『世界でいちばんやかましい音』
ベンジャミン・エルキン/太田大八・絵/松岡享子・訳(こぐま社)

世界で一番やかましい、ガヤガヤという都で、王子様が誕生日のお祝いに「世界で一番やかましい音が聞きたい」と言い出します。世界中の人々が、同じ日の同じ時間に一斉にやかましい音を立てるということになりましたが…?
なかなか風刺が効いたおもしろいお話です。最後は静かになって、鳥の鳴き声や風が木の葉を揺らす音、川のせせらぎの音が聞こえて、世界で一番しずかな国になりました、という終わり方です。そこに至る展開がさもありなんで、「自分一人くらい音を立てなくても分からないだろう。世界で一番やかましい音をよく聞きたい」とみんなが考えて一斉に静寂に包まれたというわけ。単純にやかましいよりしずかな方がいいでしょ、じゃなくて、思い切り「やかましい」が肯定されている世界で、いきなりしずかになるので、そのコントラストが面白いですね。人間のエゴも、わかりやすい。
先日の読み聞かせで、高学年に使っている人もいました。(14分くらいとのこと)
『すずめのくつした』ジョージ・セルデン/光吉郁子:訳/ピーター・リップマン:絵(大日本図書)

幼児から低学年向けの、字が大きい読み物です。
スコットランドのある街に、両親と2人のおじさんと住むアンガスという男の子が主人公です。アンガスのお父さんと2人のおじさんは、くつした工場を営んでいましたが、近くに大きい店ができて、お客を取られてしまいます。そんなある日、アンガスは仲良しのすずめたちにくつしたを作ってあげるのですが、その可愛い赤い縞模様のくつしたは街中をとびまわり評判に。とうとう、アンガスの家の工場に、くつしたを求めるお客さんが殺到します。
すずめにくつしたを履かせるという発想力がすごいですね。スコットランドの冬がとても寒いことも伝わってきます。途中、すずめにくつしたを作りすぎて毛糸が無くなってしまうのですが、やっぱり毛糸が必要だと悩むアンガスに、スズメたちがくつしたを返却してくるところがまたいいです。
勉強会では感想を言い合うのが楽しいのですが、「好きじゃなかった」と言う人もいました。すずめの絵がスズメっぽくないのと、工場のくつした編み機の仕組みがちゃんと描いていないという指摘でした。言われてみれば、なるほど~。
好きじゃないものは好きじゃないとか、はっきり色んな意見が出てくるのが楽しいなあ~と、改めて思いました。