滋賀県立美術館で野口謙蔵生誕120周年
記念展を鑑賞、その後、謙蔵さんのふるさと
蒲生野を訪ねるバスツアー記事の続きです。
洋画家、野口謙蔵(1901~1944)は、
優れた作品を残しているにもかかわらず、
広く名前が知られていないようです。
謙蔵さんは滋賀県、現在の東近江市に生まれ
生涯そこで暮し、蒲生野の風景を数多く描き、
43歳で惜しまれて亡くなった洋画家です。
バスは謙蔵さんの故郷、現在の東近江市へ。
街道筋にある日本料理屋”ますや”さんで
昼食タイムです。ビワマスのお造りなど、
この土地ならではの御馳走を味わいました。
その後、謙蔵さんゆかりのお寺を2か所、
生家、旧野口忠蔵邸などを訪ねます。
旧蒲生町の文化財担当の方による
説明を聞きながらゆかりの地を回りました。
ガリ版伝承館に立ち寄った後、いよいよ
謙蔵ゆかりの地めぐり、スタートです。
謙蔵さんに強く影響を与えたといわれる
和尚さん、米田雄郎のお寺、極楽寺へ。
米田和尚は歌人であり、歌会の指導や
歌集の出版など短歌の道で活躍しました。
趣味で短歌をやっていた謙蔵さんとは、
生涯を通して深い交流があったそうです。
現在の極楽寺の住職さんがお寺の歴史や
文化財などの説明をして下さいました。
ここで、住職さんからのサプライズが…!
このお寺には謙蔵さんの作品がありました。
それを今回、特別に公開して下さったのです。
なんと、本堂の衝立に描かれた水墨画…!
珍しい…!水墨画もあったとは意外でした。
謙蔵さんは芸大卒業後、一時期日本画を
勉強したそうですが、その頃の作品かと…。
さらに、本堂奥にある絵も公開されました。
ここにも幻想的な蓮を描いた日本画が…!
これには驚きました。謙蔵さんの作品は、
美術館の特別展でしか見られないかと
思っていましたが、そうではなかった…。
バスツアーに参加された人たちは皆、
「うっそ~!ここで謙蔵さんの日本画を
見られるとは、思ってもいなかった~!」
…と、感激して写真撮影していました。
お寺に蓮の絵とは、とてもいいですね。
次の目的地は謙蔵さんの旧アトリエです。
現在は”野口謙蔵記念館”として、土日
祝日だけ、一般に公開されていました。
大きな窓から蒲生野の田園風景が眺められ
作品のレプリカや写真、遺品などの資料が
いろいろと展示されていました。
「この写真をご覧ください。謙蔵さんが地元で
学生達に絵の指導をした時の記念写真です。
この時の指導がちょっと話題になりましてね。」
謙蔵さん、どんな絵の指導をしたか…?
謙蔵さんの得意分野、ふるさと蒲生野の
風景を写生して、作品の添削指導した…?
普通だったらそう考えますが、意外なことに
”女性のヌードモデルを使った写生”だった
そうです。でも、これが後で問題になった…!
戦前の田舎町のことです。町のお偉い方に
「”ヌードモデルの写生”はないでしょ~!」
…と非難された、ということだったそうです。
予想外の非難に謙蔵さんもビックリ…!
でも、ヌードモデルを使った写生って、きっと
地元の学生さんにとって、普段できない体験。
ワクワクする授業だったのではないかな~?
”蒲生野の風景画家、謙蔵さん”のイメージと
”ヌードモデルの写生”って、正直言って
結びつかないような感じではありますが…。
もう一つ、謙蔵さんゆかりのお寺を訪問…。
謙蔵さん旧アトリエから歩いてすぐのところ
にある、野口家の菩提寺、源通寺です。
さて、昭和5年の帝展に入選した作品に
”蓮”という絵があります。この作品は、
源通寺に寄贈されたと聞いています。
今日は、きっと公開されるのでは…?
公開されました~!本堂の奥の部屋に
飾られていました。素晴らしい作品です。
洋画なのですが、日本画にも通じる感覚…。
その他にも作品が展示されていました。
蒲生野の風景を描いた小さな絵です。
絵の中にお寺の屋根も描かれています。
このお寺、源通寺でしょうか…?
いい絵ですね~。私、この絵、好きだな~。
この絵、前のブログ記事で紹介した
実家にある絵と何となく似ていませんか…?
いや、そう思うのは私だけかしら…?
謙蔵さんの旧アトリエの周辺は、
作品のような田園風景が広がっています。
そしてこの日は絵にあるような灰色の空…。
ツアーでは、謙蔵さんの作品に描かれた
風景かもしれない場所(?)も訪れました。
「この風景をご覧ください。広がる田畑…。
遠くの山のかたち…。灰色の空…。」
「この風景は、謙蔵さんの代表作
”霜の朝”に描かれたものにそっくり…。
皆さん、そう感じませんか…?」
確かに…。そんな感じもしました。
謙蔵さんはこの辺りの風景をよく
スケッチしていたのでしょうね…。
謙蔵さんが生きていた時代から、
現在まで、随分時が経っているのに、
変わらない風景が残されているのですね。
最後に謙蔵さんの生家を訪れました。
野口家は別の土地に移り住んでいて、
この家は長い間空き家になっているそうです。
謙蔵さんの家は、古くからの近江商人の家…。
醸造業を営む、江戸時代から続く豪商です。
土蔵や洋風建築もある立派な家でした。
野口家は、多くの文化人と交流があって、
いろいろ芸術家の支援もしていたそうです。
謙蔵さんは、経済的にも文化的にも
恵まれた環境で育ったようですね。
長い間空き家になっているこの建物は、
ちょっと荒廃した雰囲気が漂っています。
それが残念と言えば、残念ですね。
見どころ満載の充実したバスツアーでした。
美術館以外のところでも、思いがけず
謙蔵作品に出会えたのは、とてもよかった。
行ってよかった…!心に残るツアーでした。
このツアー、キャンセル待ちで参加できた
私は超ラッキーだったかも…!