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白いリンゴ

2010-11-10 11:05:17 | 科学
青森の白いリンゴ「サイレントホワイト」が東京にお目見えする。
新聞記事には「ピュア・ホワイト」と出ていたが本家では名前が違うらしい

もちろん白いリンゴはあったのだが、白い間は甘くない。
リンゴは日光を浴びて成熟し赤くなるとともに糖度が増す。
甘くないのは白いからなのか、まだ成熟していないからなのか定かではない。
言い換えるとリンゴは白いから甘くないのか、ただの独立した結果なのかはわからない。

これまでのリンゴ農家は、リンゴが赤くなったら甘くなるという先入観をもっていた節がある。
さらに、歌にもあるように消費者にはリンゴは赤いという固定観念があり、白いリンゴに市場価値があるとも思えなかった。
大人としては、白くて甘いリンゴを作ろうとは思わなくても当然だ。

白いリンゴを開発したのが高校生のグループだと聞いて納得した。
若くて柔軟な頭ならではの発想だ。
市場価値を考える前に作ってみたかった。
独特の色や形で消費者の興味を引く可能性さえあればそれでいい。
十分な動機だ。
まずこの着眼点がすばらしい。
つまり、大人が作ろうとしないものを作ってみようという計画だ。

さらには実行力においても秀逸だ。
まず、袋をかぶせて日光を遮断してみるというのは素直な発送だ。
それだけではない。
そのほかにも、細胞内のエネルギーの使われ方にまで工夫が凝らされている。

残された問題はそれで甘くなるかどうかと言うこと。
色と甘みに直接因果関係はなくても、日光照射が色彩と味の両方に関与しているとしたら袋をかぶせれば糖度が上がらないことになる。
結局、通常は剪定する実の周囲の葉を残すことが必要だという。
こういう実用的な発見は地道な努力のたまものである。
惜しみない拍手を送りたい。

色彩の保存については、商品化を考えれば必要な処置だが、酸化を防げばいいわけだから真空パックという通常のアプローチで十分だ。
あとは市場開拓だが、こちらも話題性が十分なので成功しても不思議ではない。
日本には紅白を尊ぶ習慣があるのも追い風だ。

最後に、高校生にこれらの研究をする場を提供した周囲の大人達にも賞賛を送りたいし、感謝したい。
日本でこういう機会を得ることが難しいのを知っているだけにこういう活動が存在することをうれしく思う。