齋藤務作[特殊超空母ルシファーハデス零型実験艦]
最終世紀
ー 序章 ー
超時空の裂け目 (人工人類同盟軍、天月闇大佐)
深い闇の広がる宇宙空間に浮かぶ青い惑星、其処に存在する元素物質に、強い電気放電と長い時間の末に、
水素や窒素から構成される有機体が、幾つもの偶然に寄って生まれるアミノ酸、
そこから、アデニン、チミン、グアニン、シトシン、四つからの塩基で出来た集合アミノ酸からなる、基礎構造塩基配列、
古代の生命から進化を遂げた人類が、地球の地上で繁栄して、幾千年の歴史を綴った。
そして、人類の歴史は、高度な科学文明を築き上げて、その自ら生み出した。
新たなる生命たちとの壮絶な戦いの果てに終焉を迎えたのだ。
壮絶な戦いの果て、多くの人の消えた街や都市が無残な姿をさらしていた。
地球上の繁栄して来た人類たちは、遂に破滅的な戦争の為に滅び掛けて、幾つもの大国が消え去って仕舞った。
見渡す限り何もない地上に吹きすさぶ激しい砂嵐が物悲しく唸りを上げている。
そこには、何もかもが破壊され尽くした瓦礫の残骸だけが広大に広がっていた。
最終世紀、今は、そう呼ばれている、人類最後の大戦争の生き残りたちの、先の見えない闇の不安から、そう呼ばれているのだ。
戦いの果てに残ったまわしき生命体がいる、その見えない闇の中で、秘かに人の手で産まれた者達が、再び全世界を、恐怖の底に叩き落としていた。
彼らは、人工人類たちだった、今、世の中に忽然と現れた、忌み嫌われる者たちだった。
それは、彼らの姿は、科学技術に引き摺られた、人の罪の証のような存在だったからだ。
自らの過ちを正そうとして、その為に、人類は新しい人類の人工人類と、大戦争をしたのだ。
夥しい人と、人で無い人の血が流れ、そして、その激しい戦争は、地上の人類が滅びかけて終結した。
人類の生き残りの、ある少年がいた。
その少年は、日本の閉鎖された、かつて大首都と呼ばれた、旧東京の街を彷徨い歩いていた。
そこは、時空爆発の為に、時空が歪み、得体の知れない時空の魑魅魍魎が出現して仕舞い、時の政府が結界を張って、都市と連なる国土を封鎖して仕舞った。
そして、その代わりに、近海沖洋上に、新生した大帝国の皇国の国家の下で、新しい大首都を建設していたのだ。
だが、捨てられた街に、残された者たちがいた、それは、大規模な汚染と、化物の殺戮から地下に逃れた、見捨てられた人々だった。
その一人の少年は、地上へと這い出して来て、頭上の空を、久しく見詰めていた。
それは、彼がかつて見た記憶の中の青空とは違い、黒く淀んだ別の空だった。
言葉もなく空を見上げた、そんな少年の前に、忽然と現れた、時空の魔物が襲い掛かって来たのだ。
少年は叫び声を上げていた。
「ギャアアーーーーーーーーーーツ、ヒイイーーーーーーーーーーツ、く、食われるーーー!」
最後に発した絶叫を残し、少年は気絶して仕舞った。
次に目覚めた時には、少年は、見た事も無い。医務室の治療ベットの上に寝かされていた。
「お、俺は、し、死んだのか?いや、死んだんだ!多分、あの時に、魔物に食われて、死んだんだ!だ、だが、手も足も有るぞ!大事なとこも・・そ、それに、ここは何処だ。天国なのか?それとも・・ああ、ああーーー、」
そんな、独り言を言う、少年の前に、黒く長い髪をした、この世の者とわ思えない、妖艶で美しい女性が現れたのだ。
そして、その赤く美しい奇麗な唇を開いて言った。
「目覚めたか?人間!抹殺処分する前に、念のために聞く、お前は、どこから来たんだ!ここにはもう、人はいない筈だが、自分の名前を言うんだ!」
その美しい容姿とは、反対に態度がきつく、そして、厳しい棘の有る言葉を言う、その女性を、少年は見上げて、息をのみ見詰めていた。
そして、その女性の問いに、おずおずと答えて言った。
「お、俺の名前は、嵐山正義、あなたは誰ですか?ここは・・・」
捕まえた捕虜に、反対に質問されて、憮然とした、その女性が答えて言った。
「私の名は、天月闇だ!そして、ここは、特殊潜入型バトルシップの、クリヤーシールドだ!序でに教えてやろう、私は、ここの指揮官なのだ。正義とやら、分かったか?」
その美しい天月闇と言う女性は、冷たく鋭い視線の目で、治療ベットの正義を睨み付けていた。
治療用のベットの上で、怯えたように、正義が言う、
「潜入型、バトルシップ!?ま、まさか?あの人工人類同盟軍の殺戮マシーンなのか?」
天月闇は、不敵に微笑みを浮かべて答えた。
「そうだ!正義、お前をここで今直ぐにでも、殺す事も出来るんだ。心して口を動かすんだ、私の機嫌を損なうなよ、一秒でも早く死ぬぞ!いいか、分かったら、返事を返すんだぞ!それも、一度だ!何度も言うな、いいな!」
「は、はい、分かりました。や、闇、」
「あ、はあーーー?今、私の名前を呼び捨てに言ったのか?」
「あ、いいえ、ちゃんと言いました。聞こえませんでしたか?」
「んん、聞こえなかったが、本当に言ったのか?」
「言いました!僕の声が、小さくて聞こえませんでしたか?」
「んん、確かに聞こえなかった。言い逃れでは無いのか?」
「言いました。完全に言いました!」
「では、仕方あるまい。もう一度言え!」
「ああつ、はいつ、天月闇さん」
「んん、さんと言ったのか?大佐と言え、分からないのか?愚か者め!」
「はいつ、分かりました。」
「なら、もう一度、言って見ろ!」
「はいつ、天月闇大佐さん」
「コイツ、私をからかっているのか?さんを外してちゃんと言うんだ!冗談なら承知はしないぞ!」
「ああつ、いいえ、からかって何ていません、天月闇大佐、ちゃん!」
「うう、ああ、お前、肝が据わっているのか?それとも命知らずのバカなのか?いい加減にしろよ、おい!」
「そんなー、さんは外して、ちゃんと言いました。だめですか?天月闇大佐ちゃん、」
「よし、分かった!」
天月闇は、正義の首を両手で絞めていた。
そして、もう一度、正義が目覚めると、そこは、暗く狭い箱の檻の中に入っていたのだ。
「うう、ここは、せ、狭い!ああ、」
そのトランクケース二つ分の箱の中に、見事に納まっていた嵐山正義がいたのだった。
それを、横から覗き込んで、薄ら笑いをしている、天月闇がいたのだ。
「クククク、いい姿だな、その儘、死ぬまでそこにいろよ、クククク」
正義が、箱の中から叫ぶ、
「どうして俺を、こんな所に仕舞っているんだ!俺はもう、天月闇大佐ちゃんの、大切な宝物なのか?」
それを聞いた、天月闇は、その箱に両手を入れて、もう一度、正義の首を、容赦なく思いっ切り絞めようとしたのだ。
だが、今度は、正義が、その天月闇の両手を抑え込んで、動けなくした。
もがく天月、
「うう、くううつ、は、離せ、せ、正義、貴様、殺してやる。く、くそう、離せ、離すんだ!」
「いやだ嫌だ、離せば、首を絞められて殺される。ああーー、それなら、あなたとこうして・・・」
正義は、その先を言うのをやめた。
そして、俯いていた。
それを、天月が、聞き返して聞いた。
「私と、こうして・・・なんだ?言え、こうして・・・その続きを言うんだ!正義、言わないと、殺すぞ!いいのか?」
「言ったって、殺すでしょ、」
天月が言う、
「そうだ!言わなくても殺すし、私を離しても殺す。必ずお前を殺す。それだけだ!」
正義は、天月の両腕を抱えて泣き出した。
天月闇の両腕を押さえ込んだ儘、泣き出す正義、
「うう、うわあーーーーーーー!ああーーーーー、ああーーーーーー!」
そして、泣きながらも正義は、急に目付きを悪くして、天月の両腕を、思いっ切り引っ張って、天月の体を引き寄せると、
その檻越しに顔を押し付けた。天月の赤い唇目掛けて唇を付き出したのだ。
それには、仰天する天月、
「う、ううつ、うわあ^^ああ^^ああーーーーー、な^^にを^^、するん^^だーー!この変態がーーー!」
「だって、殺す殺すって言うから、そしたら、じゃあ俺も、キスするキスするってしたら、凄く嫌でしょー、」
身動き出来ない。いじけた天月が言う、
「う、うう、い、嫌だ!」
「ほーらね!じゃあ、殺す殺すって言われる。俺も、嫌なんですよ、分かったでしょう!」
「わ、分かった。何も言わずに、やってやる!」
「ああつ、ああーーー、そう言う事を言うんですか、なら、俺も、言わずにしますよ!」
唇を尖らせる、正義、
「うう、うあああーーーーーー!よせ、よせーー!その口をやめろー!キス、キスをしたら殺してやる。」
「じゃあー、しなくてもそうでしょ、」
「そ、そうだ。やってやる!」
「じゃー、した方がいい。しないよりもよっほどいいーよ、早くしましょう!」
「し、しましょうだって?私に、同意や、了解を取っているのか?この変態男が、私が、そんな事を承知も同意もする物か!愚か者め!」
両腕を抑え込んでいた正義に対して、天月闇大佐は、そうは言っているのだが、
然し、はて?その目は喜んでいるようにも見える。
どっちだろう?どうにも、正義には、この天月闇大佐は、本当に嫌がっているようには見えなかったのだ。
2015、6、18、個人雑誌グラス、副編集長兼雑用、主力作家の齋藤 務、
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