H's monologue

動き始めた未来の地図は君の中にある

使命の道に怖れなく どれほどの闇が覆い尽くそうと
信じた道を歩こう

ふたたび翻訳の沼へ

2019-02-07 | 臨床研修

Q:What is the value of carefully examining the patient’s general appearance?

A:It is the Sherlockian value of making a diagnosis at first sight, sometimes while walking down a street.


Q:患者の全体像を注意深く診察(観察)する価値はなんですか?

A:シャーロックホームズばりに一瞥をくれただけで診断をつけることができることで,通りを歩いているときにさえ(すれ違いざまにでも)診断できるほどである。

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もう10年前のことですが『身体診察シークレット(Physical Dianosis Secret)』という教科書の分担翻訳をやらせてもらいました。もともと愛読していた本だったので,簡単に引き受けました。担当は第1章の患者の全体像。図がほとんどないので,初心者向けではありませんが,ある程度勉強した方には,身体診察に関するトリビア的なことも書いてあってとても面白い本です。Q&A形式で気軽に読める体裁ですし良い本だと思います。

で,冒頭のQ&Aは,その第1章の最初の質問(Q,1)の文章。 いや,はたと困り果ててしまいました。

「Sherlockian value of making a diagnosis at first sight」 という表現です。

何となく言わんとすることば漠然と理解できる(ような気がする)のですが,これがどうにも,うまい日本語に置き換えられません。うんうん唸って・・・考え続けても思いつきませんでした。とりあえずそれ以外のところから翻訳を進めていきましたが,どうしてもこの一文だけは,良い訳文が思いつかないままに時が過ぎてゆきました。たしか2ヶ月位経過したように思います。あるとき,突然「シャーロック・ホームズばりに」という表現がひらめきました。「ヤッター!!」と思いましたね,思いつく時って,何がきっかけなんでしょう。不思議です。この時,イメージとして(すれ違いざまにでも)と追加の意訳をあえて入れました。

この本は,出版されて10年は経っていて古い本の部類に入るかもしれません。でも内容は今でも色褪せることはないと思います。何よりも,この一文の翻訳は苦労しただけ自分で書いた文章のように思い入れがあります(まるっきり自己満足ですが)。翻訳の楽しみというのは,こういうところにあるのかな・・と初めてその時感じたものです。

そしてまた一度,その沼へ入っています。もう後には引けず,大変だけど・・頑張るしかない。
コメント
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