
政府首脳に尋ねた。
--北朝鮮の金正日(労働党総書記)周辺から情報を入手しているのか。
「それは、ない」
--では、北の意図、ミサイルの種類などははっきりしないのか。
「分析、推測はある」
--相手の手の内が正確に読めないのでは、作戦も立たないのではないか。
「そう言われても仕方ない」
北朝鮮による長距離弾道ミサイルの発射準備が完了した模様だが、肝心の一級情報が日本にはない。ほかの国はどう対応しているのか。
当然ながら、金正日の身辺などで、CIA(米中央情報局)、SVR(露対外情報庁)、モサド(イスラエル諜報(ちょうほう)特務局)、韓国国家情報院などが執拗(しつよう)なスパイ戦を繰りひろげているのは確実だ。
しかし、かりに同盟国、友好国が一級情報をキャッチしても、自国の利益につながると判断しない限り、日本に提供しない。もっとも脅威にさらされる日本だけが情報過疎の状態に置かれているのだ。
戦後ずっと、日本は独自の諜報機関を持たないまま過ごしてきた。経済大国にはなったが、<情報小国>に甘んじている。安全保障上の脅威だけでなく、各国首脳の身辺情報、さまざまな国際的変動の事前情報などを敏速に入手できない。
歴代首相は情報不足を補うのに苦心するハメになった。佐藤栄作首相が沖縄返還交渉を成功させるため、ニクソン米大統領との密使役として若泉敬京都産業大教授をひんぱんに使ったことはよく知られている。
また、中曽根康弘首相は就任直後、ひそかに瀬島龍三(旧軍参謀、伊藤忠商事会長)を韓国に送り込み、戦後初の首相による電撃的公式訪韓を実現させた。森喜朗首相も、現役の時、
「北朝鮮に使いを送っている」
と漏らしたことがある。
あまり知られていないのは、小渕恵三首相の北方領土外交だ。エリツィン大統領の末期、小渕はロシア通の佐藤優(まさる)(外務省国際情報局分析第1課主任分析官)に、
「エリツィンの健康状態を探ってこい。毎週モスクワに飛べ」
と命じ、官邸機密費から自由に使える金を手当てしてくれたという。佐藤は約30回、ロシア情報を小渕に直接報告したが、
「クレムリンには何も動きがないようです」
と言うと、小渕は、
「動きがないのも大事な情報だ」
と応じた。佐藤は、
「小渕首相の伯父さんである小渕岩太郎さんは陸軍中野学校(東京・中野にあった旧陸軍の秘密戦要員養成所。1938年発足、敗戦で消滅)の出身で、おそらくこの伯父さんに薫陶を受けていたのだと思う」(「月刊日本」4月号)
と語っている。小渕は情報収集に一種の勘があった、ということだろう。
だが、首相が在任中だけ個人的に活用する密使方式には限界がある。国として情報に継続性がなく、いまのように短期政権の繰り返しではなおさらだ。
今回、麻生太郎首相が情報収集にどんな手を打っているのかわからないが、冒頭の政府首脳発言を聞く限り心もとない。
自民党内で情報機関設立の必要性が議論されたことは何度かあったが、そのつど世論の反発などを理由に立ち消えになっている。国家としてのんきすぎるのではないか。
脅威が発生するたびに<情報小国>を嘆き、脅威が収まると忘れてしまう。独立国にとって不可欠なものが、一つ抜け落ちている。慢性的な平和ボケだ。(敬称略)=毎週土曜日掲載
==============
岩見隆夫ホームページhttp://mainichi.jp/select/seiji/iwami/
毎日新聞 2009年4月4日 東京朝刊
そうか、現代日本にはフィリピンルバング島にいつまでも残っていた小野田寛郎みたいな人も007ジェームズ・ボンドもいないのか。ほとんどが、アメリカ頼みなんだろうか?テレビは政府が北朝鮮のロケット発射を伝え、いや誤認だったと言う。まあ、こんな状況では打ち落とせないでしょうね。通過予定の東北で不安が広がらなければいいが。
--北朝鮮の金正日(労働党総書記)周辺から情報を入手しているのか。
「それは、ない」
--では、北の意図、ミサイルの種類などははっきりしないのか。
「分析、推測はある」
--相手の手の内が正確に読めないのでは、作戦も立たないのではないか。
「そう言われても仕方ない」
北朝鮮による長距離弾道ミサイルの発射準備が完了した模様だが、肝心の一級情報が日本にはない。ほかの国はどう対応しているのか。
当然ながら、金正日の身辺などで、CIA(米中央情報局)、SVR(露対外情報庁)、モサド(イスラエル諜報(ちょうほう)特務局)、韓国国家情報院などが執拗(しつよう)なスパイ戦を繰りひろげているのは確実だ。
しかし、かりに同盟国、友好国が一級情報をキャッチしても、自国の利益につながると判断しない限り、日本に提供しない。もっとも脅威にさらされる日本だけが情報過疎の状態に置かれているのだ。
戦後ずっと、日本は独自の諜報機関を持たないまま過ごしてきた。経済大国にはなったが、<情報小国>に甘んじている。安全保障上の脅威だけでなく、各国首脳の身辺情報、さまざまな国際的変動の事前情報などを敏速に入手できない。
歴代首相は情報不足を補うのに苦心するハメになった。佐藤栄作首相が沖縄返還交渉を成功させるため、ニクソン米大統領との密使役として若泉敬京都産業大教授をひんぱんに使ったことはよく知られている。
また、中曽根康弘首相は就任直後、ひそかに瀬島龍三(旧軍参謀、伊藤忠商事会長)を韓国に送り込み、戦後初の首相による電撃的公式訪韓を実現させた。森喜朗首相も、現役の時、
「北朝鮮に使いを送っている」
と漏らしたことがある。
あまり知られていないのは、小渕恵三首相の北方領土外交だ。エリツィン大統領の末期、小渕はロシア通の佐藤優(まさる)(外務省国際情報局分析第1課主任分析官)に、
「エリツィンの健康状態を探ってこい。毎週モスクワに飛べ」
と命じ、官邸機密費から自由に使える金を手当てしてくれたという。佐藤は約30回、ロシア情報を小渕に直接報告したが、
「クレムリンには何も動きがないようです」
と言うと、小渕は、
「動きがないのも大事な情報だ」
と応じた。佐藤は、
「小渕首相の伯父さんである小渕岩太郎さんは陸軍中野学校(東京・中野にあった旧陸軍の秘密戦要員養成所。1938年発足、敗戦で消滅)の出身で、おそらくこの伯父さんに薫陶を受けていたのだと思う」(「月刊日本」4月号)
と語っている。小渕は情報収集に一種の勘があった、ということだろう。
だが、首相が在任中だけ個人的に活用する密使方式には限界がある。国として情報に継続性がなく、いまのように短期政権の繰り返しではなおさらだ。
今回、麻生太郎首相が情報収集にどんな手を打っているのかわからないが、冒頭の政府首脳発言を聞く限り心もとない。
自民党内で情報機関設立の必要性が議論されたことは何度かあったが、そのつど世論の反発などを理由に立ち消えになっている。国家としてのんきすぎるのではないか。
脅威が発生するたびに<情報小国>を嘆き、脅威が収まると忘れてしまう。独立国にとって不可欠なものが、一つ抜け落ちている。慢性的な平和ボケだ。(敬称略)=毎週土曜日掲載
==============
岩見隆夫ホームページhttp://mainichi.jp/select/seiji/iwami/
毎日新聞 2009年4月4日 東京朝刊
そうか、現代日本にはフィリピンルバング島にいつまでも残っていた小野田寛郎みたいな人も007ジェームズ・ボンドもいないのか。ほとんどが、アメリカ頼みなんだろうか?テレビは政府が北朝鮮のロケット発射を伝え、いや誤認だったと言う。まあ、こんな状況では打ち落とせないでしょうね。通過予定の東北で不安が広がらなければいいが。
見事な情報弱者っぷりだな(笑
さすが団塊世代
ほんとうに、洗脳されっぱなしの社会の癌だな
まったく
「ほんとうに、洗脳されっぱなしの社会の癌だな」
は
「ほんとうに、洗脳されっぱなしの社会の癌とちまたで笑われている世代だな」
です。
「まったく」は「まったくやれやれ」です。
失敬(笑
次回ご訪問いただく時は、お名前とURLをいただければいっそう有り難いのですが。