僕の家内は招き猫が好き

個人的なエッセイ?

「剣の道殺人事件」

2020年02月13日 | Book
「剣の道殺人事件」(講談社文庫)を読んでいます。

この小説。
数十年前に読んだ記憶があります。

剣道の大学対抗戦。
試合の最中に起きた、密室殺人。

犯人は、どうやって彼を殺害したのか。
彼は、なぜ殺されなくてはならなかったのか。

竹刀を置いた、一人の青年。
彼には忘れられない過去があった。

それは、最愛の人の自殺。
鏡に書き残された、「風・風・風」の文字。

紅いルージュ。
その言葉の意味するものは・・・。

残忍な連続殺人が始まる。

今読んでいるところは、最終場面です。
切なくて、胸が熱くなります。

犯人の思い・・・。

そういえば、この時代の作品って、
犯人に同情する部分がたくさんありました。

抗いきれない悲しみ。
踏みにじられた人格。

「お兄ちゃん。恨みを晴らして・・・・」
見開いた目からこぼれ落ちる、ひとすじの涙。

初めてこの作品に出合った頃の僕は、
どんな風に感じたのだろう。

ページを閉じたとき、なにを思い描いたのだろう。

ベッドの上で本を開く。
電気スタンドの灯りが、やわらかく文字を浮かび上がらせる。

「あなたが好きなの」
彼女は頬を赤く染めて、小さな声でつぶやく。

肩に押し当てられた、彼女の額。
僕は、彼女の肩を抱きしめた。

人を愛おしいと思うこと。
人を大切にするということ。

剣の道。

あのときの僕は、ページの中で生きている。

◆ 参考文献 「剣の道殺人事件」 講談社文庫

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