ぐるぐる・ぶらぶら

歌舞伎と映画と美術と読書の感想

【読書】コルヌトピア

2021-02-24 01:30:44 | 読書記録
冒頭、情景が身体に染み入りにくい。
文章の滑らかさが私には足りなかったのか、それとも、
「植物の認識」というヒトの言語ではない領域に近づけた表現を
意図していたからなのか。

AIを対にして言語を学習させていくと、いつかヒトのことばを
介さない独自のことばを生み出してヒトに理解できない会話を
し始めるのだと、いつだったか読んだ。その感覚に近い。

植物についての仮説が魅力的。
意識のようなのがあるけれど、ヒトと異なって統合されない感じが
それっぽい気がして、腑に落ちる。

森は物質で繋がる(菌根や共生菌をつなぐのは代謝の連鎖、物質の移動。
人間の脳内でシナプスの間は物質が繋いでいるのと似てる)から、
ネットワークそのものだし。
物質の移動はエネルギーの偏在だし。

この世界観で長くものがたりを綴ってほしいな。

自然林と「庭」の違いの表現も。面白かった。

主要人物3人とも繊細でピュア。植物っぽい。
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コルヌトピア
津久井五月
早川書房
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014560/

(2021.2.23)

千葉市美術館に向かう出掛け、長く総武線に乗るからと、
道連れに何となく積読から選んだ本は、植物が内包する何かを指していて
田中一村の描くそれとシンクロ。
本はいつだって読まれたいときに私を呼ぶのだ。