最近の出来事

ニュースや新しいテクノロジー、サイエンスについて感じること。

授業参観

2010-10-16 21:52:27 | 日記
今日は小学校の授業参観日。
日米の違いについて感じたこと。

日本の学校では授業の様子を実際に見る。
その日1日の授業の様子を知ることができる。
その後の懇談で、授業を進めるポリシーやこれからの授業計画について説明がある。
そこでは、こちらからの要望も伝えると共に、子供の近況を父兄側が先生に説明する。

アメリカの場合、先生と30分ずつの個別懇談となる。
その際、学期はじめに比べて子供がどのくらい成長したかを説明してくれる。
例えば作文 (creative writing) では、一定期間中の作文を比較しながら子供の文章力がどう変化したかを解析する。
子供の近況を先生が父兄に説明する。
この仕組みはあくまでも子供一人一人の才能や特徴に差異があることを大前提としている。

教育に対する考え方が大きく異なると感じる。




忘れた頃に

2010-10-15 22:54:03 | 日記
以前面倒を見ていた生徒達 (protege) から時折便りが来る。
たいていは特別な機会でも何でもなく、一年に1-2度、ただ近況を知らせてくる。

毎年、一人か二人ずつしか引き受けないので、全体数は多くない。
それでも10年以上になると結構な数となる。

聡明な学生が多く、生活ぶりを知らせてくる文章にも味があり、いつも感心させられる。
それにしても、みんながどこで活躍しているかを知ることが出来るだけで楽しいものである。

ざっと見回しても、社会人になった人たちは保険会社、マイクロソフト、テレビレポーター、医師など多彩な職業。
まだ勉強を続けている学生も医学校が一番多く5人在籍中だが、ロンドンのビジネスクールや大学院(化学、生物学、法律)に進んだ生徒達もいる。

自分が経験したことのない職業について、修行生活や日常業務の様子をリアルタイムで覗えることが最大の喜びだ。

博士号

2010-10-14 18:17:23 | 日記
今日は博士課程の学生が学位審査員の前で研究予定の発表を行った。
結構厳しい状況だった。

これまでの予備研究の結果発表とそれに基づいた計画自体は合格点をもらったが、今後の予定について重大な懸念が表明された。
最低でも週40時間のベンチワークに加え、週10時間の学部学生指導の義務と片道2時間の通学時間というのは現実的でないというのだ。
確かに、生後数ヶ月の赤ん坊の母親役を努めながらこの週70時間以上の拘束時間をこなしていくのは不可能に近い。

彼女はこれまでの4年数ヶ月間、頑張ってきた。
GPA 3.83 というのは2/3以上の科目でA(最良の成績)を取ってきたことを示す。
クラスのトップと言っていいだろう。
このまま退学するのは彼女にとっても、院にとっても損失だ。

みんな何とかして彼女を卒業させる方法はないかと案を出し合った。
引っ越して通学時間を週20時間以上減らすというのは有力な案の一つだ。
いずれにせよ、学位を取るというのは、学問ができて有能なだけではままならないものだと感じざるを得ない。
彼女はどういう解決法を提案してくるのだろう。



マイレージ マイライフ

2010-10-13 23:00:34 | 日記
Up in the Air マイレージ マイライフのDVDが図書館で借りられたので再度観ることにした。
American Airline, Hilton Hotels, Hertz などの旅行関係会社の宣伝もすごいけれどこの映画に出てくる登場人物はそれぞれしっかりと描かれており違和感がない。
そのうえ、会話が軽妙で微笑みたくなるような場面が数多く登場する。
人生の一大転機である失業がテーマなだけに映画全体が暗く沈む危険がある。
それを回避する手法としては最良だ。

俳優陣ではジョージ・クルーニー、ベラ・ファーミガ、アンナ・ケンドリックらが印象に残る。
ジョージ・クルーニーはERで売り出していた頃に比べ、余裕のある演技で微妙な内面の変化をうまく描出している。
ベラは The Departed ではそんなに目立たなかったが、今回の映画では妖しい魅力を十分に発揮している。
トワイライト・サガでジェシカを好演しているアンナは助演女優賞でオスカーを取ってもおかしくなかった。
2010年にこの分野でノミネートされた5人の演技を全て観た上での意見だ。
本命・対抗ともこの映画の女優陣だと信じていたので Precious のモニークの受賞は意外だった。

ー気に入った台詞ー

"Never get behind old people. Their bodies are littered with hidden metal and they never seem to appreciate how little time they have left. Bingo, Asians. They pack light, travel efficiently and they have a thing for slip on shoes. Gotta love 'em."
「セキュリティーでは老人の後ろにつくなよ。彼らの体中に金属が埋まっている。そのうえ、老い先が短くて時間が貴重なことを理解していない。おっ、アジア人だ。彼らは装備が軽いし効率がよい靴もすぐ脱ぐ。彼らの後ろが最高さ。」

"Would you like cancer?"
"What?"
"Would you like can, sir?"
* 訳すとつまらない………

"Can you stop condescending for one second or is that one of the principles of your bullshit philosophy?"
<アンナがジョージに対して>、「一瞬でもいいからその偉そうな口の利き方をやめてくれない?それともそうするのが貴男のチンケな人生哲学なの?」

"You know why kids love athletes?"
”Because they screw lingerie models."
"No, that's why we love athletes. Kids love them because they follow their dreams."
「どうして子供たちがスポーツ選手にあこがれるか知っているかい?」 
「スーパーモデルと仲良くできるからかい?」
「いや、それは俺たちがあこがれる理由だ。子供たちは見ているのは彼らが夢を追い続ける姿勢だ。」

挙げていけばきりがない。
安易な語呂合わせもウィットに富んだ会話の中では清涼剤のような役目を果たしている。
よく練られた台詞を楽しむために繰り返しみられる数少ないコメディーの一つだ。
星5つ。







Secretariat

2010-10-12 21:52:13 | 日記
ディズニーから競馬の映画が出てきた。
不朽の名馬セクレタリアートの物語 "Secretariat" だ。
この馬の強さは、ベルモントステークスでの勝ちっぷりが物語っている。
いつも最後方から追い込んで一気に差すレース展開だったが、このレースでは驚異的な逃げをうちそのまま脚の衰えを見せず30馬身差でぶっちぎるという強さを見せた。
3冠の前二レースを見た限りでは唯一対抗できそうだったシャムですら、ベルモントステークスでセクレタリアートに付いていこうとしてスタミナを消耗してしまい着外に沈んだ。

シャムは悲運の馬と言える。
ケンタッキーダービーではレコード記録で2着。
プリークスもセクレタリアートの2着。
ベルモントステークスもあんな無茶なレースにならなければと言う思いだろう。
シャムもセクレタリアートと同様、エクリプスのX因子を受け継いでいたのだから当然だが。
年が違えば3冠も夢ではなかっただろうに。

映画は、ダイアン・レインとジョン・マルコビッチがさすがと思わせる存在感で観るものを引きつける。
ストーリーも、ディズニーらしくわかりやすい。
悪人と善人の区別がはっきりしているという意味だ。
メッセージは、「諦めるな、自分の信じた路を進め」「八方塞がりに見えても努力を続ければ道は拓ける」というディズニーの定番。
丁寧に作られた映画で、多くの人に楽しんでもらいたい映画だ。

インフルエンザ ワクチン接種

2010-10-11 17:38:47 | 科学
今日は子供達がインフルエンザの予防接種 (flu shot/nasal-spray) に行ってきた。
二人ともLAIVだろうと思っていたら下の子だけ注射と言われ、心の準備ができていないこともあり悲しくなったらしい。

CDCによれば、今年は2009H1N1を始めH2N2とインフルエンザBを標的にしているらしい。
FluMist® は妊娠していない2-49才の人に承認されているので当然、二人共適応だろうと自分も思っていたが、そうではなかった。

今日は連邦政府の定める休日 (federal holidays) ではなく病院や郵便局など多くの職場が通常業務をしているが、学校が休みだった (Columbus Day) ので定期検診とワクチン接種を予定した。
ちなみにコロンブス・デーはイタリア人が大事にしている休日だ。

パールマン (Itzahk Perlman)

2010-10-10 20:15:09 | レビュー
今日、パールマンが音楽監督をしているウェストチェスター・フィル (WPO) のコンサートが開かれた。 (SUNY Purchase)
WPOはロングアイランド・フィル (LIPO) と長くライバル関係にあったが近年は共に長期凋落傾向にあった。
ところが、WPOはパールマンを音楽監督に迎えてから観客数が伸びているという。
近年の経済状況により、郡政府からの補助金をカットされて苦しいなかでも何とか頑張っている。
話はそれるが、学校でも芸術関係の予算が大幅に削減されて多くのプログラムが廃止に追い込まれた。
学校でのオーケストラ活動もその一つだ。
今回のコンサートでも、資金援助を訴える姿に窮状を見た。

コンサートはパールマンの弾き振りで始まった。
ベートーベンの「ロマンス」2曲。

この曲には思い出がある。
アイザック・スターンがニューヨークフィルのシーズン初日にベートーベンのバイオリン協奏曲を弾くというので興味津々で会場まで出かけていった。
その時には、スターンが高齢だったので、体力的にどうかなと思ったものだった。
ふたを開けてみると、コンチェルトではなくロマンスを弾くという。
がっかりすると同時に安心もしたのを覚えている。
肝腎の演奏の方は、ホロヴィッツの来日公演と同じ形容詞が使えるとだけ書いておく。

さて、パールマンの演奏の方はどうかというと、渾身の力で演奏しているとはお世辞にも言えないが、魅力的な音色を聴かせてくれた。
ピアノの弾き振りはアシュケナージやエッシェンバッハで何度も観たが、バイオリンは初めてだ。
直前まで指揮をしながら、高音で始まるフレーズをいきなりビシッと決めてくるところはさすがだった。

2曲目はベルリオーズの序曲「ローマの謝肉祭」 (Le Carnaval Roain)
WPOの木管はそこそこのレベルだが、金管が少し弱い。
ニューヨークフィルを始め、この辺りには優れたトロンボーン奏者、トランペット奏者が集まってきているだけに残念だ。

3曲目はチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」
今日の解釈は、これがチャイコフスキーの遺書だというもの。
この直後、自ら命を絶ったという説を採っている。
やはり、金管が弱いとこの曲は寂しい。
出だしのファゴットを始め、木管勢の健闘振りは聴き応えがあった。
好きな曲だったことと、グランドティアの一番前センターという最良の席だったことから、多少のことには目を潰れる。
良いコンサートだった。

余談2つ。

第3楽章の終わりで拍手する人がいるに違いないとは思っていたが、予想をはるかに超える大拍手。
立ち上がる人までいる。
失笑せざるを得ない。
オーケストラの団員や指揮者は重々承知という風で、しばらく間を置いてから消え入りそうなアダージョへ。

二つ目は、アンコール前のパールマンのトーク。
4楽章の終わりは救いがたい鬱気分を連想させる。
会場の重たい雰囲気をを読んでかパールマンはアンコール曲を用意していた。
ブラームスの「ハンガリー舞曲第5番」で軽快にコンサートを締めた。

その時のことだ。
パールマンが苦労しながら指揮台に上り椅子に腰掛ける。
そして、振り返りながら、 "Before you leave....." (帰る前に………)と切り出したところ、1階席のお客さんが4人ほど立ち上がって帰っていくところだった。
しかも歩行器を使ってゆっくりと。
そのお客さんが会場から出るまでの間をパールマンが軽妙なトークでうまくつないでいく。
アンコールは " Some leave and some stay. This will alleviate the traffic. Those who remain can tell them later it was fun." (渋滞の緩和が目的だから何人かは帰ってくれないと困る)と言ってお客さんを笑わせる
人柄が前面に出て美味しい一時だった。
これも生コンサートの面白さの一つである。

追加
最初の「ロマンス」でいつものようにコンマスがパールマンのバイオリンと弓を持ってくる。
そこで、彼は2台のバイオリンをみながら突然、 "eenie, meenie, miny, moe" (どちらにしようかな………に相当する子供の数え歌)を始めた。
もちろん会場の雰囲気が和んだ。
彼は観客の気持ちを惹きつけるが上手い。

アメリカの大学教授

2010-10-09 17:20:57 | 日記
アメリカの大学教授は学生や他の教授の評価を常に受けている。
講義の内容から準備の度合い、人柄やテストの難易度に至るまで細かく学生が評価する。
同じ学部内の教授も授業に参加して意見を大学に提出する。厳しい品質管理だ。

それだけではない。
学術的な業績についても、外部の専門家に評価を依頼する。
これまで発表した論文のそ重要性、独創性、有用性を調べるためだ。
アメリカは競争社会だと言われるが、むしろ、peer-review 社会と行った方が妥当だ。
日本では他人を評価する習慣がないため、仕事で渡米すると最初は途惑うかも知れない。

Grey's Anatomy

2010-10-08 23:36:44 | 日記
Grey's Anatomy も7年目のシーズンに突入しもう3作目。
このドラマは年々面白くなってきており、6シーズン目は最高だった。
特に最後の数作は緊張感があってシリーズの頂点だったと思う。

今シーズンはスタートで躓いた印象だったが、3作目にした初めて面白くなってきた。
最初の2作はPTSDがテーマで暗く救いがたいドラマだ。
1本ならともかく2本はしつこい。

新しいキャストが登場したこともあり来週からの新展開を期待しよう。


Inspiration 9

2010-10-07 23:51:48 | 日記
ソフトウェアの感想

Inspiration 9 を子供用に購入したが、ちょっと早すぎたかも知れないので InspireData を代わりに子供に与えて、こちらは自分で使うことにした。
アイコンやクリップアートが子供用に作製されているが Brainstorming 用にはもってこいのソフトウェアだ。

ビジネス用のこの種のソフトは高価な上、自分にとっては不必要な機能で溢れている。
視認しながらアイデアを練るだけならこれで十分と言うより、まさにもってこいのソフトウェアだ。
考えや資料を一覧表にして、相互の関連を結合線の色で種類別に整理したり、資料の確実性やソースを形や背景色で表示できる。
考え直す時にはドラッグするだけで良いところがミソ。

もちろん思考過程や計画をプレゼンテーションや表として出力もできるが、漠然とした考えから現実的な戦略を引き出すだけならまさにこれだ!という感じだ。
瓢箪から駒



ソーシャル・ネットワーク

2010-10-05 18:08:04 | 日記
先週のボックスオフィスで第一位だった The Social Network を観た。
いわゆる伝記物だが見応えがある。
二人の若者が友情、信頼、欲、裏切を経験し変化していく。

主人公のマーク=ザッカーバーグ(ザック)はハーバード大学でも一目置かれる天才なのだが、彼の社会生活はバラ色とは言えない。
特に、彼女とは非常に惨めな破局を迎える。
その彼がSN(ソーシャルネットワーク)の代表格とも言える Facebook を作り上げていく過程を描いた映画だ。

彼が、後発のフェースブックをどうデザインすることによって MySpace を超えていったかが柱の一つではあるが、その奮闘を支えたエデュアルド・サヴェリンの友情、その後の二人の確執と裏切り、法廷での争いと和解がその周りで渦巻く。
更に、ナップスターの創始者であるショーン・パーカーのフェースブックにおける役割も描かれているが、何故、ザックが彼のアドバイスを受け入れたかが容易に理解できるつくりとなっている。
様々な人間の思惑と葛藤が真実味たっぷりに盛り込まれた楽しめる映画だった。

俳優陣は、「ゾンビーランド」で好演したジェシー・アイゼンバーグが主役で、新作のスパイダーマンで主役ピーター・パーカーを演じるアンドリュー・ガーフィールドが相手役を務める。
映画の中で彼のモチベーションの一つとして登場するエリカ役を「エルム街の悪夢」のルーニー・マーラが好演する。

フェースブックは個人情報を公開し、友人間で近況を知らせ会うには大変都合がよいが、日本では受け入れられないかも知れない。
広告も少なめで、使いやすさとすっきりしたデザインを売りとしているが、現在付き合っている相手の名前とフェースブックページを公開し、音楽、映画の好みから性的嗜好まで自己紹介に載せる習慣は日本では根付かないと思うからだ。
ソーシャルネットワークを使う人の立場で改善し、数億円というはした金に目もくれず上を目指したフェースブック・チームの先見性には脱帽だ。
映画を観れば多くの大学生とその家族がフェースブックに登録している理由を知ることができる。


映画を見に行く前に、以下の用語を知っておくと役に立つかも知れない。

ファイナル・クラブ(ハーバード)
映画の中でザックが入りたがっていルとして描かれた、ボストンの学生クラブ。
因みに彼は「ファイナルズ・クラブ」と名前を誤解している。
男性だけが入れる100年以上の伝統をもつクラブが8個あり、ハーバードの学生で選ばれた者のみが入会できる。
いわゆるフラタニティーと似ているが幾つか異なる点がある。
まず、大学と縁がないという点。
男女差別だとして大学から指導を受けた際、縁を切って独立したからだ。
もちろんいまだに卒業後の世話等でコネが利くだけではなく、一種の特権階級の仲間入りをするという意味があるので学生には人気がある。
実は、ザックは在学中にクラブに興味を持っておらず、映画の話は筋書きをスッキリさせるための設定だったそうだ。

ハウス(ハーバード)
いわゆる寄宿舎だがそれだけにとどまらない。
奨学金もハウスごとに存在するし、各々のハウスの卒業生と在校生のつながりもある。
一つの生活単位と考えた方が良い。
映画の中に「ハウスの名簿」が出てくるが、データベースはハウス毎に別個でしかもユーザーインターフェースが全く異なる。
ザックが各々の名簿をハッキングする際にいちいちプログラムを書き直さなければいけなかったのはそのためだ。
それだけ各ハウスの独自性が強いと理解すればいい。

ナップスター
P-to-P のファイル交換プログラムの草分けで、音楽ファイルを主な標的としていた。
映画に登場するショーン・パーカーがショーン・ファニングと共に創始した会社だが、法廷闘争で敗れ破産した。
最終的にはその名前とロゴを電子機器類の小売業者であるベスト・バイが100億円以上で購入している(2008年)。
ショーンが映画の中で強調した「 "being cool" が結局お金を呼び込む」という考えの正当性をこの事実が証明している。

VC
Venture Capital: 初期の会社への投資。
映画の中ではザックが500万ドルの出資を受けると言う描写があるが、まさにその種資金がVCだ。
出資者をエンゼルと呼ぶこともある。




季節の変わり目

2010-10-04 15:56:30 | 日記
1994年8月に渡米してきた時には、日本に比べて湿度が低く気温もそんなに高くないと感動したものだが、2週間ほどして8月後半に入ると朝夕の冷え込みが思ったより厳しい。
セーター無しでは外を歩けない、と慌てて服を購入したことだった。
日本から送った秋冬物は、まだのんびりと船便で太平洋を渡っていた頃の話だ。

それに比べて、今年は9月いっぱい暖かく、ようやく昨日の朝(9月3日)から秋らしく冷え込んできた。
今日は家の暖房が日中から入ったくらいだ。
ニューヨークでは室温が基準値を超えて下がるのが違法なので、自動的にセントラルヒーティングのスイッチが入る。

今年の初夏は気温が低く、冷夏を予想していたが見事に外れた。
残暑も厳しく、玄関脇に毎年植えている花が今年はぐったりしていた。
今年は庭の菜園にナスとバジルを植えたが、トマトとキュウリにしておけば良かったと後悔した。
これも地球温暖化の影響だろうか。

そう言えば、二酸化炭素の排出と地球温暖化の関連を必要以上に強調した(科学的な基準で言うと虚偽の記載)というスキャンダルが新聞を賑わしていた。
地球の温度が上がったり下がったりするのは当然のことで、これまで何度も氷河期が存在したと多くの科学者が信じている。
さらに、現在よりも地球上の平均気温が高かった時期も数多くあったと推定されており、地球温暖化がこの世の終わりとは思えない。
ただ、人間の活動が地球環境に影響を及ぼしている事実をどう判断するかの問題だ。

これまでも地球上の生物が地球の環境を大きく変化させてきた。
元々地球上にはこれほど大量の酸素は存在しておらず、光合成を行う生物の活動によって蓄積されたものと考えられている。
地球環境が生物の活動で大きく変化した例だ。
善悪はどう判断すればいいのだろう。

人の活動も同様に地球環境に変化をもたらしている。
他の生物の受ける影響は甚大だ。
これだけ爆発的に人口が増加すれば、環境を変化させる速度が早くなるのは不可避だ。
ましてや、多くの発展途上国の人々が、いわゆる先進国の人々のような生活を目指している。
この要因を考えたら、京都会議での努力など全く無意味に見えてくる。
だからといって貧困にあえぐ彼らに今のままの生活を変えるべきだないと誰が言えよう。
言い換えると、既得権を有する社会(Population)が、これから発展しようとする国々に制限をかけることは倫理的に許されるのだろうか、という疑問を持つということだ。

Tragedy of the commons (コモンズの悲劇)が避けられないのは各種実験(社会実践或いは思考実験)で明らかとなっている。
地球資源を Commons と捉えるならば、conservation (資源保護)の為の規制が必要となってくる。
これまで無制限な消費を楽しんできた国や人がこの理由で資源保護のための規則を作る、という動きに違和感を覚える。
倫理的におかしいと感じるからだ。

一方、地球資源には限りがあり、このままの勢いで人口が爆発すれば、地球資源、特に biodiversity (生物多様性)の維持にとって、最大の障害となるだろう。
地球温暖化を防ぐために二酸化炭素の排出規制が必要という論理は、問題の本質に目をつぶっているとしか思えない。
もっと人口増加の弊害を叫ぶべきではないか。

さらに、この温室ガス効果については三つの問題がある。

一つは科学的根拠。
公表されたデータは、彼らの主張を正しく見せるために手が加えられている。
座標軸のゼロを省くなんてことは、まともな科学論文では考えられない。
データ捏造も厭わない人々が発表した論文がどれだけ信用できるだろうか。

二つ目は、現状の地球の温度変化はこれまでの地球の歴史から見て特別なものではないという事実。

最後に、実効上の問題。
京都議定書に記された規制が実行できたとして、長期的に実効性はあるのだろうか。
人口増加の勢いは止まろうとする気配すらない。
この状況でどれだけ二酸化炭素の排出を抑えていけるだろうか。
これは規制が必要かどうかという議論とは別物だ。

こうやってみてくると、自制の利かない数の増加という問題を抱えたヒトは、まさに地球上のがん細胞である。
自ら滅びるとも知らずに地球を食い尽くしている。
前例もある。
イースター島だ。



ナイン

2010-10-03 22:11:50 | 日記
遅ればせながら、ダニー・デイ=ルイスのナインを観た。
1982年のブロードウェイ版(オリジナル)は観てないし、アントニオ・バンデラスのリメイク版も観ていない。
映画を先に見たミュージカルはウェストサイドストーリー以来だ。

監督はシカゴやSAYURIを映画化したロブ・マーシャル。
相変わらず映像が美しい。
ただ、このイタリアものでは、シカゴの時ほど彼独自の再構成手法が効果を発揮していない。

役者は揃っている。
ジュディ・デンチは圧巻。
ソフィア・ローレンも存在感がある。
ケイト・ハドソン、ペネロペ・クルス、ニコール・キッドマン、マリオン・コティヤールらは魅力たっぷりの歌と踊りを披露してくれる。
ダニー・デイ=ルイスは大好きな役者なのだが、この映画では輝きが今ひとつだと感じた。
この映画の中ではグイド・コンティーニは表面的に描かれており、演じづらかったのかも知れない。
おそらくは監督の責任だろう。

マーシャル監督は映像美に関しては第一人者だが、人間の内面に切り込んでカラフルに描写する技術を欠いている。
さらに、彼の映画の中でだんだんと緊張感が高まっていくような場面にもお目にかかったことがない。
全てをサラッと組み立てていく感じだ。
ダニー演じるグイドもその延長で、彼の内面の葛藤を一面的に捉えて、簡潔な算数として描いている。
ダニー・デイ=ルイスは内面の葛藤を表現するのが上手な俳優だけにもったいない気がする。

総合評価は微妙で、映画の質としては平均的なところだが、豪華キャストの各々の演技を味わうだけでも十分観る価値のある映画だと思う。

アップル社の戦略

2010-10-02 09:47:16 | 日記
O'REILLY にアップル社のビジネスモデルの解析が掲載された。
アップルの株価は今年著明に上昇し、時価総額でマイクロソフト社を凌いだ。
中期的に見ても、10年前の iPod 発売時と比べるとアップルの株価は30倍である。
この間比較的成功しているグーグルの株価でも5倍弱の上昇にしか過ぎない。
他のコンピュータ関連株に至っては、マイクロソフトやインテルは価値減少、デルは半分以下にまで下落している。
一般に好調だと考えられているグーグルに比べても6倍ほどの差をつけているという実績は詳細に分析してみる価値がある。

著者の Mark Sigal は O'REILLY に発表した論文の中で、アップル社の戦略の立て方と、その遂行の仕方に秘訣があると分析している。
その戦略は "Segmentation Strategy" と呼ばれている。
マーケティングでは通常、大きい市場をターゲットにするほうが有利だと考えられるため、"horizontal marketing" (一つの製品をより多くの人に、多くの機会に使ってもらえるようにデザインする)戦略をとることが多い。

日本でいえば携帯電話がその例だ。
携帯電話は本来の機能に加えて、カメラ、メモ帳、また支払い端末として多機能かつ包括的な道具を目指している。
そして日本のケータイは日本人の生活に密着してガラパゴス進化を遂げた。
一つの成功例(失敗例?)である。

アップル社は一方、 "vertical marketing" (一つの製品を一つの機能に特化する)という戦略を固持した。
典型的な例が iPhone だ。
アップルはコンピューターが生活の中で不可欠となっている人を対象として、スマートフォンという分野にのみ製品を投入した。
実績を見ると、今年1月から6月に販売された5億台を超える携帯電話の中でアップル社の製品が占める数はわずか1700万台(3.4%)に過ぎない。
にもかかわらず、スマートフォンに限ってみれば市場占有率は39%と携帯電話の雄ノキア(32%)を凌駕する。
一つの分野に特化し、価格ではなく品質で差別化を図る方針だ。

この高品質を維持するノウハウの中には、コンピュータのハードとソフトの両方を開発しているというアップルの特徴が生かされている。
アップルは自分たちの持ち味を生かして、消費者に一つの生活様式を提案し、新しい市場を開拓してきた。
例えば、アップルはコンピューターやソーシャルネットワークと携帯電話を一括で使用することを提案した。
その提案が消費者に受け入れられたことはここ数年の実績を見れば明白だ。

さらに、仕事や家庭でコンピューターに依存している人達にとって、普段使っているコンピューターとのシンクや、携帯を紛失した際の保安管理は無くてはならない機能だ。
クラウドを利用してこういった機能を可能にするサービスは、アップル社とグーグル社のみが提供出来る。
これもただのメーカーにとどまらないアップルならではだ。
もちろん、このサービスも品質を高めている要因の一つであることは言うまでもない。
自分たちを含めて限られた会社にのみ可能な包括的なアプローチで差別化を図りつつ、各々の製品については機能を特化するというのがアップル社の個別化戦略だ。

さらにアップル製品はユニークなのも特筆できる。
アップル社の新製品 iPod や iPhone, iPad は独自性の強い製品だったが、消費者に受け入れられた。
日本では iPhone について「かまぼこ板を耳に当てるのは耐えられない」という抵抗があったと聞く。
アップルは音声電話としてよりテキストやメールなど他機能を使うことが多いことを前提としてデザインしている。
使用形態の調査もそれを裏付けている。
さらに、その製品成形の技術の高さは日本メーカーが足元に及ばないほどだ。
ケータイを見れば、いまだに先史時代の枠の組み立て方式を使っているのが分かる。
後に類似の製品が雨後の竹の子のように登場したという事実が、アップルの製品開発能力の高さを物語っている。

品質における差別化は販売促進において絶大な効果を持っている。
日本にはクラウド事業を高品質で維持出来る企業がまだないという現実が、スマートフォンで iPhone を追撃出来る日本製品が出現しない理由だろう。
実際、グーグル社はアンドロイドを発表し着実に業績を伸ばしてきた。
カレンダーやメールを含めたクラウドの第一人者が携帯電話を取り込んでアップルの牙城に食い込んできている。
グーグル社はソフトウェア開発とウェブ関連サービスのみにとどまり、ハードウェアのメーカーと棲み分けをしているのも成功の理由の一つだ。
やはり、餅は餅屋である。

一方、ソフトウェア界の覇者マイクロソフトはどうかというと、クラウド事業で手痛い失敗をした。
その責任を問われて CEO であるスティーブ・ボーマーは今夏のボーナスを50%カットされた
クラウドを中心とした電子書籍、携帯電話事業が不振だったからだ。
マイクロソフトでさえ、規模が大きくなるとクラウドを維持出来ない。
それだけ高い技術とノウハウが必要だということを示している。
アップルとグーグルだけが提供出来るサービスだといった理由がここにある。

他の製品を見てみよう。

  • シャッフルは必要最低限の機能のみを備えた超小型音楽再生機で「ながら音楽鑑賞」用だ。

  • ナノは同じく超小型ながらタッチスクリーンを装備し、「絵も見たい」人用だ。

  • タッチは高機能音楽動画再生機で、ゲームやアプリケーションが使用出来、「電話はいらない」ひと向けだ。

  • iPhone は唯一電話機能をもつ、「電話が無いと寂しい」人用だ。

  • iPad は基本的には画面の大きいタッチでウェブや書籍の閲覧に好都合だ。
    カメラがないかわりに、携帯電話のネットワークが利用出来るので、「持ち運べる簡素なコンピューターも欲しい」ひと向けだ。  
    セカンドコンピューターとしての役割を目指している。(統計でもこの使われ方が多いと確認されている

  • そしてラップトップは「フル機能のコンピューターが欲しい」人を対象としている。


  • 自分も全ての製品が魅力的だとは思わない。
    電話と iPad があれば十分だ(勿論コンピューターは必要)。
    仕事場では目的に応じてCPUが数台、常時使用するラップトップが2台と非常用ラップトップが3台。
    それらが全てクラウドを通じてシンクしている。
    電話は本来の機能の他に、覚え書きや住所録、履歴やメール等が瞬時にクラウドとシンクする機能が不可欠なので iPhone 以外もはや考慮できない。

    旅行等で携帯するには iPad が最適だ。
    これまでは Air を使ってきたが、旅行の友としては高機能すぎるきらいがあった。
    動画や音楽を鑑賞したり、ウェブブック程度の使い方をするだけなら iPad で十分だと思う。

    子供達は今のところ、シャッフルとタッチ(本当は iPad の方が良いらしい)を楽しんでいる。
    スケートのプログラムの曲や練習中の曲を聴くならシャッフルが小さくて使い勝手が良い。
    ゲームをしたり、調べ物をするならタッチ。
    さらに、家の中で音楽を聴くならタッチの方が使いやすいという。

    このように、各人にとっての最適な機種は生活様式によって違ってくる。
    一つの機種で全ての機能を網羅する必要はない。
    雀を撃つのに大砲は要らない理屈である。

    もう一つこまやかな神経も使われている。
    アップルは新機能を慌ててつけることをしない。
    例えば、新タッチに投入されはカメラの機能が、すでに発売されていた iPhone のカメラよりも高性能にならないようにした。
    技術的に不可能なのではなくあくまでも戦略的な理由からだ。
    電話にはどの国でも契約上の縛りがあり、消費者は自由にハードを交換出来ない。
    数ヶ月で高機能の製品が投入された時のユーザーの気持ちを慮っている。
    新製品の販売促進の為にはなりふり構わないという態度はとらない。

    アップルの成功が何を意味するだろうか。
    一つには、こういった高品質・付加価値に対しては電子商品であっても消費者が進んでプレミアムを払うということが証明された。
    二つ目は、長期的な戦略をたて正しく遂行すれば、一見その時の常識に反すると思える動きも新しい市場の開発につながるということだ。
    三つ目は差別化。アップルは低価格ラップトップやウェブブックを開発してこなかった。
    低価格ではなく、あくまでも革新的な機能とデザインで消費者を引きつけようと努力した。
    長期的にブランドイメージを確立しようという努力である。

    ソニーがかつて持っていた革新的で高品質なイメージが色褪せているのがさみしい。
    日本企業には、マスコミや政府を利用して競争を有利にしようと試みず、長期的戦略を持って正面から堂々と勝負できる製品を開発して欲しい。