2017年度のノーベル平和賞授賞式が、12月10日、ノルウェーの首都オスロで開催された。
受賞したのは、国際NGO「核兵器廃絶国際キャンペーン」ICAN。授賞理由は、被爆者らと連携
し、2017年7月7日に、国連で「核兵器禁止条約」を採決させた行動が高い評価に値するとい
う理由である。ICAN の事務局長でスウェーデン人のベアトリス・フィン氏(35)の演説は力
強く、理性的で、この世の邪悪な勢力を一掃した。今日は三つの事柄、恐怖・自由・未来について
語りたいと述べ、1950年度のノーベル文学賞を受賞したウィリアム・フォークナーの受賞時の
発言を紹介した。それは、「ただ一つ残る疑問は、自分がいつ吹き飛ばされてしまうか」である。
それが核兵器であり、ウィリアム・フォークナーが感じていた恐怖はさらに危険なものとして残さ
れたと語った。核兵器による支配は、デモクラシーに対する侮辱であり、すべての国が核兵器禁止
条約に参加することを要求した。核兵器保有国に対しては、国名を挙げて、変革と全廃を促した。
William Faulkner (1897~1962) は 米国南部で暮らす人々の悲劇と克服を実験的な手法で小説化した。
アメリカよ、恐怖よりも自由を。ロシアよ、破壊よりも軍縮を。イギリスよ、圧制よりも法の支配を
フランスよ、テロの恐怖よりも人権を。中国よ、道理の通らぬことよりも道理を。インドよ、無明よ
りも分別を。パキスタンよ、ハルマゲドンよりも論理性を。イスラエルよ、抹殺よりも良識を。北朝
鮮よ、荒廃よりも英知を。それぞれ選びなさいと語った。そして、「世界のすべての人々に呼びかけ
ます。私たちとともに、政府に対して、条約に署名するように求めてください。私たちは、すべての
国の政府が理性の側に立ち、この条約に参加するまで活動し続けます。私たちの運動は、理性を求め
デモクラシーを求め、恐怖からの自由を求める活動です。ご清聴ありがとうございました」と結びの
言葉を述べて、演説を終えた。会場に拍手が起こり、それから、スタンディングオベーションととも
に、広島市出身の被爆者 Thurlow Setsuko 氏(85)が登壇した。節子さんは常々、私の体験をお
話するのは、同情を受けるためにではなく、核兵器の危険性についての警告であると発言してきた。
このスタイルは、今回の受賞演説にも色濃く反映されていた。そして、具体的に被爆時の体験を語り
始めた「合衆国が最初の原爆を広島に投下した時、私は13歳でした。私は今も鮮明にあの朝を覚え
ています。午前8時15分、私は窓の外に青みを帯びた白い閃光が見えました。それから、体が空中
に浮かぶ感覚を覚えています。私は静かな暗闇の中で、意識を取り戻しました。それから、倒壊した
建物の中に閉じ込められて身動きができませんでした。「お母さん、助けて。神様、助けて。」
クラスメイトの弱々しい泣き声が聞こえました。そして突然、私の左肩に手が触れるのを感じました
「あきらめるな!動き続けるのだ!助けてやるぞ!あの隙間のあかりが見えるか、あそこまで、でき
るだけ早く、這っていくのだ!」男の人の声が聞こえました。私が這い出た時には倒壊した建物から
は火が出ていました。建物の中にいたクラスメイトのほとんどは生きたまま焼かれ死にました。見渡
すかぎり、私のまわりは完全に破壊されていました。」そして、70年以上の長期に渡って、被爆者
は核廃絶に取り組んで来たこと、一人ひとりに名前があった。誰からか愛されていた。彼らの死は無
駄ではなかったことを確かなものにしましょうと述べ、「私が13歳の女の子の時、煙を出してくす
ぶる瓦礫の中に閉じ込められても、耐え続けました。明るい方向に向かって動き続けました。そして
生き残りました。今、私たちにとって核兵器禁止条約がともし火です。この会場にいる皆様に、世界
中でこの演説をお聞きくださっている皆様に、広島の倒壊した建物の中で聞こえた励ましの言葉を繰
り返します。『あきらめるな!動き続けるのだ!あかりが見えるか!あかりに向かって這って来なさ
い。』今夜は、松明を持ってオスロの街を行進します。核の恐怖の暗い夜から抜け出ましょう。私た
ちは、どのような障害に直面しても、動き続け、前進し続け、他の人々とこのともし火を共有し続け
ます。これは、私たちが生存するための貴重な世界についての、私たちの情熱と誓願なのです」と述
べて、演説を終えた。拍手とともに再びスタンディングオベーションが起きて、会場は、惜しみない
祝意に満ちた。会場には、広島・長崎の両市長と両市の被爆者も招待されていた。現在の世界の情勢
にあっては、核戦争を防ぐためには、核戦争に備える努力が必要であり、「アメリカが核戦力で他国
に先行されることはない」トランプ大統領の見解。「世界の安定は核兵器によるバランスによっての
み、保たれる」ロシアのぺスコフ大統領報道官の見解。などあり、これら核保有国の指導者の認識は
充分、時代遅れであると世界中の人々から認定された時、核兵器は地球上に一つもないことになる。