たった10分程度の雨でも長浦駅前の道路は冠水し、マンホールからは水が溢れている。
バックパックさえ濡れなければ体が濡れても問題はない。逆に元気になるから不思議だ。
雨の中をガンガン進む。
靴も中までずぶ濡れだが、かえって気持ちがいいくらいだ。それ程水が道路を流れて足を洗う。
通り過ぎる車に滝のような水を浴びせられるが、こんな天候で歩いている方が悪いのだ。スピードを落としてくださるドライバーの方に申し訳なかった。
丘の上に出ると彼方に木更津の街が見えた。
行け!
あと少し行け!
この時、本気でホラ貝吹きたかった。
駅までここから1時間。しかし防水効果が全くないジョギングシューズは水と一緒に砂も招き入れ、ヤスリのような靴になっている。
やっとの思いで着いた木更津駅。
総武線快速「久里浜行き」にドタっと乗り込む。
「お前、スゲーな。これから、ここから、久里浜まで行くのか」
朝4:00からの苦労など何の意味も、価値も無いかのように、15:46木更津発久里浜行きの電車は軽快にホームを滑り出した。
「房総半島一周か。田中陽希は凄すぎる」
頭の中で考えられる唯一の想いだった。