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「ポーの一族 ~春の夢~」萩尾 望都/小学館
ヴァンパネラ(吸血鬼)のエドガーとアランは永遠の14歳、老成していながら永久に思春期という狂おしさが、また改めて痛切でした。40年ぶりの新作ということで、期待と不安入り交じりつつ読むわけですが。全体は耽美的な雰囲気を保ちつつ、ちゃんと物語として面白かったです。
舞台は第二次世界大戦中のイギリスの田舎。ドイツでのユダヤ人迫害から逃れてきた少女・ブランカとエドガーが出会う。弟を守ろうと必死に生き、叔母の家に身を寄せているブランカが、ドイツ語の歌を歌う場面が印象的です。
ブランカは自身も戦争の被害者でありながら、敵国から逃げて来てドイツ語を使わないように等、自身を抑制しながら生きている。でも、懐かしいドイツの愛の歌を歌うことで心が解放されます。少女の郷愁を巧みに物語に組み込み、ちゃんと時代を描くと共に、ただ悲しいとは違う複雑な感情の味わいがありました。
絵はまあ、昔のほうが繊細かなとは思いますが、比べるのは野暮ですね。でも、エドガーの硬質で繊細な雰囲気はそのままでした。今まで謎としてぼかされてきた部分を描いたりと、リバイバルではなく意欲的に話を動かしています。続くようなので、今後にまた期待ですね。