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私の愛機は8cmMARK-X

未来の天体観測・観望

電子観望の環境が着実に充実してきている。
新しいテクノロジーは常に我々の生活をより快適なものへと導いてくれる。

酷暑の夜に一人汗をかきながらアイピースを覗き込む必要も、あるいは極寒の夜に着膨れしながら微動装置を手袋越しに操作する必要もなくなり、明るく快適な室内に居ながら離れた天文仲間同士とおしゃべりしながらモニターに映し出されたリアルタイム映像を楽しむ天体観望の世界がまさに実現されようとしている。
眼視よりはるかに優れたイメージセンサーで、蓄光とシンチレーションのキャンセルまで行うことで素晴らしい映像が待ち受けているのである。紫外、赤外への帯域を大きく広げたりコントロールすることで従来とは異なるイメージも見えてくるだろう。

それだけに留まらない。インターネットインフラの活用によるシェアリングモデルや、民間の宇宙事業への参入トレンドに伴い、我々のモニターに映し出される対象は更に膨大に拡大する。

もはや、屋外に運び出す望遠鏡に代わり、サインオンするだけで自分の使用する望遠鏡は全国、世界中のどれでも選択できるようになるだろう。車同様所有する、からシェアする時代へと。
望遠鏡メーカーも望遠鏡の販売モデルから、多種多様の自前の望遠鏡を世界各地に設置したり、個人所有の望遠鏡をPier2Pierでライセンス契約することでsubscriptionモデルで収益を確保することも有りだと思う。太陽光発電による電力を他者に販売するモデル同様、ここでは自分の望遠鏡を通した夜空を他者に分け与えるモデルが可能になる。日中でさえも地球の裏側の晴天の夜の世界を追い求め、各地の望遠鏡をコントロールできる権利を提供するビジネスが可能になるのだ。

更に民間宇宙開発事業団体であれば、民間のハッブル望遠鏡や月面&火星面に設置した望遠鏡、更にはボイジャー、ニューホライズンズのような宇宙船に搭載された望遠鏡からの映像も提供可能になる。ユーザーが見たい対象物を遠隔操作により地球からコントロールしながら、それらの望遠鏡を操って楽しめる。
通信レートの向上と共に、高精細3Dで土星の輪に飛び込むイベントもありで、正にリアルな臨場感たっぷりのStarToursが実現される。

ワクワクするような未来の天体観望の世界に夢が膨らむ一方、一息入れて考える。
”これが果たして自分が趣味としていた天体観望と同じだろうか。”

 ✔天体望遠鏡を所有しなくて良い。
   自分の欲しい望遠鏡を探し出さなくて良い
   自分の欲しい望遠鏡を買うために節約しなくても良い
 ✔重い望遠鏡を運び出さなくて良い。
 ✔暗い空へ自ら訪れなくて良い。
 ✔夜空を待ち、空の状態を気にしなくて良い。
 ✔イベントを見逃してもアーカイブから好きな時に再生できる。 

慣れればモニターに映し出されたリアルタイム映像を見ていて、従来の眼視天体観望のような臨場感、興奮を感じるようになるのだろうか。雲が出てきたら観望中止、強風が吹いてきたらじっと止むまで我慢。そんな刹那的環境の変化を強いられ慣れた者にとっては、この安定感を諸手で受け入れられるだろうか。

新たな変化に対して常に抵抗感を持ってしまうのは人間の性とは言え、想像していけば行くほど期待感と同時に無性に寂しさを覚える。
趣味とはもっと複雑怪奇な心情的側面を持っているからこそ趣味と言える。効率性、利便性、結果だけを追い求めるだけでは満足できない。

AI機能搭載の無人運転の自動車が今後の大きな業界トレンドである一方、そんな時代でもマニュアルシフトにこだわるニッチなマニア層は必ず存在していくと思う。
ただでさえニッチな天文という趣味で、眼視観望がその中で更にニッチ化していくかもしれない。ニッチであること自体に全くこだわりは無いものの、個人的にはフィルムカメラがデジカメに置換された以上にもっと感傷的な問題に思えてくるのだ。


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