畑のクマゴロウ

糸島市でイノシシ君・アナグマさんと小競り合いをしながら畑、テニス&貝を楽しむのんびり人のブログです。

ホモニム(異物同名)Pleurodon Wood, 1840とPleurodon Harlan, 1842

2018-01-22 14:18:48 | 日記
異なる生物に同じ名前が付いていると混乱が生じます。学名の場合、原則として古い方の適格な名称を使うことになっています。

Pleurodon Wood, 1840とPleurodon Harlan, 1831[1842]の場合はどうでしょうか?
波部(1977)、Treatise on Invertebrate Paleontology、WoRMS等に従えば
Pleurodon (m.) Wood, 1840, n.s., 4: 230-231, type species (M) Pleurodon ovalis Wood, 1840, n.s., 4: 230-231, suppl. pl. 13, fig. 1, non Pleurodon Harlan, 1831, 6(2): 284, Mamm.; Nucinellidae. Gr. pleura; Gr.odous,dens (Herrmannsen, 1847, 2: 297). 側歯(鉸歯は一見多歯型なのに側歯を持つ);キビガラガイ科 12
ということになりますが、本当にPleurodon Wood, 1840は使えないのでしょうか。

国際動物命名規約第53条2項では属の同名(ホモニム)とは、複数の適格名であって同一の綴りで設立されたもの、とされています。
では、Pleurodon Harlan, 1831は適格名でしょうか。

Harlan (1831: 283-284; republication in 1835)では、Megalonyx laqueatusの記事の中で、「もし今後全体の骨格が発見され、属の区別をすることになった場合、その歯の正中観mesial aspectが肋の有る、或は縦溝を彫られた状態であることに注目したAulaxodon又はPleurodonのどちらでも適切な名前であろう」とのべています。“縦溝のある歯”がAulaxodonPleurodonのどちらかの名前を定義するものではないので、これら2つの新名は不適格です。


Harlan, 1931, pp. 283-284.

Owen (1840: 66)は”Dr. Harlan does not enter into the question of the generic characters of Megalonyx, but it would seem that he felt them to rest not entirely on detail modification …”と述べ、Palmer (1904: 818)はPleurodon Harlan, 1931を“Name suggested, but not used, in place of Aulaxodon Harlan, 1830”と書いている[蛇足: 1830は1831の誤り]。どちらもPleurodonが明確に提唱されたとは考えていません。

Vokes (1980: 22)はPleurodon Wood, 1840, Mag. nat. Hist., (N.S.) 4: 230 [non Harland, 1834 (Mamm.); see Nucinella Wood, 1851]と書き、Nucinella Wood, 1851, Monogr. Crag Moll. (Palaeontogr. Soc. Monogr.) (2): 72 [n.n. pro Pleurodon Wood, 1840]を有効な名称としています。

Harlanの論文を集めた著作集(Harlan, 1935)では、Pleurodonと言う名称が出てくるのはHarlan (1831)だけです。Pleurodon Harlan, 1834というのはH. E. Vokes教授の勘違いかもしれません。

Agassiz (1847)のNomenclator zoologicusではPleurodon Harl. in Sill. Am. Jour. [American Journal of Science and Arts, conducted by Professor Silliman and Benjamin Silliman, Jr., vol.] XLIII, 1842. Gr. pleura, latus; Gr. odous, dens. = Mylodon.-Edent.とされています。

Harlan (1842: 141-142)は、Mylodon(臼歯)という属名は特有の性質を示すものではなく、化石哺乳類のどれにでも通用する名称である、これに対してPleurodon(縦溝の彫られた歯)はMylodon harlani, Megalonyx jeffersonii, Megalonyx laqueatus, Mylodon darwiniiに適用される特有の性質を表す名称であると述べ、ここでPleurodonが正式に適格になったと考えられます。

今後、Vokes (1980)のいうPleurodon Harlan, 1934が見つかる可能性がありますが、現段階ではPleurodon Wood, 1840はPleurodon Harlan, 1842の古参ホモニムであり、有効な名称であると考えるのが良いようです。

Lexicon generum bivalvium-Pleurodon
Pleurodon (m.) Wood, 1840, n.s., 4: 230-231, type species (M) Pleurodon ovalis Wood, 1840, n.s., 4: 230-231, suppl. pl. 13, fig. 1, non Pleurodon Harlan, 1831, 6(2): 284, nomen nudum (Palmer, 1904: 818); Harlan, 1842, 43(1): 141-142, Mamm.; Nucinellidae. Gr. pleura; Gr. odous,dens (Herrmannsen, 1847, 2: 297). 側歯(鉸歯は一見多歯型なのに側歯を持つ);キビガラガイ科




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