平方録

バイオリンソナタ第5番「春」

テレビの気象解説で「今年に入って平年並みの気温が続いていて、大寒はさらに気温が低く推移するだろう」と言っているのを耳にした。

へぇ~、暖冬じゃなかったんだ、と寒さ大っ嫌いニンゲンのボクは身構え直す思いだが、実態はさに非ずで坐禅に行く以外は股引もタイツの類もはいていないし、家にいる時は肌着と長そでシャツの上にベストだけとか、フリースを羽織るだけで過ごし、外出する時はフリースをこれまた薄手のダウンジャケットに変えるだけだから着ぶくれてもいない。
年が明けてから、この肌着を「極暖」と呼ばれるものにしたら一層寒さ知らずで過ごせているのだ。

多分寒さに体が順応してきたためだろうが、海沿いの南関東の日中は「明日は寒い一日になりそうです」と言ったって最高気温は7、8度にはなるから日差しさえあれば大したことはない。
そして昨日は最高気温が10度そこそこだったが北風が結構吹いていて、体感温度は結構低かった。
風速1メートルに対して体感温度は1度下がるそうだから、4、5メートルの風が吹けばそれだけで10度の気温は5度以下に冷え込む。

昨日の場合、日差しはと言えば〝光の春〟を思わせるような、柔らかみを伴った透き通った明るいものだったので騙されがちだが、立ち尽くして行う庭仕事などはどだい無理な話で、東側のフェンスに残ったつるバラのせん定作業をしようと外に出たのだが、何も手を付けないうちに撤退を余儀なくされた。
ある程度気温は低くても、北風さえ吹かなければ正午を挟んだ2~3時間という時間帯は寒さも気にならないのだから、風の吹かない日を待てばいい。

しかし、北海道で暮らしている方のブログを拝見すると最高気温だって氷点下の日が少なくないにもかかわらず、毎日のように1万歩近くのウオーキングを続けていると知れば、どんな肉体構造の持ち主なのかと異星人を見る思いである。
ヒトは環境に順応して生きる生物とは言え、正直しり込みさせていただきたい。
ボクは、ぬくぬくとした空気にくるまれていたいタイプの堕落ニンゲンなのだ。

大寒真っただ中、寒い寒と言いながら、北鎌倉の円覚寺では日当たりの良い場所のウメには花が咲いている。
日当たりのあまりいいとは言えない駆け込み寺の東慶寺のウメのつぼみは一様に固いが、それでも気の早い奴がいるもので、白梅で1輪、紅梅で数輪の花を開かせているのを見かけた。
あと10日余り経てば立春じゃないの。
ウメの花が開けばそれは立派な早春。
いよいよ「春」という言葉がちらつき始める。

せん定作業をあきらめて部屋に引っ込む。
本当はレコードで聞いてみたかったのだが、生憎持っていない。
しかたなくCDで我慢したが、ベートーベンのバイオリンソナタ第5番「春」を久しぶりに聞いた。
ゆっくりとだが気持ちが高みに上がていくような、心地よい旋律が優しく心に響いてくる。そして何より、心が躍り始める。



北鎌倉の東慶寺では気の早い紅梅がちらほら


こちらはぽつんと1輪だけ白梅が


膨らみかけているウメもあるが…


大部分のウメはまだ寒さへの警戒を解いてはいない


県道を挟んだ反対側の谷戸に建つ円覚寺では日当たりの良い場所のウメが咲き始めた
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