「陛下が一生懸命、慰霊の旅をすればするほど靖国神社は遠ざかっていくんだよ」
「はっきり言えば、今上陛下は靖国神社をつぶそうとしているんだよ」2018年6月、
社務所の会議室で、小堀邦夫宮司(68歳)が、職員らを対象にした勉強会の席で、
このような発言を致した。2018年10月、日本の週刊誌である週刊ポスト紙が宮司の
発言をスクープし報道した。靖国神社の広報担当は、宮司の発言を事実と認め、「極めて
不穏当な言葉遣いの録音内容が外部にリークしたと説明した。テレビ局の取材に対して
小堀宮司は、「天皇陛下に参拝して頂きたいという思いがあり、内々の会議の席とはいえ、
失礼な言い方をしてしまった」と釈明した。そして、小堀宮司は、皇室の祭祀を担当する
宮内庁の掌典長に、2018年10月5日の午後、面会し、陳謝して退任の意向を伝えた。
天皇と靖国神社については、1978年に、A 級戦犯が合祀(ごうし)されて以降、昭和
天皇の参拝が途絶え、今上陛下も即位後、一度も参拝されていない。2018年2月、前任
の第15代将軍徳川慶喜のひ孫の徳川康久宮司(69歳)の発言が、「靖国神社創建の趣旨
に反し、賊軍合祀の動きを誘発した」と問題視され、徳川氏が辞任し、元伊勢神宮禰宜の
小堀氏が2018年3月1日付けで、第12代の宮司に就任したばかりだった。徳川康久氏
は、明治維新について、「文明開化という言葉があるが、明治維新前は、文明のない遅れた
国だったという認識は間違いだった。江戸時代はハイテクで、エコでもあった」「私は賊軍
や官軍ではなく、東軍・西軍と言っている。幕府軍や会津軍も日本のことを考えていた。
ただ、価値観が違って、戦争になってしまった。向こう(明治政府軍)が錦の御旗を揚げた
ことで、こちら(幕府軍)が賊軍になった」と語った。徳川氏は石油会社に勤務した後、
徳川家康を祭神として祭る神社である芝東照宮に勤務していた。そして、2013年1月
19日付けで、第11代の靖国神社の宮司に就任した。徳川氏の胸の内は「明治維新という
過ち---日本を滅ぼした吉田松陰と長州テロリスト」であるのだろう。