7機関の神経内科が協力してまだ研究中の関連記事をリンクしはって保存する。
脳脊髄液減少症と体位性頻脈症候群 似た症状、鑑別診断必要
朝起きられない、立ち上がると頭痛が起きるなどの症状が出る起立性調節障害のうち、頭痛が主症状となる体位性頻脈症候群は、脳脊髄液減少症と似ており、ともに適切な鑑別診断が必要です。専門家でつくる脳脊髄液減少...
熊本日日新聞2017/10/18 13:38 https://this.kiji.is/293244511072339041
「朝起きられない、立ち上がると頭痛が起きるなどの症状が出る起立性調節障害のうち、頭痛が主症状となる体位性頻脈症候群は、脳脊髄液減少症と似ており、ともに適切な鑑別診断が必要です。専門家でつくる脳脊髄液減少症研究会の世話人を務める埼玉医大神経内科助教の光藤尚医師(熊本市出身)に聞きました。(高本文明)
-体位性頻脈症候群の特徴は。
「起立性調節障害は、心身が急激に変化する思春期に起きやすい自律神経の異常による疾患です。ふらつき、立ちくらみ、めまい、動悸[どうき]、頭痛、疲れやすさなど、さまざまな症状があります。体位性頻脈症候群の患者さんは、立ち上がったときに頭痛や疲労をよく訴えます。体の姿勢によって状態が変化しやすいです」
-脳脊髄液減少症は。
「脳や脊髄は、無色透明な脳脊髄液で満たされており、クッションのように脳や脊髄を保護しています。スポーツや事故など強い衝撃によって、脳脊髄液が漏れ出したり、減少したりして、頭痛や首の痛み、めまい、耳鳴り、倦怠[けんたい]感などの症状を引き起こします」
-両者の違いは。
「起立性調節障害の頭痛は、起床直後から頭痛がはっきり起こります。午後から夜にかけて症状は軽くなっていきます」
「これに対し、発症から2週間以内の脳脊髄液減少症では、頭痛は起床直後には起こらず、頭を上げて15分ほどたって起こります。午後から夕方にかけて悪化するという特徴があります。光に対する過敏性や耳鳴り、耳がふさがったような閉塞感を感じます。脳脊髄液減少症は時間経過とともに頭痛の性状が変わるため、発症2週間以内の症状を詳しく聴くことが鑑別診断のポイントとなります。CT、MRI、脳槽シンチグラフィーなどの画像検査で髄液の漏れを診断できます」
-共通点はありますか。
「いずれも生活に大きな支障を来す疾患であり、気持ちの持ちようだけでは治らないことを周囲も理解しましょう。適切な診断、治療がとても重要です」
-治療法はどう違いますか。
「起立性調節障害では、十分な水分・塩分の摂取や薬物療法を行います。朝起きられず寝つきが悪いことが問題になっており、睡眠のリズムを整えることも大切です」
「脳脊髄液減少症では、まず十分な安静と水分の摂取という保存的治療を少なくとも2週間行います。これが無効のときは、患者自身の血液で漏れている部位をふさぐブラッドパッチを行います」
-両者は、まだ解明されていないことも多いようですね。
「埼玉医大と熊本大、熊本市民病院、福島医大など7機関の神経内科が協力して、脳脊髄液減少症が難治化するメカニズムを、自律神経の機能異常に着目して解明する研究に取り組んでいます。これまでに脳脊髄液減少症と体位性頻脈症候群が合併・併存する事例が認められています。さらに病態解明や客観的診断、治療法の開発を目指して研究を進めていきます」