部の邪悪に振り回される不気味な連中は極端が過ぎて矛盾を生じていることの自覚がない。また、意図的なのか阿呆なのか、例えば労働力不足に対して「移民受け入れ」しか能がない岸田政権のようなもので、発想が貧しくて対策が短絡、加えて「選挙前には黙っている」という卑怯のおまけつきだ。少子化を憂いながら人口抑制を言うのも、差別をなくせとしながら差別を探してきて、あるいは創作までしてスポットで照らすのも、平和外交や核廃絶を日本にだけ言うのもなんら効果がなく、説得力も皆無である。

例えば、ボーイング社のジェット機、耐用年数20年の二酸化炭素排出量は100万トンを超える。他社の大型ジェット機も同じようなものだが、これに乗って日本の高校生もグラスゴーに行く。日本で何不自由なく、ぬくぬくと育ってきた高校生はグレタに感銘を受けて環境問題にハッとして、マザーテレサによって貧困問題にもハッとして、いま、岸田総理に「パリ協定に整合した政策ができていますか」と問う。2030年までに温室効果ガスゼロなど温い、四の五の言わず、いますぐ「政策を変えてください」。

この左に巻く意味で将来有望な高校生はマザーテレサの伝記を読み「貧国問題」に心も痛める。テレビで泥水を飲む子供を見て「なぜ助けないのか。自分が大人になったら助ける」とか決意したという。

以前、仕事先で知り合った大学生バイトに問うたことがある。なぜ、世界の貧しい国、清潔な水が飲めませんとか、5歳まで生きることができません、という国は黒人ばっかりで白人はいないのか。べつに白人の子供ががりがりになって、1ドルあればこの子を救えます、みたいなポスターになってもいいが、そんなの見たこともない。なぜか。

なんと、その大学生は最も危険な返答をした。存外、真面目に考えたあと彼はこう言った。


「白人は優れているから」。


逆に言えばわかりやすい。つまり、有色人種は劣っている、と彼は言っているのだ。

彼を馬鹿にしているのではない。しかし、彼には他の理由が考えつかなかった。思い当たることがないのである。すなわち、先の大戦前に世界がどうだったのか、を知らない。アジアの国々が白人国家に収奪されてきた歴史を知らない。優越主義、排外主義、差別主義に基づく植民地支配を知らない。いや、それをやったのは悪の帝国が存在した日本とドイツくらいだと思っている。だからいま、グレタファンの日本人高校生も、テレビで泥水を飲む黒人の子供をみて「助けたい」と感じたと言い、同時に、地球温暖化も解決しなければ、とも言う。「気候変動の解決が貧困問題の解決にもなるかもしれません」と朝日新聞の記事にも載るが、果たしてどうか。


2019年、日本の温室ガス観測技術衛星「いぶき」とNASAの軌道上炭素観測衛星「OCO-2」が調べた結果、アフリカ西部やエチオピア付近を中心に、北アフリカ熱帯地域の二酸化炭素排出量は年間10~15億トンだとわかった。これはガソリン自動車2億台と同じ排出量だ。原因は察しの通り「森林伐採」。剥き出しの土壌から溜まりに溜まった二酸化炭素が吸収もされず、そのまま大気中に放出されていた。

中国はアフリカの森林からローズウッドなど、大量の木材を調達する。北アフリカにおける中国共産党関連の伐採企業は180以上。また、中国はアフリカ諸国に多額の経済投資を行っている。国ごとマネートラップされたようなものだから、違法に伐採しても何も言わない。

気候変動の解決が貧困問題の解決になるかも、は餓鬼の戯言だ。それなら日本人の子供にも泥水を飲め、と言わねばならない。日本の子供にもスマホを捨てて、毎朝、水を汲みに行けと言わねばならない。上水道の管理設備、制御システムに電力はいらないと言うつもりか。

日本は今でも国土の7割が森林地帯だ。それを中国産の太陽光発電パネルで破壊することを「再生可能エネルギー」と呼んでいる。もし、それで足らんなら都市部を解体して森林に戻せばいい。それで経済が死んで何人が失業し、どれほどの企業がなくなり、どれだけの家族が生きていけなくなるか、高校生にもなって想像も及ばんのが恐ろしい。

「事の本質」はそういうことじゃない。薄っぺらいから踊らされるのだと知らねばならない。もちろん、興味をもって学んで問題提起することはよろしい。しかしながら、本筋を違えてはならない。本筋とは、例えば世界最大の二酸化炭素排出国に向かって先ず言うとか、現在進行形の人権侵害に声を上げるとか、のことだ。環境問題の賛否についてはともかく、先ずは自分の言っていることとの整合性を保つことが肝要だ。


それに「都合の悪いことはなかったことにする」というのは説得力に欠ける。SDGsも先ず、東京都のひとり会派「SDGs東京」の無免許当て逃げを無視してないで、仲間なんだから「都議も持続可能」にしてあげればどうか。ちょっと冷たいんじゃないか。仲間にはちゃんと温暖化してあげてほしいものだ。当て逃げの公式にもちゃんと「貧困問題」もあれば「ジェンダー平等」もある。この日本の女子高生はマザーテレサの言葉を思い出すがいい。


「この世で最大の不幸は戦争や貧困ではありません。人から見放され、自分はだれからも必要とされていない、と感じることなのです」


本人、辞めろ辞めろとテレビからも叩かれて、嗚呼、可哀そうに。当て逃げから眠れない、食事もできない、とか心配じゃないか。食べてないのにストレスで交感神経がやられて肥満になる「モナリザ症候群」かもしれない。あの腹を見ただろう。可哀そうに。

ついでに立憲民主党の代表選ももっと盛り上がったらどうだ。べつに聞くこともないだろうが、夕刊フジのアンケート「どうでもいい、があったら圧倒的だろう」とか可哀そうだろう。どの候補もちゃんと「ジェンダー平等は政治経済を活性化させる」とも言っている。

SDGsの連帯はそんなもんじゃないはずだ。SDGsの歌でも「みんなで」「ひとりも取り残さない」とあるじゃないか。



ま、ともかく、最後に相田みつをの言葉を。


「あってもなくてもいいものは、ないほうがいいんだなぁ」


ヤバい、ぐっときた。



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