一句鑑賞

菜種梅雨

南風が強烈に吹き続けた一日だった。雨も・・・

夜になり風は収まってきたが雨は止まない。

菜種梅雨に例句が四句載っているので

幻に建つ都府楼や菜種梅雨   野村喜舟

都府楼、大宰府政庁の跡地ですね。今は公園として都府楼の礎石がきれいに並んでいるが、私が子供の頃に遠足で行ったころは・・・草むらで石碑が一つ「都府楼跡」とあるだけだった。

掲句は、礎石に建っていただろう都府楼を幻と捉えて詠まれているのでしょう。雨に煙るなかに古代の建物が浮かびます。

包丁を研ぎにほはせて菜種梅雨   長谷川浪々子

にほはせ(匂わせ)。

砥石に水をすこし垂らしてシャッ、シャッと包丁を研いでいると鋼の色か水がねずみ色にねっとりとしてくる。水を垂らしながら研ぎすすめていると、砥石からとも鋼からとも分からないがやや甘みを感じる匂いがでる。摩擦に因るものとおもうが・・・しばらく降り続いている雨の香にも通じるものがあるのでしょうか。

鯉痩せてしづかに浮ぶ菜種梅雨   福田甲子雄

鯉の背が水面に現れているのですが、その背が痩せているように見えるのですね。しずかに浮ぶ鯉に自らを投影しているのでしょうか。

炊き上がる飯に光りや菜種梅雨   中嶋秀子

かまどで焚いているのでしょうね、ふたをちょっとずらすと飯が光っているのが見えたのでしょうか。炊き上がるのを待っている間も雨は続いているのですね。

 

歳時記に詠われた景色(生活)は、今は失われたものも多いですね。

包丁は数年前まで研いでいました。

鯉はすこし濁った水に浮んでいたのではと思います。

ご飯は炊飯器任せですが、炊き上がったときの米の輝きは光りを感じますね。

雨は週末も続く予報です。

明日はオフで、久しぶりに床屋へ。

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