「突き」は、なぜ「突き」と言うのでしょうか?
ボクシングであれば、パンチを”打つ”になるのですが、
空手になると、突きで”突く”になります。
この違いは何ですか?ということです。
よく、ボクシングはイロイロなパンチがあるが、空手には直突きしかない等と言う人がいます。
まぁ、そういう見方もありますが、そもそも”パンチ”と”突き”では、根本的な考え方が違うんです。
受け手にとってみれば、ボールを当てられるのと、棒で突かれるのとの違い。
突きは、その名のとおり、腕部という棒をつかったパイルバンカーなんです。
この”棒”という表現なんですが、拳が当たった瞬間にクッションとなる手首、肘、肩の関節をきちんと締めて、拳からの反動を無くすことが出来ると、受け手は実際にそう感じます。
(一般的に”重い”と評される拳撃は、物理的な反動を抑え込むことが出来ているという証です。)
因みに、腕部の射出機構は、肩甲骨になります。
では、次の質問。
「突き」は、どこで突くのでしょうか?
答えは、”脚”です。
例えば、無重力で空中に浮いた状態で、相手を突いてみても、ほとんど威力を伝えることは出来ないでしょう。
物理的に、反動が生じ、突いた方の体が後ろ向きに動こうとするからです。
つまり、重力があり、足で踏ん張っているから、突きは効果を発揮するのです。
これが、大前提となります。
そして、力の伝達です。
まず胴体は、胴内部の筋肉の締めによって、首の下から骨盤までが基本的に1枚になります。
この1枚の胴体を撓ませて動かすことで、腕部の射出機構である肩甲骨を起動させます。
(この胴体の撓みは、剛柔流ではさらに「餅身(ムチミ)」という技術になって行きます。)
次に脚ですが、基本的な”立ち”として、常に膝を軽く曲げ、膝を内に寄せた”八”の字の状態にします。
(剛柔流で言う「平行立ち」。足の外側を平行にして立つことで、自然と膝は内を向きます。)
そこから、片脚の膝を伸ばす運動を、もう一方の脚の股関節の内回転運動に変換し、骨盤を水平回転させます。
そうして、腰(骨盤)の回転から動き出すことにより、1枚である胴部に撓みを発生させ、
その撓みで、肩関節が遅れて動くことにより、肩甲骨を引いた状態から射出する事ができ、
突きへとパワーを乗せて行きます。
あとは、パワーの通り道となる腕についてですが、まぁ、上記の”棒”のところで書いた通り、いかに拳からの反動を無くすかと言うことに尽きます。
そのために、脇を締め、正しいフォームで突く事が重要となります。
以上、「突き」の概要ですが、この理論だと、腕の筋力の要素が入ってきません。
つまり、腕の筋力に依らない突き方なんです。
さら言えば、足で発生させたパワーを、相手の体の内部に浸透させることを目的とした突き方という事になります。
(組手で言えば、拳を使った体当たりといった感じになります。)
正直、理論的にはかなり危険だなと思いつつ、だからこそ”寸止め”という組手のルールが作られたんだろうなと推察する次第です。
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