さるかに合戦といえば、因果応報を主題とした昔話として有名なお話である。
悪いことをしたずる賢い猿が痛め付けられて終わるのだから、勧善懲悪的な話としても痛快であるかもしれない。
しかし、芥川龍之介の書く「猿蟹合戦」は違った話になっている。蟹が猿に対して復讐を成功させてたらおしまい、というわけにはいかず、蟹たち復讐を行った側の者らは、それ相応の刑罰を受けるに至り、蟹などは死刑に処せられてしまうという話になっているのだ。
芥川龍之介「猿蟹合戦」全文
なんと夢がないというか、現実的すぎるというか…(笑)
こんな感性を持っていた芥川龍之介は、世の中が他の多くの人々とは異なる世界に見えていただろうから、さぞ生きづらかったことだろう。(現に自殺している)
まあ確かに社会で生きていく中で色々腹のたつことや、どうしようもなく理不尽な仕打ちをされたりすることは誰でも多かれ少なかれ経験することであるので、実際に復讐を実行してしまうというのは、現実の社会ではせいぜいどっちもどっち、ともすれば勝手な逆恨みも甚だしいという風にみなされてしまうものだ。
前回の記事で話題にした、「負けない大人のケンカ術」にみられるような生き方、考え方の方が社会的には一般的であり、まさに「大人の」やり方なのだろう。おとぎ話のさるかに合戦の蟹が許されるのはお話の中だけであり、それはその対象が子供であるからというからにすぎない。
そういえば、勧善懲悪の話っていうのはいつの時代も一定の人気を誇っているものだけれど(水戸黄門など)実際にあんなことは有り得ないものな…。
さて、そんな「猿蟹合戦」であるが、物語の最後は、「君たちもたいてい蟹なんですよ」で締め括られる。これは一体どういう意味であろうか?
この話が書かれた時代背景および芥川自身の思想を考えるならば、国家権力には誰しも逆らえないのだ、ということを芥川龍之介は暗に示したのだと考えるのが自然だと思われる。
この考えは間違ってはいないだろうし、芥川龍之介もそれを意として書いたのだと思われる。
だだ、国家権力に対する批判と考えるのはなんだか実生活に思想を結びつけて活かそうと考えている僕にとってはちょっと物足りないように感じる。
ここで、長くなってしまったのでこれについての考察は次回の記事にまとめさせていただきたいと思います。
読んでいただきありがとうございました。
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