「わからないんです」
少年は言った。
相手の女が答える。
「そう、どうして?」
「だって・・・」
少年は黙ってしまった。
しばらくの沈黙の後、少年は口を開いた。
「意味無いじゃないですか」
「意味?」
「そうですよ、何かしたって、結局無駄になるじゃないですか」
少年は子供っぽい声に似合わず、大人びた口調だった。
「そうかな?じゃあ、今君がしてることも?」
「そうじゃないんですか」
女は困ったような顔をして少年を見つめた。
「でも、しなきゃいけないことはあるでしょ?」
「そうですね」
「君は、それも無駄だって思ってるの?」
少年は言葉を詰まらせたが、すぐに答えた。
「出来ないんですよ」
「どうして?」
「わからないんです」
女は続ける。
「したくない、っていうことじゃないの?」
少年は首を振った。
「しなきゃいけないのは分かってます」
「そうなのね」
「でも、逃げちゃうんです」
「逃げる?」
「どうでもいいことばかりしてしまうんです。自分でもわからないんです」
「わからない」を繰り返す少年に、女は強い口調で言った。
「君は、逃げてる自分を直そうとしてないよ」
「・・・・・・。」
少年は黙ってしまった。
女は続ける。
「今の自分を見て、直せる所から直していこう」
言うが早いか、少年は突然叫んだ。
「質問に答えて下さい」
女は驚いて少し身体を引いた。
「僕は答えが知りたいんです、逃げないで下さい」
「・・・答え?」
少年の目はどこか虚ろだった。
「僕はもう何も分からないんです」
女は直感的に悟った。
―――彼は危険だ。
「もう何もかもどうでもよくなってきて・・・そんな自分が怖いんです」
女は突き放すように言った。
「私には答えられない。誰も答えられないと思うわ」
少年は俯いたまま動かなかった。
「その答えは君が決めることよ。他人に決めてもらうものじゃないの」
少年は黙ったまま立ち上がった。
そのまま出口までゆっくりと歩いて行った。
彼は納得したのだろうか。
それとも、何も分からないまま毎日を過ごしていくのだろうか。
女は迷いを振り払い、少年に言った。
「楽しい人生を、ね」
少年は少し微笑むと、静かに部屋を出て行った。
少年は言った。
相手の女が答える。
「そう、どうして?」
「だって・・・」
少年は黙ってしまった。
しばらくの沈黙の後、少年は口を開いた。
「意味無いじゃないですか」
「意味?」
「そうですよ、何かしたって、結局無駄になるじゃないですか」
少年は子供っぽい声に似合わず、大人びた口調だった。
「そうかな?じゃあ、今君がしてることも?」
「そうじゃないんですか」
女は困ったような顔をして少年を見つめた。
「でも、しなきゃいけないことはあるでしょ?」
「そうですね」
「君は、それも無駄だって思ってるの?」
少年は言葉を詰まらせたが、すぐに答えた。
「出来ないんですよ」
「どうして?」
「わからないんです」
女は続ける。
「したくない、っていうことじゃないの?」
少年は首を振った。
「しなきゃいけないのは分かってます」
「そうなのね」
「でも、逃げちゃうんです」
「逃げる?」
「どうでもいいことばかりしてしまうんです。自分でもわからないんです」
「わからない」を繰り返す少年に、女は強い口調で言った。
「君は、逃げてる自分を直そうとしてないよ」
「・・・・・・。」
少年は黙ってしまった。
女は続ける。
「今の自分を見て、直せる所から直していこう」
言うが早いか、少年は突然叫んだ。
「質問に答えて下さい」
女は驚いて少し身体を引いた。
「僕は答えが知りたいんです、逃げないで下さい」
「・・・答え?」
少年の目はどこか虚ろだった。
「僕はもう何も分からないんです」
女は直感的に悟った。
―――彼は危険だ。
「もう何もかもどうでもよくなってきて・・・そんな自分が怖いんです」
女は突き放すように言った。
「私には答えられない。誰も答えられないと思うわ」
少年は俯いたまま動かなかった。
「その答えは君が決めることよ。他人に決めてもらうものじゃないの」
少年は黙ったまま立ち上がった。
そのまま出口までゆっくりと歩いて行った。
彼は納得したのだろうか。
それとも、何も分からないまま毎日を過ごしていくのだろうか。
女は迷いを振り払い、少年に言った。
「楽しい人生を、ね」
少年は少し微笑むと、静かに部屋を出て行った。