まだ読み終わっていないのに『百年の孤独』ガブリエル・ガルシア=マルケス著(訳:鼓 直/新潮社文庫)読書会に参加してしまいました。(参加者は5人)
舞台は南米コロンビアと思われる。ある村「マコンド」を開拓したブエンディア家の、およそ100年に渡る年代記。
皆さん高評価で「すごく面白かった」「不思議な読書体験」というのが一致した感想でしたね。
私の感想は飛ばしまして、みなさんの感想メモを。接続詞なく要約の箇条書きですいません。間違っていたら教えて下さい。(※ )は私の補足です。
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●はづきさん
めちゃめちゃ面白かった。なのに何を読んだのかわからなくなる。エピソードの要約をメモしだしたら読むのが遅くなってしまった。しかし訳者あとがきで鼓直が「要約などは徒労としか思えない」と言った通り。
若い子から死んでいくのでおいおいと思う。一方、◯◯は結局死なないんかい!となってびっくり。
家族の名前で混乱するというよりは町の名前などで混乱した。カタリノの店っていつ出てきた?
のうのうとホラーが書かれているようで面白い。一方でコロンビアの歴史と対応しているのか知識なくわからないが、実際の国の歴史も含んでいるのかと思わせる。アメリカ資本の搾取とそれが去っていったあとの衰退が現実と対応してるのかなと感じた。
けっこう血なまぐさい話も多かったけれど全体としてはとても面白かった。キャラクターとしてはアマランタ(※最初の父の末娘)が一番好き。
(※ここで私はへー!と驚きました。アマランタってとんでもねえな、と思っていたので。後に理由を聞いてみましたが、なるほどそうねえとも納得しました。)
●風太さん
ファンタジーな部分はひっかかってしまうと読めなくなるので何もかも受け入れて突貫で読んだら、まあ面白い。
冒頭部分である人物のクライマックスと思しき記述があるが、それがまったく想定外の成り行きになるのがびっくり。(※これはみんな共感しウケてました。)
面白かったのは、メルキアデスが若返ったと思ったら入れ歯だったというところ。
日々の具体的な記述が詳しくてすごく読みやすかった。面白くて何をやっているかはわかるんだけど、その結果、何が起こっているかはよくわからない。(※この感想は他の人にもたびたびありました)
一家の話だが、一つの国の興亡を見ている感じ。最初のうちはどんどん発展していって、だんだん衰退していくという。親世代がなかなか死ななくて若い世代から死んでいくので最後のほうは悲しかった。
一番好きなのは母親のウルスラ。たくましいし、池澤夏樹が書いていたように、この人がいたから家が続いた。
めちゃくちゃ面白かった。読んでよかったなと思います。
●八方美人男さん
だいぶ昔に読んでいて、読んでいるうちに思い出しました。なにしろ大作。よくこんなの書いたなと。ただ、誰か出てくるときは何をした誰々という特徴を捉えた説明があるので親切設計。
確かに最初は面白いが、だんだん不幸になっていく。エピソードとして神父がチョコレートを飲んで浮いて信者を集めていくとか、最初のホセ・アルカディオ・ブエンディアがウルスラの金を錬金術のために使っちゃうとかが印象的。
でも後半は鉄道が引かれて急にバナナ農園ができて雨と日照りが続くなどして衰退していく。結構ありえないことが書いてあるがそれをそのまま読んでいった。確かにファンタジーっぽいところはある。
伏線もなく急にあったこととして話が持ち上がったり。でもそれはそれで何があってもおかしくないという、こちらに受け入れる土壌ができていくという、これまでにない読書体験だった。
●くらさん
ハードカバーは表紙が螺旋状の城。この話も螺旋状の構造になっている。家系図を見るとわかるが同じ名前を何度も使い、同じパターン、似た性質が踏襲されていく。
それはきれいに出来ているが、やっていることを見ていると全然きれいではない。すごく系統だっているのか混沌としているのかよくわからない。
その場で起きていることはよくわかるのに、全体としては何なのかよくわからない。それが永遠に続くという、すごく不思議な読書体験だった。
ぜったいにがっつり構成を決めて書いているはずなのに、読んでいるときはそういう印象がない。作為的なのに「いまここで話が生まれた」みたいな書き方。それは個性というか、テクニックなのだろう。
ブエンディア家が生きているのは土着的なおとぎ話的な世界。まだ呪いや呪術的なものが生きている世界と思える。そこに現実世界の、戦争とか政治、資本主義などのリアルな世界が並行して進んでいる。その中で、ブエンディア家の中でも商売がうまいとか政治に長けた人もでてくるが、全部淘汰されてしまう。
呪術的な世界が資本主義の開かれた世界に置いていかれる話でもある。
あと、長い人は150歳以上まで生きているが、若くして突然死んでしまう人もいる。死ぬ人の速さと死なない人はいつまでも死なないという対比がある。死なないで老いたときの、ちょっと人間からずれていくような感じがおおと思った。
好きなキャラクターはアマランタ、小町娘のレメディオス。ああいうきっぱり言い切る人は意外と好きですね。
(※アマランタの恋の成り行き、心の傷を考えると、ああせざるを得ないといった声もありました)
全般的に女性キャラのほうがいい。絶対的に家父長制の世界で境遇的には厳しいけれど、みんなたくましい。男性たちの行動や性癖には嫌なループがあり、不思議な一族の話。
現代の感覚とはそぐわないままずっとこの一族が残っていくが、だんだん世間と乖離していく。この人たちの世界には飛行機とかなさそうで、時間は流れているけどそんな感じがしない。確かに150歳くらいの人もでてくるので100年くらいのことを描いているはずだが、昨日今日の話という感じもするという不思議な作品だった。
これをちゃんと書いたガルシア=マルケスはすごい。これが文庫になったとはいえすごく売れているのもすごいこと。みんな意外とちゃんと文学を読んでみたいという意欲があり、『百年の孤独』が気になっていたのだ、ってことがわかってよかった。
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ありがとうございました〜。私の感想も皆さんと概ね同じ感じです。あと、みなさんの感想を聞いていて、良いとか悪いとかではなく人類の繁栄には「愛」はむしろ必要ないんだろうなーってなことも思いました。
まあ、ともかくちゃんと読み終わって、「私は『百年の孤独』を読んだことがある」と言えるようになりたいと思います!