プロローグ
永遠の愛に生きた不死身の少女
天空の強い風が吹き荒ぶ、雲海の上、人々が暮らす大都会の平野の全てを見下ろす高い山の山頂のその地下で、
ある者の出現を、何世紀も前から、静かに眠り待ち続ける不死身の少女がいた。
再び、その少女が目覚める時、少女の待つその者は、必然と仕手、この世界に現れた。
少女は、ある少年を長い間ずっと待っていた。
その少年の出現に気付き、遂に長い眠りから目覚めた。
だが、長い年月の時間と風雪で、少女の体は、残酷にも時間に刻まれ浸食し、既に朽ち掛けていた。
もう、自分の体が長くは持たないと、短く切ない、その運命を悟った少女は、持てる力を出し切って、少年を再び出会った頃の、自分の元に送り届けようとした。
朽ち掛けた体で山の山頂の頂に立つ、少女の手足と体は、直ぐにも崩れ掛けた砂の様だった。
自分が、何時消えて仕舞うかも分からない姿で、少女の決意したその顔には、悲壮感などは無く、唯、口元に微かな微笑みを浮かべ、少女は楽しげに、記憶の過去の中で、その心が色鮮やかに舞い踊っていた。
それは、少年との懐かしい日々を、もう一度 再び、あの日が遣り直せるならば、
今 、少年を再び、この手に抱き締められるのならば、少女は何も惜しむ物など無く、例え、自らの命ですら要らないと言う強い思いが胸に有った。
朽ちた大きな鋼鉄の翼を広げ、少女は死に掛けた最後の天使の様に、青い空へと舞い上がる。
遥か天空の大空を高く舞い、その少年の元に飛んで行く、少年をもう一度、その腕に再び、又抱き締めようと地上へと舞い降りて行く、
少女の記憶の瞳には、愛しい少年の姿が、はっきりと見えていた。
青空の中を、その少年の元に、彼女は両腕を一杯に広げ、真直ぐに向かって行った。
その少女の強い思いは、再び彼と出逢い、再び彼との別れが来たと仕手も、澄んだ青い空のように、少女の純粋な心が舞うかのような、空には白い雲を長く美しく引いている。
少女は一瞬の刹那の時間でも、あの少年を抱き締めたかった。
だが然し、その思いを、無残にも邪魔するかの様に、地上から対空ミサイルが、放たれた。
未確認飛行物体を、大都市にはいかせなかった、都市防衛のかなめの防空兵器が、飛行する少女の行く手を阻んだ。
白い雲を、赤い炎の矢が貫く様に、何発もの防空ミサイルが、無残にも天使の体を引き裂いて行く、
もう、少女の伸ばした手は、あの少年には届かなかった。
地上へと螺旋を絵描いて、一筋の光の様に、少女の体が、轟音を立てて地面に減り込んだ。
少女の、その唇の息が 途切れる瞬間まで、少女は、その少年の顔を瞳に映していた。
もう少し・・・と、何かを言い掛けて力尽きて仕舞う、彼女の思いが、落ちたその地上で潰えて仕舞った。
その墜落のあとを、防空レーダーで、墜落地点を捜索する軍用ヘリが群がり、地上に落ちた少女を見付け、その体を速やかに収容する。
翼の千切れた天使を、近くの軍事基地へと、輸送仕様と仕手いた。
周囲には、戦闘ヘリが護衛し、輸送部隊が、天使の亡骸を、空へと運んで行く、都市の上空を横切って、飛行するヘリの一団が、街の上に差し掛かった。
その時だった。時の止まった筈の、少女の瞳に、一瞬光が灯った。
次の瞬間、輸送ヘリはコントロールを失い、ある一点に向かって、一直線に突っ込んで行く、巨大な輸送ヘリが、民家に向かって墜落したのだ。
激しい爆発と炎が、天使の亡骸全てを、焼き尽くそうと仕手いた。
だが、少女の体は、燃え盛る残骸を押し退けて、異様にも 立ち上がり、何かを探すように、不気味に歩き回った。
何度も起こる爆発、積んでいた弾丸が、激しく破裂して、まるで、戦場の修羅場の様に、激しく暴発仕手いる。
そんな業火の中で、彷徨う天使は、その家に住む、意識の無い少年を見付けた。
見付けた瞬間に、天使は少年を抱き締めて、そして、少女と少年は、眩い砂の光に包まれ、それから、二人が光の中に消えて行った。
二人が、どこに消えたのか?二人がどこに行ったのかは、それを誰も知らない、
だが、少年を抱き締めている少女の体は、遠く果てし無い世界の果てへと、少年を抱いて連れて行ったのだ。
如何してなのか?何故なのか?それは、唯、次元の先に、少女が生きた世界に、少年と少女の心が触れ合った。
楽しかった思い出、愛した日々の記憶の彼方で、少女の瞳と心には、愛しい少年の顔と姿が焼き付いていた。
もう一度その幸せな日々が戻るならばと言う 強い思いで、全てを捨てた少女の一途な思いが、少年を時空の彼方に、連れ去って行ったのかも知れない・・・
個人雑誌グラス編集部、副編集長兼雑用、主力作家の齋藤 務、
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2017年1月24日、文章修正、
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