作: コリン夫妻/絵:エロール・ル・カイン/訳:矢川澄子/ほるぷ出版

あらすじ> めったにお目にかかれないほどきれいな女キツネである未亡人のフォックスおくさま。次々に新しい求婚者が表れますが、おくさまは亡くなっただんな様が忘れられません。
「しっぽ九ほん ふさふさせて
えんじのけがわ きてらして?
それにそろいのくつしたも?
――そのかただけが わたしのとのご」
と繰り返し、求婚者たちを追い返します。

取り次ぐメイドのミス・キャットの奮闘ぶりと、次はどんな動物が訪ねてくるのかという興味が楽しいお話です。最初はおおかみとかライオンとか他の動物なのですが、次に1本尾のキツネ、2本尾のキツネ…と、だんだんしっぽの本数が増えていきます。
もしかして尻尾を偽装しているんじゃないの?というオチを期待するのですが、そんなことはありませんでした。最後は9本尾のキツネの登場で、おくさまは理想のだんなさんとの再婚が叶いハッピーエンドです。(約9分)
* * *
美しくてユーモアたっぷりに描かれているルカインの絵がいいですね。おくさまの喪服や、壁やじゅうたんの模様まで細密に描かれています。よく見ると、嘆き悲しみながらも奥さんがチョコレートをつまんでいたりして、微笑ましい。集団の読み聞かせだと細かいところまで見えないので残念かもしれません。でも、展開の面白さで子どもたちはついてきてくれるような気もします。
個人的には、まだ夫が亡くなって間もなく、喪中っぽいのに速攻で求婚者が相次ぐってなんなの…そして条件はビジュアルなのね、絶対ぶれないのね…などなど思う所はありますが、それは言うだけ野暮ってものですね。矢川澄子さんのリズム感のある訳もすてきです。