以前から一度参加してみたいと思ってましたが,なかなか機会に恵まれなかった肺聴診セミナー。念願かなって参加してきました。今回は皿谷 健先生が講習会長でした。
いや〜目から鱗の内容が盛り沢山で,自分が今までどれだけちゃんと肺音を聴けていなかったかを思い知らされました。
あらためて再認識したことや,ホントに知らなかったな~ということが数多くありました。スライドの内容だけでなく,講師の先生方のコメントが参考になることばかりで,必死でメモをとりました。以下,順不同に復習のための覚え書き。
・肺胞呼吸音(vesicular breath sounds), 気管支肺胞音(bronchovesicular breath sounds), 気管呼吸音(tracheal breath sounds)を区別する
・末梢の方が呼気には音は聞こえない。気管呼吸音は吸気より呼気の方が大きい。
・気管支呼吸音では吸気・呼気両方で聞こえる。肺胞呼吸音は呼気では聞こえない。
・単音声(monophasic)の連続性ラ音では,機械的狭窄を疑う。長く喘息とされていたのが実は肺癌など別の理由であった例あり。
・肺炎のときなど,肺胞呼吸音の気管支音化に注意する
・気管支喘息のWheezeでは,monophasic(軽症)→ polyphasic (重症)と重症度でwheezeでも音質が変化する
・我々はラ音に気を取られやすい。背景にある呼吸音に注意する。
(これは心雑音に気を取られず,まず1音2音をちゃんと聴きなさい,というのに通じますね。そうすると今まで副雑音にばかり気を取られて呼吸音は気にしていなかったなあ・・と深く反省)
・気管支呼吸音が発生するのは,太い気管支の中での乱流による。1次から4次分岐くらいまで。
・PCP肺炎では,吸気・呼気で呼吸音がよく聞こえるがcracklesがまったくないのが特徴。
・肺胞呼吸音が聞こえるべき部位で,気管支呼吸音が聞こえたら(気管支呼吸音化)異常である(肺炎,結核など)。
連続性ラ音
・狭窄部位が1ヶ所ならmonophasic, 複数あればpolyphasicになる。この2つを区別することは重要。
・一定の部位で同じ高さの音(Fixed monophasic wheeze)があったら,癌などの限局性疾患を考える。
・fine cracklesは体位で変化して,うつ伏せなら減弱,下肺野では仰向けになると増強する。また深呼気後の吸気では増強する。
小児の聴診
・風車は小児科医の必須アイテム。大きく呼吸させるとき使う。
・泣かせるくらいなら寝たままで聴診するほうがまし。
・呼吸音の増強(気管支音化)は重要な所見。
・浮腫がある時には,皮膚はテカる。
・高齢者で前胸部がテカっていたら低アルブミン血症を考える。
・チアノーゼを診るときには光源によって見え方が変わるので,自分の指を横に並べてコントロールにして判断する。
副雑音
・ウィーズ,ロンカイは気道病変を表す。クラックルは肺胞病変を表す。
・クラックルは英語で書くとcracklesと複数形になるが,それが面倒なのでカタカナで書くといいかも。
・クラックルを聴くときに,聴こえなかったらもっと深く息を吸わせる。患者はcrackles, wheezeが出ないような呼吸をした方が楽なので,浅い呼吸になっていることが多い。したがって調べる時には,大きく呼吸させる。(普通の呼吸で聴診すべきと書いてある本があるが,あれはウソ)
・fineとcourse cracklesのオーバラップは結構ある。わからないときには単にクラックルと書いておけばよい。
これから外来や病棟で呼吸音を聴く時に,まず「呼吸音」に注意を払って肺胞呼吸音,気管支肺胞音,気管呼吸音を明確に意識するところから始めようと思います。そして「肺胞呼吸音の気管支音化」が認識できるようになるのをまず目標にしようと思います。