お酒がない

ある檀家さんのお宅に
月忌回向ににお伺いをしました。

お経が終わりお茶をいただいていると
こんなお話をされました。

「最近、ウィスキーの仕入れが難しくなった。
　酒屋さんにウィスキーが入荷しないみたい」

こちらのお宅はスナックを経営しています。
ウィスキーは大切な商品です。

訊けば、
洋酒はアメリカの港でストップしている。

ニッカ、サントリーは
中国で美味しいと評判になり、
買い占められている。

とのこと。

「私たち生活できないじゃないの」
悲痛な叫びが胸に刺さりました。

コロナでお店を閉めて、
再開したと思ったら、ウィスキーがない。

過ぎ次と起こる苦難。

観光客が来るのはいいけれど
日本人が生活できなくなるのは悲しい。

複雑な気持ちになりました。

切ない夏

厚い。
死にそうだ。

扇風機がうなりをあげながら
生暖かい風を部屋の中にまき散らす。

僕は麦茶を飲みながら
ひたいの汗をぬぐう。

年々暑くなる日本列島。
でも今年の夏は異常です。

雨は降らない。
6月だというのに30℃越え。

死にますよ。
そんな不安が心をよぎる。

浴衣を着て縁側に座り。
夜気に包まれた庭を眺める。

団扇の風が気持ち良い。
蚊取り線香の匂いがする。

僕はスイカを食べながら
彼女のことを思う。

楽しいはずの夏休み。

思い出すのは
甘酸っぱい後悔だけ。

そんな切ない夏が懐かしい。

小学生の日記

全国的に35℃を超える気温。
熱中症に注意。

そんな文字がスマホに浮かぶ。

僕は鬼子母尊神祭のお手伝いで
炎天下の道を車で走る。

厚い。
エアコンが聞かない。

コロナの関心が薄れたら
今度は天気予報。

テレビは話題に事欠きません。

吹き出す汗もなんのその
気合を入れてご祈祷をしました。

お寺に帰ると
除草剤の散布をしました。

境内は草ぼうぼうです。

「あなたの頭も
　これくらいは生えないかしら」

いらないところに草は生える。
僕の頭は何も生えません。

理不尽だな。

10ℓ入りのタンクを背負い。
よろける足が情けない。

熱中症になりますよ。
今日はよく働き？ました。

普段、何もしないから、
こういう時は少しうれしい。

同級生は早くもお盆経を回っています。
空も地上も夏まっ盛りです。

地震

昨日、熊本で地震がありました。
そんなメッセージが携帯に表示されていました。

心配になって、
九州にいる子供たちに連絡をしました。

地震、大丈夫？

「てっ、自信があったの？」

知らなかった、という返事に、
ちょっと不安になりました。

僕の勘違い？
もしかして以前の地震の話題なの？

そういえば
ニュースで何も言ってなかったような。

仕事から帰宅した家内に尋ねると、
「あったわよ」だって。

なんか日本中、地震だらけで
慣れっこになっているよね。

そのうち大変なことになるかも。

そんな不安を抱きながら
夜のひと時を過ごしています。

地獄のお盆経まで、
あと35日。

温泉

朝の7時40分。
私は、ある檀家さんのお宅にいました。

「いくら早くてもいいから
　とにかく早く来てください」

というリクエストにお応えしました。

お寺を出たのは5時40分です。
ちょっと寝不足。

「こんなに早くても大丈夫ですか？」

さすがに早いだろうと思い、
仏間に向かいながら尋ねました。

「いえ大丈夫です。
　この後温泉に行く予定だもので」

「え～、いいですね」

にこやかな笑顔に、
思わず返事をしてしまい

「とちらへ？」

この言葉が運の尽き。

それからというもの、
温泉地がいかに素晴らしいか。

延々と説明を受けました。

これじゃ早く来た意味がないような？

県内割。

嬉しそうな笑顔に、
私の心も楽しさくなりました。