猫を抱いて象と泳ぐ
去年の4月に図書館で予約して3月に手元にやってきた。
最初に読みはじめたとき、全然あたまに入ってこないので本当に参った。
何度同じところを読んでも目が字の並びを追うだけのような気がした。
チェスはしたこともなく馴染みがなさすぎたし、主人公の心のなかの世界を現実に投影していて、理解しづらかったということもある。
ようよう最後までページをめくったときに、なんだか理解出来るとっかかりを感じたような気がして、もう一度読みはじめた。
今度はリトルアリョーヒンという天才でありながら表舞台にでることのなかったチェス棋士の心を感じることができたような気がした。すいすい読み進み、感動を得た。諦めずに読み直してよかった。
様々な経験から11歳の大きさより成長しないことを自分に課した彼はまさにリトルアリョーヒンになるために生まれてきたようだ。
チェス盤の上では美しい棋譜を描き、現実には控えめに生き、それとは正反対に成長する唇の「毛」。
彼に愛情を向ける祖父母の他に、かけがえのない存在であるインディラ・ミイラ・マスターが彼の心の中で常に支えとなる。たとえ現実に存在しなくても。
この本には寡黙なリトルアリョーヒンの心の叫びがつまっている。
全体を通して感じるのは、静謐さ、もの悲しさ、純粋さ。
最後のミイラとの遠い再会に、涙。
一番最後に話に出てくる「ビショップの奇跡」という棋譜が現実に存在するということが書いてあるのだが本当だろうか。
タイトルだけでは何の話かさっぱりわからないのだが、猫も象もとても重要。
表紙のモチーフも愛らしい。
決して明るい話ではないけれど、主人公の清らかな魂に触れて、心が洗われるような気持ちがした。
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