わたしの母。
わたしに似ている、母。
違うね。
母に似ている、わたし。
わたしが小学生のころは、
「お母さん、何歳?」
って聞くと、
6年間、32歳だった。
それなのに、わたしは、
30代の母の姿を、覚えていない。
わたしが、長女を生んで実家に帰っていたとき。
生まれて間もない、長女が、
夜中に泣きやまず、
わたしは、泣いている長女を布団に寝かせたまま、
しばらく、眺めていた。
泣きやまない長女に、苛立ち、怒ろうとしたとき、
母が部屋に入ってきた。
おもむろに、長女を抱き上げ、
母は、長女をあやしてくれた。
わたしには、声をかけず、
わたしの妹や弟たちに歌っていた、
子守歌を歌って。
そして、泣きやみ、
母の腕のなかで眠る長女に、
「ママだって、いっぱい泣いたのよ。
泣きたいときに、いっぱい泣けるシアワセ、
ママは、忘れちゃったかな?」
って。
わたしは、ポロポロ泣きました。
布団から、出て、
長女を受け取ることもできずに、
ポロポロ泣きました。
子育てで、初めて泣いた日、
母には、かなわないな
って、心の底から思った。
自分が母になり、
改めて、母の優しさを、
違うね。
初めて、母の優しさを心で感じた。
あの日から、もうすぐ10年。
あの日、言えなかった「ありがとう」を、
いつか言える日まで、
元気でいてよね、お母さん。