☆
カフーとは、沖縄 与那喜島の方言で、いい知らせ(果報)とか幸せという意味なんだそうだ。
そして、主人公である利き手に障害を持つ島の35歳の男性明青が飼っている犬の名前でもある。
明青は、北陸に旅行に行った時に神社の絵馬に、島と自身の名前と共に「嫁に来ないか 幸せにします」
と書いた。 そうして数ヶ月した後、幸という女性から「お嫁さんにしてください」という手紙が届き、
数週間して幸が島に明青を訪ねやって来て、そこから2人の妙な共同生活が始まるピュアで切ないラブ
ストーリーで、終盤までは胸がキュンキュンする。
女慣れしていないシャイな明青は、自分の気持ちを上手く幸に伝えられないし、幸も謎めいていて何か隠
している事があるようで、そもそも明青の所に現れた幸が凄い美人だとか、そんな上手過ぎる美味しい話
が世の中にあるわけないだろうと明青も思うし読者もそう思う。 だから明青が幼馴染に騙された時、
自分の所に幸が現れた、どう考えてもありえない奇跡より、幼馴染の言葉の方がリアリティーがあって
信じてしまうのは、私も自分に自信のない劣等感を持つ人間として何か分かるような気がした。
そして、その後に幸に取った劣等感の反射からくる冷たく悲しい行動も・・・。
読んでいて思うのが、島の人々の描き方が少し足りないのと、明青とおばあの心の結びつきも、もう少し
しっかり描いてほしかった。 この2人の関係は、ある意味、明青と幸の関係以上に物語の大事な部分だ
と思う。 そして、終盤までの爽やかな感じが、明青と幸の別れと別れた後に届いた幸からの手紙で、
一気に非常に後味の悪い重く悲しい物語になってしまい、こんな展開いらなかったのでは。
この作品で学ぶべきは、人間関係や愛は、自分の気持ちや自分の素性は、言葉でちゃんと正しく相手に
伝えるべきという事。 最後は明青が、幸に騙されたと思い込んで島から追い出したのを、幼馴染の言葉
や幸からの手紙で本当の事を知り、幸に再会して謝り、今度は本当の素直な自分の気持ちを伝えるべく、
幸を捜すために船出するという所で終わっている。 上手く幸と再会する事ができるのか。 そして、
幸ともう一度やり直す事ができるのかは読者の想像に任されている。 私としては、もう再び幸と会う事
ができなくて、大きな後悔が残る悲恋のバッドエンドに終わった方が、余韻が残って面白いと思うが。