曹達記

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2020年7月ポケスペ剣盾編感想

2020-08-03 00:54:00 | ポケスペ
ルリナとそーちゃんのジム戦の続きから。

キョダイマックスとダイマックスの違いは、ゲーム的には「一部の技の性能が変わる」程度の意味しかないのだが、ポケスペでは「他の技の性能も変わり、体型も変わることで通常の姿ではあり得ない動きもする」とかなりの強化。

キョダイガンジンの効果で交代がままならなくなったそーちゃんは、スティックンのみで戦うことになる。
最初からルリナのポケモンに致命的ダメージを与えてしーちゃんを有利にするつもりだったのだから、この時点でスティックを使った作戦をひらめいていたのかもしれない。もしかしたら最初からスティックンには作戦を伝えていた可能性もあるが。

マナブとの特訓をいかし、ルリナに勝利したそーちゃん。負けたときのルリナのポーズは原作での敗北時リアクション。
だが、その後のコメントで無自覚な煽り発言。気性の荒いルリナ相手にはキレられてしまう。おまけに、ルリナのポケモンに致命的なダメージを与えたことは、他のジムチャレンジャーにも迷惑をかけているのではないかという指摘を他の方がしている。
思うに、彼は自分が合理的と判断した行動に一切の迷いを持たず、周囲の評価は気にしない気質なのだろう。かなりルビーと似ている。本来なら水組だったのだから、それを計算してキャラ造形したのかな…。
そーちゃんにはやはり内に秘めた危うさがあって、どこかでそれが爆発する可能性はある。

ローズとの会食では、ソニアが地味に深刻なPTSDを抱えていることが語られている。他の方が指摘していたが、追及されてもすぐに逃げていて、解決しようとする意思がない。
マグノリア博士は「諦めずに食らいついて成果を出せ」と言ったにも関わらずソニアは逃げており、しかも成果は自分の努力なしで転がり込んでいる。
どこかで致命的な破綻を来しそうな気もするが、そこがPTSD解消の手だてになるか?
尤も、PTSDを解消することが本人のためになるのかということは慎重な議論になりそうだが…。

一方、しーちゃんの戦いはまたしてもカット。こればかりはどうしようもないのかな…と、今回も思っていた。しかし、実はこれこそに物語の構造上の意味があったのだと気づかされることになる。

さて話は変わるが、プロ野球において先発投手は6人でひとつのローテーションを組み、そのうち1番目と4番目は同一のチームと戦う3連戦(カード)の最初に投げる。このカード頭に投げる投手は勝つために当然エース級を用意するのだが、ただ勝つだけの役割ではなく、相手打者のインコースを攻めることで腰を引かせ、次戦以降を有利にするという役割もある。

今回のそーちゃんの仕事はまさにこれである。
ここまでなぜそーちゃんからジム戦に挑むのか、という疑問点があったのだが、実はそこにこそ「一番手として挑むことでしーちゃんを有利にする」という意味があったという…。
コロイチという男子読者の多い雑誌である以上、「男から挑むのは仕方ない」と自分も見落としていたのだが、ここで物語上の意味をきっちり出してきたのである。素直に感服した。
さらに、14章で抱えていた「サンとムーンは対等な立場であり、精神的にはムーンの方が上でさえあるのに、ムーンは不当に活躍を削られていた」という構造的問題も解決している。即ち、「しーちゃんのジム戦での活躍が少ないのはそーちゃんが意識的に先発を打って出ているから」という理由付けができるのだ。

しかし、これはそーちゃんの「パターナリズム」というべき行動。確かにしーちゃんは手持ちに重大な欠陥を抱えており、更にその原因を作ったのはそーちゃんなので責任を感じていることは間違いない。
だが、しーちゃん自身はフェアプレーを重んじる気質がある。勿論それで相性的に有利なヤローにすら苦戦しているのだから、ルリナには当然負けていたであろう。浴びた光が原因なのかは分からないが、現状でのバトルの才覚は明確にそーちゃんに劣っている。それでも勝ち進まなければ手持ちは帰ってこないというジレンマである。

ともかく、しーちゃん自身の意思を無視してそーちゃんがアシストを行ってしまったのは事実。しかも彼女のためを思ってだからたちが悪い。
やはり前章の二人とは異なり、どこかで致命的なすれ違いをきたす危険性がある。問題はそのすれ違いが物語の本題にどう絡んでくるのか、だが。