5、人工人間達の街
敵の急襲を受け、何とか逃れたが、広大な砂漠を彷徨い、そして、やっと辿り着いた砂漠の街には、異様な光景が広がっていた。
俺が初めて見る大砂漠の中の、その巨大な都市の街は、見た事も無い、名前も知らない巨大な街だった。
近代的なビルが重なるように立ち並び、それはある意味に置いて、可なり進んだ高度な科学と文明を表していた。
どこを見ても、見るからに美しい街並みが広がり、まるで絵に描いたように隅々まで清潔な街だった。
だが、街の人々は、歩く姿も間隔も、皆同じに規則正しく、整然として無機質で、まるで機械のように整列している。
そして、その表情は、誰も彼もが無表情で、感情の無い不気味な人々が通りを行き交う、そんな奇妙な風景が、どこまでも広がっていた。
立ち止まる事も無く無駄もない行動をしていて、ただ流れる人波は、何とも気味の悪い街の光景だったのだ。
砂漠を流離い、行く当てもない俺は、この街の、公共市民では無い 上に、自分の身分証も無い、そんな、流れ者の流浪の異邦人の違法入国者だった。
だが然し、俺は、この見知らぬ世界で、もう他には、どこにも行く所が無かった。
その為に、俺は仕方なく、先ず、ここで最初に、隠れて住む居場所を、海岸線の、プラントの下に決めた。
そして、次に、生きる為に食料の確保を考えた、街に戻って、食堂の裏に回って、食料を探す野良犬のようになったのだ。
廃材置き場を漁って、使えそうな物を集めた、その後、街の人とコミュニケーションを何とか取って、掃除や片付けをさせて貰って、
ようやく、生活が何とか出来るように、為った頃の事だ。
その日、俺が、朝から、朝食を取ろうと、自作の釣竿で、海岸で魚を取っていた時だった。
俺のいるプラントの向こうの上空で、突然と、空中戦闘が始まったのだ。
それに驚きながらも、俺が、暫く、その戦闘を眺めていると、大きな爆発と閃光の後で、俺の方に向かって、
何かが、突っ込んで来た、海面にバウンドして、海岸線の砂浜をスライディングして、俺の目の前まで転がって来たのだ。
俺は驚いた、それは、体が半分に引き裂かれた。戦闘型アンドロイドのように見えたからだ。
だが、体が小さく、丁度、少女位の大きさだった。
俺が近付くと、アンドロイドはバイザーを開いて、その中の美しく可愛い顔を見せて、俺を見上げた。
それは、瀕死の重傷を負った。人間の少女だった。
俺は驚いて、直ぐに辺りを見回した、それは直ぐにも、敵が、この少女を殺しに来るからだ。
俺は、覚悟を決めて、少女を抱き上げて、安全な所に隠そうとしたのだが、
俺が彼女を抱き上げて、運んでいる間、彼女は、鋭い眼差しで、俺を怪訝に見ている。
然し、それは不思議な光景だった、体の半分を失っているのだが、然し、その少女は涼しい顔をしている。
しかも、俺を睨んでいるのだ、俺が、その少女に話し掛けても、答える事も無く、ただ、黙って俺を睨んでいるだけだった。
彼女の負った怪我は、俺には手に負えない、体が二つに裂けた大きな傷で、彼女の着ている、戦闘装甲の服の中の特殊な機械が、
傷の痛みを抑えて、必要な生命維持を仕手いるようだったのだが、俺は彼女に対して、手当らしい事も、何もする事も出来ずにいるだけだった。
その為、俺は、仕方なしに、俺が持っていた、ランチボックスを見せて、作った中のサンドイッチを進めたが、彼女は、それを食べようともしない、
だがそれは、彼女が負った戦闘の傷が深く、可なりの重症だった為だと理解した。
そして、何時、敵が来るかも知れないのだ、俺は、彼女を護ろうとしていた。もっと安全な所に、彼女を運ばないといけない、
傷の治療もしないと、俺は、彼女の上に、ランチボックスを載せて、外の敵の様子を見にいった。
外では、空中戦闘が治まって、周辺を、何かを探すように、戦闘兵器が、飛び回っていた。
そして、俺が、彼女の所に、戻ろうとした時だった、彼女を隠した建物から、轟音を上げて、何かが飛び立って行ったのだ。
俺が見上げた空には、傷付いた彼女が仲間の元に、不安定に飛びながら帰って行った。
そしてやっと、全ての騒ぎが治まって、俺は ホッとした、その時、不図 気付いた。
俺の渡したランチボックスを、彼女は持っていったのだ。
俺は、それが少しだけ嬉しかった、俺を睨んでいた彼女が、俺の好意を受け取って呉れた事に、俺の気持ちが彼女に伝わったのだと思った。
「ああーー、彼女は、助かるだろうか?いや、助かる、絶対に助かる、そうだ、そうだ。うんうん、アハハハハ」
そして、俺は、瀕死の彼女の去った空を、晴れ渡った今日の青い空のように、清々しい気持ちで心地よく見詰めていた。
最終人類の、空中戦闘要塞バトルベース、ブルーウイングの戦闘指令室では、戦闘司令官の帰還を出迎えた。
直属の部下達が、ブルーウイング指令のバトルクイーンレスカフィールドの帰還作業を、慌ただしく仕手いた。
「レス指令、ご無事で、良く、ご帰還をされました。敵のメサイヤは、撃破しました。指令の、捨て身の攻撃が、決め手に為りました。本部にはもう、報告済みです。」
「そうか、あの、赤いメサイヤは、中々手強かった。」
「レス指令、手の持たれているのは、それは、何ですか?」
「んん、ああ、美味しい物だそうだ!」
「は、はい、あ、規則ですから、こんな物は廃棄して下さい。いいのなら、こちらで処分します。」
「いや、これは、私の戦利品だ。私の部屋まで持っていく」
「は、はい、分かりました。」
レスは、引き裂かれた体を、新しい体と交換して、自分の部屋に戻って行った。
この戦闘要塞は、最終人類と呼ばれる、人類達の盾と為り、剣と為る、最強の戦闘軍団の移動戦闘要塞だった。
かつて、人類が、幾つにも分かれて争っていた、だが、人類の最大の敵が現れて、人類は滅び掛けたのだ。
そして、残された、人類たちは、自分達の体を増やして、存続を続けていた。多重体人類、彼らはそう呼ばれている。
俺がいる街は、合成人間の街だった。
彼らは、人でも無く機械でも無い、感情の無い、亜人のような存在だった。
彼らは、主に経済や、工業製造を、おもな仕事として、合成人間の国家を運営していた。
彼らは、戦争はせずに、多重体人類と共存している、だが、俺は、ここにも、長くはいられない。
一刻も早く、俺のいた世界に帰らなければいけないのだ。
だが、俺は、俺のいた世界にどう戻るのか?俺は、その思案に暮れていた。
そんな時だった、俺が合成人間の街で、雑用の仕事をして、水と食料の一部を分けて貰っている時に聞いた事だ。
機械人類と戦闘を仕手いる、多重体人類が、今度は、バイオモンスター人類と戦争を始めたのだ。
この合成人間の国家も戦闘に巻き込まれるかも知れない、俺は、そろそろ、この街を出ていく時期が来た事を感じた。
そして、その後すぐに、俺は、また再び、あの少女と出会う事に為ったのだ。
個人雑誌グラス編集部、副編集長兼雑用、主力作家の齋藤 務、
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2017年1月24日、文章修正、
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